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<エネルギー・環境委員会>
環境ビジネス展開支援 事例紹介

環境ビジネス展開支援 事例紹介

企業基本情報

事業者名
株式会社ファインテック
所在地
<本社>
〒226-8510 神奈川県横浜市緑区長津田町4259-3
東京工業大学 横浜ベンチャープラザ W105
<東京支社>
〒133-0051 東京都江戸川区北小岩5-21-7
キャピィインプラザ北小岩203号
主な事業内容
・通信用機器及び電子部品の設計、製造、販売
・各種精密機器の製造、販売
・再エネ機器(バイオマス、太陽光など)の製造、販売、運用
・有機化合物の製造、販売
・廃棄物処理装置の設計、製造、販売
代表者
代表取締役 岡田 素行
従業員数
14名
創業年
1987年10月
資本金
7,200万円
URL
会社沿革
1987年  設立
2008年  東京工業大学 横浜ベンチャープラザに本社移転
     独立行政法人産業技術総合研究所と
     「次世代ナノプレーティング研究」の共同研究
     東京分室開設 機械振興会館407号室
2009年  バイオマス事業に進出直管形LED蛍光灯開発・納入
2010年  ロールtoロール連続自動真空蒸着装置納入群馬事務所開設
2011年  「横浜市価値組企業」認定、「横浜知財みらい企業」認定
2012年  「横浜知財みらい企業」認定
     農水省「平成21年度地域資源利用型産業創出緊急対策事業」完成
    (北関東グリーンプラント事業)
2013年  「横浜知財みらい企業」認定
     超小型人工衛生 実験ユニット採択
     福島再生可能エネルギー株式会社(子会社)設立
     「平成25年度 新エネルギーベンチャー技術革新事業」採択

環境・エネルギー分野における主な事業内容、特徴のある事業内容

<炭素化技術>

ファインテックでは燃料として利用するため木材等の半炭化を行っている。半炭化を行うことで、燃焼の障害となる水分量を減らすことができ、また、各材を小さくし、エネルギー密度を高めることが可能となる。
また、半炭化させた燃料は石炭などの発電設備に燃料として混焼(30%程度)することが可能であり、一般的なバイオマス燃料である木質チップ材よりも利便性が高い。

表2 ファインテックの技術の特徴

ファインテック技術
従来炭化方式(自燃式)
乾燥処理方式
概要
原料と過熱水蒸気を直接接触させて、炭素化と可燃ガスを固定化
原料中の一部を自燃し、その熱によって乾溜ガスを放出、炭素を固定化
原料中の水分を乾燥させて、残留固形分を安定化させる。乾燥のための熱源のみ必要
特徴
保有エネルギーの減少が少なく、細胞組成が保持される
炭素分のみの生成物で、安定はしているが、保有エネルギーが少ない
生成物は水分が除かれているが、燃焼阻害成分が残留している
処理エネルギー
◯ (少ない)
△ (大きい)
◯ (少ない)
運用安全性
◯ (常圧運転)
△ (気密性が必要)
生成物品質
◯ (保有エネルギー大)
△ (保有エネルギー小)
△ (燃焼阻害物質残)



<素材可技術>

廃棄物となる製品や半炭化時に副産物として抽出されるタールなどの成分を原料とした素材化技術を研究している。こうした副産物も含めて資源化することで、収益性の向上を目指し、新たな事業を検討している。詳細に内容に関しては特許により保護されている技術であるため公開できないが、利用用途を図2-1に示す。



図2-1  素材化技術の利用先

事業詳細

事業開始の契機

創業時は医療系技術(超音波を使用した診断技術)や軍事関連の事業(ドローン研究、信号処理など)を行っていた。しかし、主要取引先の事業停止により他の事業への展開を模索するようになった。その際、保有している技術を生かして環境保全等に貢献したいと考え環境関連事業を行うようになった。環境関連事業として、まず、メッキ処理に使用する真空蒸着装置を開発し、処理の際に出る廃液を少なくするなどの技術を開発した。また、グリーン・ナノ粒子の研究や植物由来の油脂とナノ粒子(銀など)の接合材などを研究し、現在の技術の基となる研究を行った。

