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導入企業事例

導入企業事例

株式会社内田染工場

株式会社内田染工場 代表取締役 内田 光治

市場が縮小する染色業界で、
最新の技術と職人経験を活かす
老舗染工場

  • 製造、生産管理
  • 21名以上~50名以下
  • 業務効率化・省人化・業務改善
  • 技能伝承・脱属人化・人材育成
  • ミス削減・不良率低減
  • 品質向上
  • 稼働率向上・見える化(機械設備・人)
  • ハードウェア(機械、タブレットなど)
  • 生産管理システム、販売管理システム(製品・部品在庫管理、原価管理など)

【2019年2月取材時点】

機械化と職人の経験を融合。
取りこぼしなく顧客を獲得

スマートものづくり
事例MOVIE

1現場で課題と向き合う

時代のニーズに合わせるため、職人の勘に頼っていた工程を機械化

時代のニーズに合わせるため、
職人の勘に頼っていた
工程を機械化

当社は1909年に染屋として創業し、現在はTシャツやジャケットなど“製品になったものを染める”製品染めが中心の工場です。以前は職人の経験や勘を頼りに色を判別してクライアントからのオーダーに対応していましたが、染める人によって色味が微妙に違っていました。そのため、2008年頃から色をデータで管理することにしました。
 しかし、ストックした色データを参考にしてオーダーをいただいた色に染めるんですが、どうしても色味に誤差が出てしまう。そこでコンピューターで色を識別して、よりサンプルに近い色を自動生成するコンピューターカラーマッチングシステム(CCM)という機械を、ものづくり補助金を利用して3年前に購入することにしました。当初は、コンピューター任せになり職人の腕が落ちるかもという不安もありました。しかし実際に使用している工場へ見学に行き、機械の再現性の高さを確認。「これは絶対に戦力になる」と感じて導入を決意しました。

2スマートものづくり実践

色のデータを蓄積しシステムをカスタマイズタブレットによる作業の見える化にも挑戦

色のデータを蓄積しシステムを
カスタマイズタブレットによる
作業の見える化にも挑戦

CCMはデータが入っていない状態で納品されるので、まずは色のデータをインプットさせないといけませんでした。さまざまな生地と染料の組み合わせで染めたものをコンピューターに読み取らせ、3ヶ月かけて一つずつ覚え込ませていきました。
 また、従来は職人の作業状況を正確に把握できておらず、人によって作業量にばらつきが生じてしまっていたため、2000年頃から作業状況の見える化に取り組みました。4~5年かけて、アパレルの生産システムや受注出荷を得意にしているソフトメーカーに協力してもらい、当社仕様にカスタマイズした業務管理システムを開発しました。
 受注内容をこのシステムに登録することで、この商品は何枚で何色に染めるなどの情報が一括管理できるようになりました。投資額は400~500万円程かかりましたが、業務の合理化が進むことで、作業効率が上がりペイできるだろうという目算はありました。さらに、このシステムを最大限に活用するため、2013年頃にスタッフ全員にタブレットを配布しました。

3課題解決

職人の技術力とIT技術の組み合わせにより高品質と効率性の両立を実現

職人の技術力とIT技術の
組み合わせにより
高品質と効率性の両立を実現

お客様に本番用の色見本としてお見せする“ビーカー染め”という工程があるのですが、CCMの導入によりこれが劇的に早くなりました。従来は1〜2週間かかっていたものが、現在はオーダー当日に出せるようになり、スケジュールなどの問題で取りこぼしていた受注も取れるようになりました。
 また、業務管理システムを搭載したタブレットの配布により、スタッフ全員の作業状況が一括管理できるようになり、誰にどの作業・機械をわり当てるのがいいかなどの目安がつくようになりました。現場にも持ち運びしやすいタブレットにしたことで、進捗状況のリアルタイムでの入力が可能となり、作業の効率化だけでなく、お客様からお預かりしている商品の管理も可能になりました。最新の機械と業務システムを組み合わせることで高品質と効率性の両立が実現し、経営の苦しいアパレル業界においてもしっかりと売り上げが立っています。

何か情報があったら耳を傾けてみて、
いろんな人の話を聞いてみる事が大事

何か情報があったら耳を傾けてみて、いろんな人の話を聞いてみる事が大事

当社のシステムは専門業者にお願いしましたが、最近は自分で組みたてられるソフトみたいなものも多数あります。今から始めるなら、そういうソフトにトライしてみても面白いかなと思います。例え上手く行かなくても当たり前と思って、まずは始めてみることが大事。やってみないと分からないですし、そこから学ぶことも多いです。あとは、常に何か情報があったら、耳を傾け、いろんな人の話を聞いてみることも重要です。私は好奇心旺盛なので、いろんなことを試して楽しみながらやっています。

