取り組みのポイント

  • 作業効率化と現場支援のために、電子黒板やウェアラブルカメラを導入
  • 躍進的な事業推進のための設備投資支援事業を活用して、遠隔操作のできるテレビカメラを導入
  • 売上アップと行政からの信頼を獲得し、圧倒的な成長を遂げる



鈴木社長


現場を支えて成長していく


 当社は2013年に創業し、舗装工事、下水道開削工事、下水道更生工事などを主に手がけています。主に都内での施工が中心であり、一部では災害復旧工事にも関与しています。私自身が元々現場での経験を積んできたことから、現場が最も重要であるという認識を持っており、経営においても常に現場の視点を大切にしています。
   例えば、作業や休憩ができる多目的スペースの設置です。このスペースは部材の制作に利用されるだけでなく、夜には宴会が行えるなど多岐にわたり活用されています。社員同士の交流を促進することで、職場環境の向上や定着率の向上に寄与しています。


コロナ以降、助成金も活用しながら3つの取り組みに挑戦
①デジタル黒板の導入

 これまでは、現場ごとに4、5枚の工事黒板を持ち込み、工事終了後に廃棄していました。このやり方に疑問を抱き、「ものを作っている会社がゴミを生み出して良いのか」と考え、デジタル黒板を導入することにしました。デジタル黒板は黒板の内容が電子化され、撮影する写真に挿入できるものです。作業員にとってもかさばらず、持ち運びがスムーズである上に、黒板上で写真撮影、報告・書類作成が完結するため、完了検査前の作業が大幅に削減されました。
 導入に際しては、若手社員に黒板記入の指導や外注先に社員を派遣して操作方法を教えるなどの取り組みを行いました。全作業員が利用可能となったことから、導入後は写真や報告書類を現場ですぐに作成し、本社でリアルタイムに確認し、不備があれば即日修正する運用が実現しました。おかげで、書類作成のため残業をしていた現場監督の負担軽減につながりました。


デジタル黒板を使って書類を確認


②カメラ検査システム搭載車両による下水道管の遠隔調査

 当社は若手の作業員が多く、下水道管の状態を判定できるベテラン作業員が不足していることが課題でした。契機となったのは、展示会で見つけた遠隔調査が可能なカメラ搭載車両でした。この車両を用いれば、ベテラン作業員が現場に行かなくても遠隔地から作業や判定が可能で、空いた時間で他の業務も進められるので画期的でした。
 ネックとなったのは、この車両が1台5,600万円と高価であったことです。結局、導入までに1年検討しました。導入にあたっては、「東京都の躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」を活用し、3,000万円の助成を受けました。助成金の申請には事業計画の策定が必要で大変ではありましたが、導入によるメリットを踏まえて、何とかまとめ上げることができました。
 車両導入後は、これまで検査実施から自治体への報告まで数日かかっていたものが、検査実施当日に報告できるようになりました。また、ベテラン作業員が現場に赴く必要がないので、車だけが移動することで、1日で複数現場の検査が可能になり、対応できる案件も増えました。さらに、画像も高画質で細かい傷も把握できることから、自治体からも高評価をいただくことができました。



カメラ検査システム搭載車両


③ウェアラブルカメラの導入

 若手の現場監督が多い当社では、現場監督を支援できる仕組みがあれば良いと考えていました。このウェアラブルカメラは、各現場でヘルメットに取り付けるものですが、遠隔地にいる本社のベテラン作業員に相談できる仕組みとなっています。
 しかし導入時には、現場監督や社員から「現場を監視するためのツール」との強い反対がありました。その度に怒ることなく「このツールは現場監督を支援するためのもの」と意義を伝えることに徹しました。率直に言って、カメラ越しの作業員の姿に指導をしたい場面もありましたが、一方的な指導は現場の反感を招く可能性があるため、定着するまでの1年間粘り強く取り組みました。
 その結果、今では全現場で導入が進み、トラブルが発生した際にその場で指示を仰ぐことができる体制が構築されました。工期と品質の改善につながったほか、現場作業員も遠隔で支援をするベテラン作業員を目指し、技術向上に取り組む動きも見られ、育成面でもメリットが生まれました。取り組んでみて、現場のDXを進めるためには現場の信頼が重要であり、経営者の我慢が最も重要だと感じます。


ウェアラブルカメラの活用


助成金は会社をアップデートする機会と捉える

 当社では、新しい取り組みを始める際には必ず補助金や助成金を活用するようにしています。毎年少額でも申請するようにしており、ウェアラブルカメラもテレワーク助成金や区の助成金で導入しました。補助金や助成金を活用するのは資金面で助かることはもちろんのこと、会社をアップデートする絶好の機会になっているからです。国や東京都が打ち出す施策には、目指すべき企業の方向性が込められています。
 元々、施策や法規制には詳しくないものの、補助金の要件を達成するために都度、会社全体を見直していくことで、予想以上に良い企業に変貌しています。特に当社のような中小企業では、各施策に対応するための専門部署を設けることが難しい状況です。施策の要件に合わせて生産性向上を図り、就業規則の見直しも含めて検討することで、毎年企業としてのパワーアップを実感しています。採択されるような会社作りが、成長の促進に寄与していると考えています。



DXは成長と信頼の獲得につながる

 当社が実施したDXの取り組みにより、ベテラン社員のノウハウを同時に複数の現場に提供できるようになり、全社の効率と品質が大幅に向上しました。この成果として、売上は急速に拡大しており、今期の見込みはコロナ前の2倍にあたる15億円に達する予定です。
 さらに、DXツールを活用することで書類の不備がなくなり、行政からの信頼も飛躍的に向上しました。例えば手作業で作成された他社の報告書はチェックに1日以上かかりますが、当社の報告書は最大でも1時間ほどで確認が完了します。行政や元請けからは、「鈴木建設は他社に比べて圧倒的に優れている」との評価をいただいております。
 人手不足の中で、当たり前のことを実現するためにDXを活用した取り組みが功を奏しています。当社にとってDXは、生産性向上の手段であり、同時に営業ツールとなっていると感じています。


「DXは良い面しかない」と語る鈴木社長


今後はDXを組み合わせた新しい都市型建設会社を目指す

 今後は、昭和型の建設会社にDXを組み合わせた新しい都市型建設会社を目指しています。昭和型は伝統的なコミュニケーションを尊重し、現場作業員が充実した環境で働けるように整備する考え方です。これに加えて、DXの進展や技術の向上を活かし、新たな挑戦ができる都市型の建設会社を目指しています。
 また、AIの進化にも注目しています。将来的には事務業務の自動化が進むことで、事務職の社員が高度な業務を担当する技術職に変わると思っています。現行の業務を細分化し、効率的に進めることが可能な領域を積極的に見極め、収益を生み出す現場にリソースを分配し、社員には最大限還元することが目標です。現在の規模を維持しつつ、売上と利益率の両面で圧倒的なNo.1を目指していきます。





国・東京都の主な支援施策は こちら