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経営安定特別相談室 専門家による相談事例

「自力再建はできないが、なんとか事業を残せないか?」(相談事例5)

私はオーナー社長として長い間会社を経営してきましたが、ここ数年は新規の顧客もなく、売上が減少するばかりで、直近は赤字が続いてしまっています。また、銀行からの借入れもあり、現在は、資産の総額よりも負債のほうが大きい債務超過の状態になっています。私が高齢で病気がちなこともあり、経営を続けていくことに限界を感じていますが、親族内には後継者となるような者はおりません。また、技術的には優秀な従業員もいるものの、今のような経営状況の厳しい会社を継いでくれとはとてもお願いできません。しかし、このまま廃業してしまっては、長年の取引先にも迷惑がかかりますし、また、従業員がどうなってしまうかも心配です。何とか事業を残す方法はないでしょうか。
M&Aの方法により第三者に事業ないし株式を譲渡することを検討してはいかがでしょうか。確かに、経営状況が厳しい会社の事業ないし株式の譲渡を受けてくれる第三者を見つけることは容易ではありません。しかし、優良な取引先との取引関係がある、高い技術力がある、優秀な人材がいるなど、譲渡を受ける側にとってメリットが見いだせるような要素があれば、可能性はあります。なお、債務超過会社の事業を譲渡する場合、借入先の金融機関やその他の債権者を害することがないよう手続を慎重に進める必要があり、専門家に相談してサポートを受けることが肝要です。

(解説)

1.自力再建以外で廃業を免れる方法はあるか

 経営状況が厳しい会社において、自分自身の力では会社を再建させることに限界があり、親族や社内に事業を引き継いで続けてくれる後継者もいない場合、やむを得ず廃業せざるを得ないケースも多く見られます。ただし、廃業以外の選択肢として、事業譲渡や株式譲渡といったM&Aの方法により事業ないし株式を売却し、第三者に事業を承継してもらうことで事業を残すことができる場合があります。
 業績のよい会社であればともかく、経営状況が厳しい会社の事業ないし株式をわざわざ買って引き継ぎたいと思うような第三者がいるのか、という疑問をもたれるかも知れません。確かに、そのような第三者(承継先企業)を見つけることは容易ではありませんが、承継先企業にとって事業を承継することにメリットが見いだせるような要素のある会社であれば、事業の引継ぎが上手くいく可能性があります。

2.経営状況が厳しくても事業を買うメリットを見いだせる要素とは

 M&Aの買い手側のメリットは、端的にいえば、会社が潜在的な収益力や承継先企業が活用できる有形・無形の資産を有している、ということになると思われます。
 たとえば、多くの優良な取引先との取引関係を有している場合、その取引関係を活用して自社の売上を拡大することができる企業が事業ないし株式を買いたいと希望することがあります。また、高い技術力がある、優秀な人材がいるような会社であれば、今はそれを収益につなげられていなくとも、これを活用したいので事業ないし株式を買いたいと思う企業もあるでしょう。
 また、単純に、今は計算上赤字であっても、承継先企業が引き継ぐことでコストカットができ、黒字化が見込める場合もあります。たとえば、事業のために事務所や倉庫を借りていた会社の場合、承継先企業の事務所や倉庫に余裕があればそれを利用することで賃借料を削減できますし、また経理等の業務も人員を統合して費用を抑えることができる可能性があります。
 別のパターンとして、事業がなくなってしまっては困るという取引先(得意先や仕入先など)が、廃業で事業がなくなるくらいなら自分が引き継ぐということで事業引継ぎが行われる場合もあります。
 なお、M&Aの買い手側として、会社そのもの(株式)を買う(後記4の「(1)株式譲渡」にあたります)ことはしたくないが、会社から一部の事業を切り出してその事業のみであれば買いたい(後記4の(2)「事業譲渡(あるいは会社分割)」にあたります)という場合もよくあります。

3.承継先企業をどのように見つけるか

 一般的なM&Aの場合は、売却希望の企業と買手候補の企業とのマッチングを行う仲介業者を利用することが多いでしょう。しかし、経営状況が厳しい会社の場合、そのような会社の事業ないし株式を買うメリットを見いだしてくれる企業というのは、取引先や同業他社など、もともと自社や事業のことをよく知っている企業のことが多いようです。そのため、まずは、取引先や同業他社の中から、事業ないし株式を買ってくれそうな企業がいないかあたってみることをお勧めいたします。また、国の支援機関である「東京都事業承継・引継ぎ支援センター」に相談してみることもよいでしょう。

4.債務超過会社の事業を譲渡する場合に気をつけなければならないことは?

 会社の事業引継ぎの手法として、大きくは、(1)株式譲渡、(2)事業譲渡(あるいは会社分割)、の2つの手法があります。(1)株式譲渡の手続きはシンプルですが、借入金などの負債もそのまま引き継がれてしまいます。そのため、債務超過の会社の場合には、(2)事業譲渡(あるいは会社分割)により事業のみ承継させて、借入金などの負債を元の会社に残す手法がとられることがよくあります。しかし、この方法を取る場合には、金融機関その他の債権者を害することがないよう、次の点に十分注意して、慎重に手続を進める必要があります。なお、専門知識や難しい交渉を伴う手続なので、できるだけ弁護士などの専門家に相談してサポートを受けることをお勧めします。

  1. 事業の承継先(買い手)は適正な対価を負担すべきこと
    事業価値に見合った適正な対価を承継先(買い手)から承継元(売り手)に支払い、その対価分を金融機関などの債権者への返済に充てる必要があります。承継元に適正な対価分の支払をしなければ、債権者を害することを知りながら会社の資産を減少させる「詐害行為」として事業譲渡(あるいは会社分割)が取り消されるなどのリスクがあります。また、事業価値は公認会計士などの専門家に適正に算定してもらうことが必要になってくる場合もあります。
  2. 不公平な返済をしてはならないこと
    全ての債権者に返済できない可能性がある状況下で、一部の債権者に対して優先的に返済すると、不公平に返済する「偏頗(へんぱ)行為」として責任を問われるおそれがあります。
  3. 金融機関と協議して理解を得ること
    事業の承継にあたっては、金融機関にも適切なタイミングで情報を開示し、協議を重ね、理解を得ておくことが肝要です。情報開示や協議を怠ったために、のちにトラブルが起きるケースが後を絶ちません。

5.経営安定特別相談室へご相談を

 経営状況が厳しい中での事業の譲渡は、法的に検討や留意しなければならない点が多く、判断が非常に難しいこともありますので、弁護士・税理士等といった専門家の関与が必要です。経営安定特別相談室は、会社の経営状況が厳しいときの対応に通じている専門家を紹介できますので、お一人で悩まず、お気軽にご相談ください。





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