取り組みのポイント

  • デザイン・技術サービス部門を強化し、OEM/ODM事業を拡充
  • グローバルECを立ち上げ後、PR活動に注力
  • 引き合いに対して粘り強くアプローチ



人の印象に残る商品を開発


 当社は腕時計の企画・製造・販売を手がけています。事業は大きく3つに分かれており、オリジナル商品の開発と販売、OEM/ODM事業(他社ブランド向け製造)、そして技術サービスです。オリジナル商品は価格帯やコンセプトごとに5つのブランドを展開し、伝統工芸や人気キャラクターとのコラボレーションなど多彩な商品を提供しています。他にもベルトから香りのでる商品なども開発しました。企画開発では「人の心に残るものづくり」を意識し、多品種を少量ずつ生産するスタイルで対応しています。

5つのブランドで商品展開


 

事業構成を見直す

 コロナ禍前は販売委託先を通じたオリジナル商品の販売が多くありましたが、委託先に頼らない仕組み構築を目指して、販売委託先の見直しや技術部門を更に強化し、OEM/ODM事業の拡充を進めていきました。販売委託先を減らすことは勇気がいりましたが、企画からアフターサービスまで一貫してできること、他にはない商品づくりを地道な営業活動の中でPRしたことにより、小ロットでも制作したいという企業が多数増えていきました。


コロナが海外を考えるきっかけに

 コロナ禍では外出に制限があり、実店舗での販売は厳しく、幸いOEM先でのオンライン販売用のアニメウォッチやマルゼキブランドとのコラボ商品が好調で、当社の支えになりました。この経験は、マーケットについて考える機会となりました。
 今後、日本の人口減少により市場規模が縮小していきます。そのため、国内だけでなく海外にも目を向ける必要性を強く感じていました。様々な人に当社の課題を発信していたところ、知人からグローバルECのお話をいただき、既に実績があり優れたシステムを持っている企業で、連携することにとても興味深く感じ、「挑戦すべきだ」と判断しました。



「国内だけでなく海外に目を向ける必要がある」と河﨑氏


グローバルECが認知されるためPR活動に注力

 まず、取り組んだことは、グローバルECのためのサイト構築です。構築にあたっては、まず英語サイトを立ち上げ、その後日本語、中国語サイトを順次公開していきました。全て構築したのは2022年冬でしたが、サイト公開だけでは当社を認知いただくことは難しく、ここからPR活動に注力する日々が始まりました。
 2022年より新型コロナウイルスの影響を引きずる国内OEM先からの新規注文が減少しただけでなく、急激な円安により仕入価格が高騰する中、価格転嫁が困難な取引先もあり、コスト負担が増加し、非常に厳しい時代でした。そのため、どこまでPR費用に投資すべきか、どのようにPRすべきか、戦略を立てることにも苦労しながら進めていました。


グローバルECサイト


初めて挑戦した補助金でPRを強化

 そのような中で、この一連の取り組みを支えたのが、「JAPANブランド育成支援等事業費補助金(現ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)」です。この補助金は新商品開発から販売ツールやPR費に係る費用に使わせてもらいました。 申請書作成にあたり、詳細な事業計画を書く必要があり、初めてのことで非常に難しく苦労しました。このような悩みに専門家の助言をいただくことで、資料作成に必要なポイントを学ぶことができました。また、「経営革新計画」を取得することで、様々な補助金・助成金にもチャレンジする事ができました。新たな商品企画や他社にはないユニークな商品の販売に挑戦できる機会につながり、本当にありがたかったです。



香りも楽しめる「KAORU」


注文に至るまでの地道な取り組みが不可欠

 私たちは海外ビジネスを進める上で、沢山の課題がありました。例えば、当社サイト経由でBtoB企業から問い合わせがありますが、自分たちからメールしても全く返信が来ない事も多く、粘り強く営業活動が重要だと感じました。また、価格設定にも苦労しました。仕入れコストだけでなく、日本製品としての価値を加味して価格提示をしていましたが、相手が求める価格と乖離していることも多く、双方が納得できる価格設定には苦戦しました。 最初の1年は一つ一つに時間がかかりましたが、地道に取り組んだ結果、2024年夏頃から海外の引き合いが増え始め、現在では対応が追い付かないほど問い合わせが増えていきました。また、当社の認知度も徐々に向上しており、国内のOEM案件の相談も増えました。


まずは一歩踏み出すことが大切

 例え国内の売上が減少しても、広い海外市場でわずかでもシェアをしっかり取れれば将来的に同様の危機が起こったことに備えられると思いました。「ユニークな商品づくり」という立ち位置を確立し、越境ECをさらに伸ばしていこうと思っています。 新しいチャレンジはいずれの場合でも簡単ではありません。ただ、動かなければ未来は変わることはありませんので、一歩踏み出すことこそ重要だと感じています。
 国内には支援機関など頼れる存在がありますので、ぜひ一人で悩まず、相談しながら進むことがおすすめです。



「動かなければ未来は変わらない」と河﨑氏