【2023年2月取材時点】

業務効率化から強みへと変化してきた
「デジタル活用と職人技術の融合」
オリジナルブランドの開始と
情報発信の強化

1前回(2019年2月)取材以降の、業務効率化・平準化に関する
取り組みとコロナ禍の影響について

前回(2019年2月)取材以降の、業務効率化・平準化に関する取り組みとコロナ禍の影響について

短納期で、なおかつ小ロットでの依頼が多いアパレル業界からの受注が大半を占める当社にとって、前回、紹介された「CCM(コンピュータ・カラー・マッチング)システム」と「業務管理システム」を用いた作業期間の短縮や品質の平準化への取り組みは、今や欠かせないものになっており、当社の大きな強みになっています。また、顧客に対し、より正確な納期を説明できるよう、職人が今どの程度業務を抱えているかなどを他の社員でもすぐに分かるように、「業務管理システム」を活用した見える化にも取り組みはじめました。同じ業界から転職してきた中途入社の社員からは、どうしても職人の手作業や経験に頼っている部分が多い業界のなかで、当社のシステム面・設備面は進んでいるとの意見も聞くことができました。ものづくり補助金などの各種支援制度を活用しながら毎年のように導入している最新機材のハード面と、「CCMシステム」「業務管理システム」といったソフト面が、うまく機能し成果を挙げていると感じています。

それらシステムのおかげもあり、たくさんの企業から引き合いをいただいて、その期待に応えるべく、社員一同、懸命に取り組んでいたところに、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が起こりました。多くの業界でそうであったように、当社のメイン顧客の大半を占めるアパレル業界においても活動が鈍化。当社の売上は最大で3割ほど減少するなど厳しい状況に見舞われました。その後、経済活動の正常化とともに、徐々に売上も回復してきていますが、いまだコロナ前の水準には戻っていない状況です。加えて、昨今の急激な原材料・エネルギー価格などの高騰の影響も受けており、顧客の理解もいただきながら、料金の設定をしているところです。

2新たな取り組みについて

新たな取り組みについて

自社オリジナルブランド
「UCHIDA DYEING WORKS」
の開始

近年、世界的に高まっている環境汚染対策への意識の高まりに対し、化学薬品の使用や不足しつつある淡水の汚染など環境負荷の高い繊維産業の中でも、染工場だからこそできることを真剣に検討しました。そこで考えたのが、使い古された古着や倉庫で眠っていて廃棄を待つばかりの服を、当社で仕入れ、染色・脱色などの加工を行ったうえで、再度販売する「UCHIDA DYEING WORKS」で、2019年8月にスタートさせました。「新品よりも面白い」をコンセプトに、アップサイクルを実現した製品づくりを実践しており、例えば、オリジナルブランドのひとつである「再構築シャツ」は、古着を一度解体し、それぞれのパーツ毎に異なる染色加工を施したうえで、再度縫製しています。オリジナルブランドは、イベントなどへ出展した際に販売しているほか、自社で製作したECサイトでも販売しており、おかげさまで生産が追い付かない製品が出るほど好評です。今までは顧客からの要望に如何に応えていくかが腕の見せ所でしたが、自社製品の開発・販売では製品の企画から考えなければならないなど異なる難しさがある一方で、今まで当社とは接点のなかった方が新たにファンになってくださるといったうれしい効果もありました。

社員の提案から
公式Instagramをスタート

コロナ禍であった2020年4月に、社員からの提案を受け、会社としてのInstagramを始めました。多彩な加工のバリエーションや工場内の様子のほか、出展する展示会・販売会などの情報を発信していて、現在は3,000人を超える方にフォローしていただいています。アパレル業界の方はもとより、異なる分野で興味を持っていただいている方も多く、最近ではDMにて仕事の依頼が来ることもありました。また、海外からの相談も来ており、言語や決済の方法など検討すべきことは多くありますが、海外展開への可能性を感じています。

3今後の取り組みについて

今後の取り組みについて

国内市場の縮小に伴って、既存の顧客や今までと同じ業務の範囲だけでは売上は先細りしていくのではと懸念しています。そうしたことを見越して、現在は自社オリジナルブランドの製造にて培ったノウハウを活かして、アパレルメーカーが抱えている在庫を当社が持つ染色技術を用いて蘇らせたうえで、環境に対するストーリーも含め、付加価値を付けて販売することを提案しており、すでにいくつかのアパレルブランドと一緒に進めているものもあります。今後、その取り組みをさらに拡大していきたいと思っています。また、アパレル業界以外の分野、例えば染色を用いたカーテンなどインテリア業界にも販路を拡大していくなど、顧客の業界を分散化することにも取り組んでいきたいと考えています。

また、国内のみならず、海外展開も進めるべく、自社オリジナルブランドを海外にも販売していくとともに、海外メーカーからのOEMも獲得するべく、SNSでの情報発信や展示会への出展を行っていく予定です。 当社は創業110年を超える老舗と言われるメーカーですが、長い時間を掛けて培ってきた染工場としての職人の技術は変えずに、変わりゆく顧客ニーズや時代の要請には柔軟に応えられるよう、日々進化していく最新の技術も使いこなしながら、これからも新しいことに挑戦していきたいです。

企業情報

会社所在地:東京都文京区白山3-5-2
電話:03-3811-8512
従業員:25名
創業:1909年
資本金:1,000万円
web:https://uchida-d-works.co.jp/
オリジナルブランド「UCHIDA DYEING WORKS」:https://www.uchidadyeingworks.com/
2023年2月時点