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工業部会ものづくり分科会

自社製品開発事例vol.1~自社製品開発のすすめ~

工業部会

<事例vol.1> 株式会社アルテック
特需営業部 次長 瀧瀬 伸一


現場でお客様の声を聞くことが開発のヒントに。
失敗しても諦めず、試行錯誤することが重要。



自社製品開発事例

左・原政彦 取締役営業本部長、中央・加藤節夫 社長、右・瀧瀬伸一 次長



1.自社製品開発の状況と課題


開発体制はあるものの、我流になっていた製品開発


 当社は、アルミニウム及びマグネシウムを用いたダイカスト製品の製造を行う株式会社東京ダイカストから分離して、ダイカスト製法による建築用装飾金属製品の開発・製造をしている企業です。製品開発をメインとして設立されたこともあり、ダイカストでできる製品開発を常に考え続ける社風が根付いています。私の所属する特需営業部の6人全員が開発メンバーであり、月1回の開発会議で選抜された企画を3か月に1回の全体会議で加藤社長にプレゼンし、社長の承認を得て実際に開発プロセスを進めていく流れとなっています。

 私自身が10数年前に製品開発で大きな失敗を2度しており、大きなトラウマを抱えていました。しかし、その時は減給も処分もなく「同じ失敗をするな」と言われたのみ。そのような中、開発責任者の退職があり、私が後任者となるため「東商ものづくりゼミナール」を受講するように社長から命を受けました。社長はトラウマを抱えている私に改めて外部で開発手法を勉強する機会を与えてくれたのだと思います。業務の時間外にやると言っても片手間ではできないので、受講期間中は他のことを我慢して集中して取り組む意識を持って臨むことにしました。

2.東商ものづくりゼミナールにおける自社製品開発への取り組み


身の回りの声がヒントになり、製品の企画を立てた


 当社のお客様は建設会社やマンション施工会社などがメインとなっています。日々の営業の現場でお客様の声を聞くことがすなわち開発のヒントに繋がります。ダイカストで物干しを製造していますが、壁側に取り付ける当社製品はあってもバルコニー側に取り付けるものはありませんでした。バルコニー側につける物干しは伸縮が必要となります。また、引っ越した当日から洗濯物を干したくても金具だけで竿が付いていないから困るという声があり、ここに次なる製品開発のヒントがあるのではないかと考えていました。

 構想を考えていたある日、自宅でワンピースを洗って干したいのに、バルコニーの物干しでは低すぎて丈の長いワンピースが干せないという妻と娘のやりとりが聞こえました。

 こうしたことからアイデアが閃いて、竿と物干し金物が一体化した、バルコニー側に設置する物干し金物の開発を進めようと考えました。この開発が決まると、社長がスキーのストックを持ってきて見せてくれたのが大きなヒントに。ストックは伸縮することにより長さが変わる、これを物干しに活かして高さを変えられるようにすればいい。全体イメージ、ポンチ絵、パーツ類の図を描き、ポンチ絵をベースに2D作図。必要な部品を協力会社に発注し、2D図を3Dにして、プロトタイプの製作を行い、何度もテストを繰り返しました。水平の動作性の問題、動作中の金属音、全体的な重さなど課題に対して、ひとつひとつ解決を図っていきました。



今回制作した自社製品



 開発にはスピード感を持って進めることが大切だと実感しています。ある程度期間を決めないと前進しません。そして、失敗しても諦めないこと。以前失敗した時の私が言われたように、同じ失敗をしなければいいのです。
また、東商ものづくりゼミナールの最終回で、私の製品開発発表を聞いた原営業本部長から「いろんな企業の方と一緒に学び、揉まれてよい機会になったと思う」と言われ、まさに私自身も同じ感想を感じていました。参加した企業の業種や分野は異なりますが、各社の様々な開発のやり方を知り、自社にフィードバックして視野を広げられていると思います。


3.取り組みの成果と今後のビジョン


スピード感を持って開発を継続していく


 まだ完成には至っていませんが、2023年度上期には製品実用化する計画に向けて、着々と開発の仕上げを図っているところです。社内に製品実験のための装置があり、さらにハウスメーカーさんにも荷重や耐久性などの様々な試験設備が揃っているので、これらによる試験を全てクリアして製品化になるという道のりで試行錯誤の連続であることから、苦労もあり楽しさもあるというのが正直な気持ちです。

 新しい自社製品を製作していけなければ企業は生き残れないという社長の話に共感しています。これまでの開発の成果として当社は多くの特許を持っており、それが強みになっていることもその証の一つです。下請けで会社が大きくなるのもいいですが、自社で自由にできる自社製品でお客様に満足してもらえることが喜びであり、やりがいになると思います。その実現のためには、とにかく動くこと。動いて現場を知る、お客様の声を聞く。そこから課題が見え、新製品の種が見出せるのだと考え、これからも動き回ります




  • 「ダイカスト」とは、溶融金属を金型の中に高圧力を加えて圧入することにより、寸法の正確な部品を製作する鋳造技術の一種




お問い合わせ
東京商工会議所 中小企業部03-3283-7754