事業拡大までの経緯


(1) 事業展開のきっかけ
事業展開の契機は環境関連事業に舵を切った時期である。当初は別の事業を行っていたが、主要取引先1社への依存度が高く、その企業が事業停止により売上がなくなってしまった。これにより他事業への転換が必要になった。そのため、1企業との取引に注力することは一時的に経営を安定させるが、非常にリスクがあると考えるようになり、自社が中心となって行える事業を検討した。また、当時は徐々に環境保全に対する意識が変わってきていたことから、そこにビジネスチャンスがあるだろうと考えるようになり、環境関連分野への転換を図った。

(2) 補助金の利用
これまで、研究開発用途で多くの補助金を取得している。取得した補助金の例を表3-1に示す。

表3-1 取得補助金一覧


補助事業元
補助事業名
プロジェクト
経産省
平成25・26年度 新エネルギーベンチャー技術革新事業
多種未利用バイオマスに対応したニュートレファクション(半炭化)技術開発
横浜市
平成26年度 中小企業新技術・新製品開発促進助成
グリーン・ナノ粒子接合材の研究開発
経産省
平成26・27年度 国際エネルギー消費効率化等技術・システム実証事業
未利用バイオマス等の再資源化による省エネ化に関する調査
経産省
平成26年度補正 ものづくり・商業・サービス革新補助金事業
温度差発電機能付き排熱利用熱交換システム開発
環境省
平成28年度 低炭素化社会実現のための都市間連携に基づくJCM案件化形成可能性調査事業
横浜市・バタム市の都市間連携によるJCM案件形成支援事業(省エネ分野:高効率加熱分留設備)


(3) 他社との差別化

  • 産学官連携事業
    大学のベンチャー支援施設に拠点を置いているため、産学官連携事業を得意としており、民間企業のみの事業に比べて複合的な事業展開を行うことが可能である。例えば、海外との連携時など産学官で連携して事業を行うことで、現地のステークホルダー同士で連携をすることができ非常に円滑な事業運営が可能である。またその後も多くの展開が可能となる。

(4) 現状の改善すべき点

  • キャッシュフロー
    研究開発や補助金事業などは、事業完了後に補助金等が支払われることが多く、それまでの間、つなぎ融資などの対応が必要となる。こうした状況から、ファインテックではできる限り1社の金融機関と取引を行うようにしている。こうすることで、信頼関係を構築することができ、円滑なつなぎ融資が可能となる。
  • 人手不足
    従業員数と比較して多くの事業を行っていることから、常に人手不足の問題を抱えている。そのため、中小企業基盤整備機構などの専門家派遣制度や、技術センターなどのOB人材のアドバイスを受けるなど、外部との連携を積極的に行うことでこうした問題を解消している。

これまでに直面した壁


・海外案件

海外案件をこれまで多く行っているが、予測しないトラブルが頻繁に発生する。そうした1つ1つのトラブルで疲弊するのではなく、物事が動いているからこそトラブルが発生すると考えるようにしている。そう考えることでトラブルを前向きにとらえ、事業を粘り強く進めることが可能となる。

今後伸ばしていきたい点

収益基盤となるような商品を開発したいと考えている。これまで、環境・エネルギー分野の中でもエネルギーに注力してきた。しかし、今後はこれまでの知見を活かした素材化事業、特にナノ系の技術力強化、商品開発に力を入れていきたいと考えている。

環境・エネルギー分野での新事業を検討している事業者に対するメッセージ

環境・エネルギー分野のビジネスは、政策や制度などに非常に影響を受ける。太陽光発電の認可では1年間以上かかることもある。そのため、こうした政策・制度をきちんと把握し事業計画を立案する必要がある。