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経営安定特別相談室 専門家による相談事例

「廃業の判断のタイミングは?自分の会社はいつまで持つの?」(相談事例4)

私は創業者として長い間会社を経営してきましたが、ここ数年にわたり業績が芳しくなく、資金繰りも不安定で、苦しい経営が続いています。経営を立て直してもう少し頑張りたいと思っていますが、私自身が高齢となってきており、後継者もいませんので、経営改善が難しければ問題が大きくなる前に廃業をしようと考えています。どのように経営改善に取り組めばよいか、また廃業をすべきと決断する時期がわからないので、留意点を教えてください。
経営が苦しいため廃業すべきか迷っている、いつ廃業を決断すべきか、というお悩みをお持ちの経営者の方が最近は増えつつあるという印象です。廃業を正しく判断するためには、自社の損益状況と資金状況を確認し、それぞれ改善できるかを検討する必要があります。
経営改善が思うように進まない場合に、未払金や借入金などの債務が大きくなっていくことは望ましくありません。預金や在庫などの資産を全て充てても、未払金や借入金などの債務が完済できない状態(いわゆる債務超過)にあっても、倒産手続ではなく、通常の会社清算手続で対応できる場合がありますので、問題が大きくならないうちに廃業の検討や決断をすることが良いとも考えられます。なお、倒産手続と通常の会社清算手続のいずれによっても、法的・税務的に留意すべき点がありますので、顧問の専門家か、経営安定特別相談室へ相談してみるべきです。

(解説)

1.損益状況を改善できるか

 損益状況とは、「どれだけ儲かっているか」というものです。数年分の決算報告書や合計残高試算表によって、推移や現況を確認します。もし営業利益や経常利益の赤字が続いている場合は、これを改善できるかどうかが廃業判断におけるポイントの1つとなります。
 赤字の原因が売上高の減少と考えられる場合には、売上高の減少に歯止めをかけることができるかを検討します。例えば、既存顧客との取引額を増やすことができないか、新規顧客の開拓はできないか、以前は取引があったもののしばらく取引がなくなってしまった休眠顧客との再取引はできないか、事業転換はできないか等といった施策を考えてみましょう。いずれも簡単ではなく、すぐに効果が出るとは限らないものです。しかしながら、売上高の減少をどこかで止めなければ、経営改善を図ることができません。
 また、売上高だけではなく経費にも着目しましょう。売上高の獲得に貢献しない余剰な経費がある場合は、その削減を検討する必要があります。さらには、代表者の家計支出等の私的な支出についても見直す必要があり、これによって役員報酬を削減できる余地があるかもしれません。

2.資金状況を改善できるか

 資金状況を把握するには、資金繰り表を活用します。資金繰り表は実際の入金・出金・残高の情報を記録するもので、月次のものが一般的です。
 月次資金繰り表では、過去半年程度の実績を集計するとともに、この実績や今後の入出金予定をもとにして、将来半年程度の資金繰り予定を組みます。資金繰り表は随時更新をして、常に最新の資金状況を把握できるようにしておきましょう。資金繰りが厳しい場合は、月次資金繰り表だけではなく、日ごとの記録である日次資金繰り表を作成することも有効です。そして、資金繰り表の予定を見て資金が枯渇しそうな時期がある場合には、資金状況を改善できないか、資金調達をすることができないかを検討する必要があります。
 資金状況の改善には、1で述べた損益状況の改善が必須ですが、それ以外にも、入金が遅れている売掛金の回収ができないか、滞留在庫や機械設備、不動産といった会社財産で処分できるものはないか、税金や社会保険料について分割納付できるものがないかといった点等も確認する必要があります。また、金融機関からの新たな資金調達を受けることができない場合は、借入金の返済元本の猶予(リスケジュール)を依頼することも一つの方法です。
 なお、返済の目途が立たない親族からの過剰な借入金や、不当に高い利率の借入金による資金調達はすべきではありません。

3.廃業の決断

 損益状況や資金状況の改善に取り組んでも再建の見込みがない場合は、廃業を決断すべきと考えられます。
 会社には資産と負債があり、これらの状況を財政状態といいますが、会社が廃業する場合はその財政状態によって廃業の手法が異なります。廃業をする際には、預金や在庫などの資産をすべて換価(換金)して、未払金や借入金などの負債を返済する必要があります。廃業にあたりすべての負債を返済することができれば、残余財産を株主等に分配して通常の会社清算を行うといった形になります。一方で、負債額のほうが資産額よりも大きい、いわゆる債務超過にある会社も多くあります。この場合は最後に返済しきれなかった負債が残ってしまう形になりますが、(1)負債が会社代表者等からの借入金のみになるか、(2)会社代表者等以外の第三者(金融機関など)からの負債も残るかといった点によって、さらに取扱いが分かれます。
(1)会社代表者等からの借入金のみが残る場合、一般的には、その借入金について債権放棄をする(会社側から見れば債務免除を受ける)ことで、通常の会社清算を行う流れに進めることができます。しかしながら、(2)会社代表者等以外の第三者からの負債が残る場合には、破産等の倒産手続による必要があります(【相談事例2】も併せてご覧ください)。そのため、最後に会社代表者等からの借入金は残ってしまうとしても、第三者からの負債はすべて返済できるうちに、つまり会社の財政状態が大きく悪化する前に廃業をするといった選択肢がよいでしょう。
 なお、負債には簿外(決算報告書に記載されない)となっているもの、例えば退職する従業員に対して退職金規程に基づいて支給すべき退職金の額や、リース契約の中途解約に係る違約金等も考慮する必要があるので、注意が必要です。さらには、通常の会社清算によって廃業をする場合には、これまでお世話になった得意先等への影響をできるだけ軽減するため、廃業の連絡をする時期について配慮をするのがよいでしょう。

4.経営安定特別相談室へご相談を

 廃業の判断や手続きにおいては、法的に検討や留意しなければならない点が多く、税務的にも複雑な点があります。そのため、弁護士・司法書士・税理士等といった専門家の関与が必要です。身近に相談できる専門家がいないという経営者の方は、ぜひ、経営安定特別相談室へお早めにご相談いただければと思います。




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