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導入企業事例

導入企業事例

株式会社森下

株式会社森下 社長 降籏 啓和

創業110年超
伝統と職人・技術を誇る
特注家具メーカー

  • 製造、生産管理
  • 21名以上~50名以下
  • 業務効率化・省人化・業務改善
  • 技能伝承・脱属人化・人材育成
  • 品質向上
  • コミュニケーションツール(グループウェア、共有アプリなど)
  • その他

職人任せの「見て聞いて体で覚えろ」
というやり方を刷新。
製造工程を明文化し、
動画マニュアルを制作。
従業員が定着し、
残業は大幅削減、売上は堅調

スマートものづくり
事例MOVIE

1背景と課題

現場で課題と向き合う

体系的な研修制度をつくるため業務改革

木製家具に特化した特注家具の製造・販売を生業にする当社は、私の祖父が創業して叔父が継承。私が3代目です。

私は大学卒業後、家業とは異なる業界の大企業に入社。その後当社に入社しましたが、社内体制などを目の当たりにして呆然としました。前職の大企業では、当然のように一定期間の新人研修があり、その後もキャリアアップの研修が行われていたのですが、当社には体系的な研修制度はなく、昔ながらの「見て聞いて体で覚えろ」というやり方でした。職人によって教え方が異なるため教わる側は戸惑ってしまい、なかなか技術レベルが定着しませんでした。給与規程や評価制度もなく、どんぶり勘定で給与金額を決めていました。これでは今後の昇給の見通しも立たないため、従業員が10年後の自分の姿を描けず、人の入れ替わりが激しいのも納得できるほどのずさんな状況でした。

私と弟(現・専務)は入社当時、どんな現場でも懸命に働きましたが会社は安定せず、「歳をとってもこの状況は変わらないのだろうか」とぼやくばかり。また、私には息子がおり、いずれこの会社を継がせたいと思っていたものの、この状態では将来経営のバトンタッチはさせられないと考えていました。

このような状況が続いていた2016年頃、従業員が10年後の自分の姿をイメージできる会社、誰もがやりがいを持って働ける会社にするため、業務改革を進めることを決意しました。

2課題解決への取り組み

スマートものづくり実践

職人のための動画マニュアル、
研修プログラムを作成し、
社内の技術力を向上

今までは「見て聞いて体で覚えろ」というやり方で作業していましたが、業務改革にあたり、製作工程を明文化する必要があると考えました。そこで、2018年頃から手順書・標準書・基準書という3つの書類作成に着手しました。

手順書は、機械や道具の使い方など基本的かつ普遍的な作業手順を示したもの。家具職人のための製作マニュアル的な役割です。 標準書は、当社の社風や製造のルールを定めたもの。当社の事業の1つである特注家具の製作は、完成品は同じでも職人の製作過程に相違があると品質管理ができませんので、それを統一しました。この標準書は不具合が見つかれば更新してブラッシュアップしています。

基準書は、当社の品質基準を示すもの。検品などの規定をきっちりと決めます。

これらを2〜3年かけて完成させて活用していましたが、文章だけでは分かりにくい場合、職人は同じことを同じ人に何度も説明しなければならない、などの不満が生じていました。その頃、私はある勉強会に参加し、YouTube動画制作の講師と出会いました。この出会いがきっかけで、「見て分かる」動画マニュアルを制作しようと思いました。

とはいえ、動画制作を外注すると費用がかかります。また、自分たちが動画制作のポイントを理解していないと外注先に明確な指示を出せないと考え、まずは自分たちで挑戦することにしました。スマートフォンで撮影・編集をしたところ、意外と制作できると感じました。その後、撮影機材を購入して、社内で動画制作を行っています。完成した動画マニュアルはYouTubeにアップロードし、限定公開に設定。社内のクラウドに保存し、全従業員に配付したiPadでいつでも見られるようにしています。

この書類と動画マニュアルによる手順書を用いて、入社1年目の従業員を対象とした研修プログラムを自社で作成し、熟練の職人が講師となって、週に2回・6カ月間実施しています。繁忙期でもスケジュール通りに実施し、研修で学んだ知識・技術を定着させています。研修の記録はLINE WORKSを活用して社内で共有しています。

次に、2016年頃から「職能評価制度」を導入し、入社5〜8年までの従業員を「アシスタント層」として職能給に、それ以降の一人前の職人となった従業員を「スタッフ層」として役割給に切り替えました。これは特定の職人に仕事が集中しないよう、仕事を割り振るための仕組みづくりでもあります。当社の業務は、流れ作業や工程ごとに分担するのではなく、1つの製品に対して最初から完成まで1人の職人が担当するため、全ての従業員が技術力を身に付けることで当社全体のレベルアップに繋がります。

また、全従業員で国家資格「家具製作技能士」1級取得を目指すべく、国家検定「家具製作(家具手加工作業)」を受験させています。従業員のやりがいとモチベーションの向上のため、2級合格者に50,000円、1級合格者には100,000円の報奨金を支給しています。

さらに、工場の設備機器の入れ替えを進め、「明日にチャレンジ中小企業基盤強化事業助成金」を活用して、5〜6年かけて全ての設備機器を新しくしました。設備機器の入れ替えに伴い、手順書・基準書を更新し、動画マニュアルの制作も随時進めています。現在まで動画マニュアルは22本制作しており、今後は新たに「アシスタント育成プログラム」に関する動画マニュアルの制作にも着手し、2024年11月までに完成させる予定です。

3効果および今後の目標

課題解決

製造工程を標準化でき、
残業時間の減少を実現

標準書などの書類を作成した目的は、製造工程の標準化を図るためでした。動画マニュアルも活用したことで、従業員からも好評を得て、現場の作業はスムーズに進んでいます。その結果、格段に業務効率がアップ、生産性も向上し、残業時間は大幅に減少しました。2023年度の残業時間は、取り組み前の2019年に比べて、約3分の1まで削減できています。

現在、当社の従業員の平均年齢は約38歳、男女比は3:1。2024年4月には新たに2名入社します。

引き続きマニュアルや研修などを用いた人材育成に注力して、技術力や業務効率のさらなる向上を目指し、現在の売上3億円から2030年までに5億円を目標に邁進します。

誰でも分かりやすく、納得する仕組みづくりを

POINT
  • 昔ながらの「見て聞いて体で覚えろ」というやり方を改善し、動画マニュアルなどを用いて製造工程の標準化を図った結果、業務効率が向上し、残業時間は大幅に減少。
  • 繁忙期でもスケジュール通りに研修を実施して学んだ内容を定着。
  • 従業員を公正に評価するため「職能評価制度」を導入。全ての従業員が技術力を身に付けることで、社内全体のレベルアップにつながる。

企業情報

会社所在地:東京都江戸川区船堀2-4-3
【姉崎工場】千葉県市原市姉崎西3-8-1
【千葉東工場】千葉県千葉市若葉区中田町20-1
電話:03-3680-4546
従業員:21名
創業:1910年
資本金:3,000万円
web:https://www.morishita-1910.jp/
2024年2月時点