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工業部会ものづくり分科会

自社製品開発事例vol.2 ~自社製品開発のすすめ~

工業部会

<事例vol.2> 株式会社総和
代表取締役社長 赤羽 立矢


マジックテープの卸売とOEMの事業に加えて、
新たな売り上げの柱として期待できる自社製品を探求



自社製品開発事例


1.自社製品開発の現場と課題


半世紀の社歴の中でBtoCの自社製品開発に成功したことがない

 当社はマジックテープとそれに付随する産業資材、部材の卸売を主にしている企業です。また横須賀に自社工場を有し、そこでは縫製などを行いOEM、半製品を製作しています。当社の製品は人の目に触れる機会があまりありませんが、社会全体のあちらこちらで使われ生活の下支えをしております。そのため、「自社の名刺がわりになる商品が欲しい」と強く思っていました。

 私は父の後を継いで社長に就任して2年、自社の今後の成長を考えた時に、継続的な商品開発に取り組む必要性を強く感じました。現在当社では医療関係と産業資材が売り上げの二本の柱となっています。そこにもう一つの柱として自社製品があると、三本の柱となって経営が安定すると考えたからです。

 これまで自社製品の開発は、担当者が企画したことは何度かあったようですが途中で立ち消えになるなど、長期的なプロジェクトで行われたことはありませんでした。このように社員レベルでは行われたことのある製品開発を、今度は社長である私が主導して推進し、BtoCの商品を生み出そうという意気込みで、「東商ものづくりゼミナール」に参加しました。

2.東商ものづくりゼミナールにおける自社製品開発への取り組み


自分が欲しいものの製品化を目指す初めての開発

 まず何を作ろうかという発想の段階で、自分が欲しいものは何かと考えることにしました。私自身は30歳の独身男性、モテたい気持ちがあるので身だしなみグッズが良いと思いつき、当社の商材である繊維資材を絡ませると、「モテたいメンズに手軽なスキンケアを提供する布製品」として洗顔パフの企画ができたのです。

 これはマイクロファイバーにより顔の角質除去を行える商品で、名付けて「フィンガーパフ」。指サック型で顔をこする方法により、細かいところまで角質除去ができます。幸い、横須賀の工場では従来からお客様の要望に対応するため毎月多くの試作品を製作しており、工場長は試作に慣れていました。私が企画を持って行き工場ですぐに試作づくりに取りかかれるような小回りのきく社内体制があったことは恵まれていたと思います。
 しかし、材料調達から苦労し、当初は国産品が見つからなかったり、指サック型の大きさに悩んだりと、課題の連続。やっとできた試作品を試してもらうには、自社の社員だと社長の私への忖度があってはいけないので、私の知人友人に使ってもらって率直な感想をもらうことに。すると厳しい意見が多く、めげそうになりました。
 その後改良して、指サック型から顔以外にも使いやすいクロス型に変更しましたが、未だ開発途上の状況です。完成しても当社では販売ルートを持っていないので、販売方法や売値など販売についても課題があります。



角質除去ができる指サック型洗顔パフ「フィンガーパフ」



3.取り組みの成果と今後のビジョン


 まずやってみることが大切、その経験を基に次のステップへ

 何もない状態で社員に話してもイメージがわかないのでまず私が試作品を作るところまでやってみたのが今の段階で、そこから次は会社全体を巻き込んだ製品開発プロジェクトに発展させて行こうと考えています。

 東商ものづくりゼミナールでも言われた「スピード感を大事にしろ」という話は重要なポイント。社会が迅速に変化していくスピードに合わせてお客様も変わっていくので、社内でじっと企画しているだけでは後手に回ってしまう懸念があります。
 また、社員には自分が欲しいと思うものは他でもニーズがあると考えて欲しいと思っています。お客様が求めるものを作るのが当社の仕事ですが、それとは別に自分が欲しいものを作って世の中に出せる会社にできたら社員のやりがいにも繋がりますし、会社の創造力が高まると考えています。社員全員がそのような考え方を持てるようにシフトしていくことが今後の課題です。ベテラン社員など新しいことへの抵抗感がある人もいる中で、新しいもの好きの私が率先垂範していくつもりです。私自身の実感として、新製品の開発は苦しんでやるのではなく楽しんでやるものだと思います。

 当社の仕入先には様々な業界があります。マイクロファイバー以外にも特色のある生地を多く取り扱っており、それらを使った新しい製品開発をこれからも積極的に行っていきたいと思います。






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東京商工会議所 中小企業部03-3283-7754