~システム開発とコールセンター機能の強化で業務の幅を広げる~
取り組みのポイント
- 業者とのすり合わせで納得いくシステムを構築
- 運用面の整備のためコールセンター機能を強化
取引先・従業員との信頼構築が大切
当社は、公共の駐輪場管理業務および放置自転車への対応業務を行っています。現在は東京都23区内を中心に、90か所の駐輪場を管理し、年間でおよそ6万人の方々にご利用いただいています。当社の特徴は、直接雇用した従業員が現場を担っている点にあります。約330名のスタッフが現場に立ち、利用者の皆様に直接対応することで、きめ細やかなサービスを実現しています。
創業以来、当社が最も大切にしてきたのは「信頼関係の構築」です。主な取引先である自治体との関係はもちろん、従業員との関係においても同様です。従業員が安心して長く働ける職場環境を維持することが、安定したサービスの提供につながると考えています。そのため、日々のコミュニケーションを重視し、組織全体で信頼を積み重ねてきました。
足立区「谷中四丁目自転車駐車場」
独自の駐輪場管理システム(So-manager)を構築
当社がシステム開発に着手したきっかけは、区からの要請でした。当時は、契約者の個人情報や契約時の現金を現場で管理する必要があり、管理体制の強化が急務となっていました。情報漏洩や現金管理のリスクは従業員にとっても大きく、安心して働ける環境を整えるためにも改革が必要でした。
そこで私たちは、独自のシステム開発に踏み切りました。このシステムにより、利用者はウェブ上で契約を完結でき、支払いもキャッシュレス化。さらに、満車の駐輪場においては「空き待ち予約」が可能となり、利便性が大幅に向上しました。
システム開発にあたっては、当社役員が中心となり、本社従業員も加わってプロジェクトを進めました。全員が納得できる仕組みを目指しましたが、最大の課題は開発業者との調整でした。当社の業務内容に即したシステム構築を目指す中で、業者に我々の意図を正確に理解させることは容易ではなく、仕様が想定と異なることもしばしばありました。
修正を重ねる中で時間も費用もかさみましたが、現場や利用者、さらには自治体に迷惑をかけるわけにはいかないという強い思いから、粘り強く取り組みました。その結果、まだ改善の余地はあるものの、現場に適したシステムを完成させることができました。なお、本開発では「ものづくり補助金」を活用し、費用負担の軽減にもつながりました。
駐輪場管理システム「So-manager」
事業再構築補助金を活用した更なる挑戦
上記システム導入後、さらに2つの取り組みを行いました。1つ目は、放置自転車対策アプリ「リン太郎」の開発です。利用者が事前に自転車情報(防犯登録番号、車種、写真等)をこのアプリに登録しておくことで、撤去時の通知や盗難時の捜索支援が可能となります。新たな事業の柱として、構想自体は以前からありましたが、費用面の課題から実現には至っていませんでした。
2つ目は、コールセンターの拡充です。駐輪場利用者からのシステムに関する問い合わせや契約手順の案内業務に加え、「リン太郎」の運用を本社で一括して行わなければなりません。現場には高齢の従業員も多く、システムの細部を理解して利用者に説明するのは難しいため、コールセンターが対応を担うことになります。システム導入によりコールセンターの業務が増加するものの、当時の事務所が手狭で増員が困難でした。
これらの取り組みの後押しをしたのが「事業再構築補助金」でした。コロナ禍で利用者が減少し、売上も落ち込む厳しい状況でしたが、補助金が挑戦を後押ししてくれました。申請にあたっては、営業担当を含む社内メンバー全員で制度を調べ、申請書を自作しました。そのプロセスを通じて、納得のいく計画を策定できたことが大変良かったと思います。結果、コールセンターにおいては、4名を増員することができました。(営業にも1名増)
放置自転車対策アプリ「リン太郎」
業務効率化から新たなサービス展開へ
現在、当社が開発したシステムとコールセンター機能は、自治体から高い評価を受けています。加えて、「リン太郎」アプリの導入は入札の際の大きなアピールポイントとなり、売上は取り組み前と比較すると30%伸びました。加えて、業務効率化も実現でき、駐輪場に配置する従業員数を3分の2にまで削減できました。
今後は、情報管理の効率化と利便性向上を図るため、AI機能を搭載するなど、さらなる改良に取り組む予定です。特にAIを活用したコールセンター機能の拡充により、限られた人員でも対応可能な仕組みを目指したいと考えています。
機能を拡充したコールセンター
補助金は新しい挑戦への後押し
補助金を実際に活用してみて、その効果の大きさを実感しています。たとえば、数千万円の利益を得るには数億円の売上が必要ですが、それほど大きな案件を獲得するのは容易ではありません。その点、補助金としてまとまった金額の支援を受けられることは、中小企業にとって大きな後押しとなります。私たちも補助金をきっかけに新たな挑戦に踏み出すことができました。皆様もぜひ取り組んでいただきたいと思います。
「実際に活用して効果の大きさを実感」と野村氏
- 本社
- 足立区六町4丁目12-25
- 設立
- 1999年
- 資本金
- 4,010万円
- 従業員数
- 360人(うち正社員23人)
- 事業内容
- 駐輪場管理・運営、放置自転車対策業務
- URL
- https://www.so-rin.jp/