第4回 実践!海外潜在顧客への営業アプローチ
本連載では、中小企業が海外展開をする際に押さえておくべきポイントなどを中小企業診断士が6回シリーズで分かりやすく解説します。
今回は、営業アプローチなど海外販路開拓の実践的なポイントについて紹介します。
中小・小規模事業者の海外展開は困難の連続です。加えて、国内外における新型コロナウイルス感染症の影響も甚大。しかし、人口減少に伴う国内市場の縮小を見据えて、中期的に海外販路開拓に打って出たい事業者の方も数多くいるかと思います。
そこで今回は、営業アプローチなど海外販路開拓の実践的なポイントを紹介します。
<国内で取り組めることを徹底>
大企業と比較して、中小・小規模事業者の海外展開には資金面を含む様々な制約がありますが、国内で取り組めることを徹底して実践することで、渡航前から受注を獲得できるケースもあります。
葬祭関連の商材を扱う卸売業者が海外展開を行った事例を紹介します。進出先はシンガポールです。当社はまず、潜在顧客のインターネット検索から開始しました。「自社の製品名」「進出先の国名」や「商材名」、「Importer(輸入業者)」や「Distributor(販売店)」などのキーワードを組み合わせて検索すると、現地の輸入業者や販売店が表示されます。検索した各社の価格帯や日本企業との取引実績などから有力な潜在顧客を50社ほど選定し、それぞれの問い合わせ先へ自社製品の紹介メールを送付しました(写真付きパンフレットや、自社の英語版ウェブサイトを併記することも有効です)。返信は5社程度でしたが、うち2社は「サンプルと価格表を送ってほしい」という好意的な返答で、最終的に成約の獲得につながりました。
海外の潜在顧客に対する営業アプローチの中で重要なことは、①自社製品の存在を知ってもらう、②その魅力を理解してもらう、③購入してもらう、です。最終的な契約段階である③では、自らの足で潜在顧客を訪問し、現地調査を行う必要がありますが、①および②は国内でコストをかけずに取り組むことも可能です。
<売れてからが本当の勝負>
販売後は海外企業とのビジネスを継続的に発展させていくことが重要です。誤解を恐れずに言えば、「成約の獲得」はそれほど難しいことではありません。海外展開に取り組む事業者の製品は優れた商材が多く、その魅力を適切に理解してくれる取引先が見つかれば成約を獲得することができます。
本当の勝負は「売れてから」です。営業アプローチを一層強化し、取引額を大きく発展させ、3年後を目途に数百・数千万円規模にすることで、十分な利益が確保できるビジネスに育て上げることが大切です。実際、1年目で複数の取引先を獲得できた事業者でも、取引額が伸びず、3年目に撤退したケースもありました。
東商では、海外販路開拓に関する様々なご相談を承っておりますので、いつでも窓口へお越しください。継続的な営業強化策については、窓口で一緒に相談させていただければと思います。コロナ禍の大変な状況が続きますが、皆さまのビジネスの成長・発展を祈念しています。
潜在顧客の検索にあたって有効なキーワードの例
著者:東京商工会議所 海外展開支援コーディネーター 洞口 智行
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