HOME (準備中)
導入企業事例

導入企業事例

渡邉製本株式会社

渡邉製本株式会社 代表取締役 渡邉 浩一 専務取締役 渡邉 彰子

SNSを通じたユーザーとの交流で
ファンづくりをする、
老舗の製本会社

  • 企画、設計
  • 顧客対応・営業
  • 11名以上~20名以下
  • 販路拡大
  • 自社技術、情報の発信・ブランド化
  • 各種SNS(YouTube、Facebook、インスタグラムなど)

【2019年2月取材時点】

お客様との距離が近くなり、
ダイレクトに感想やご意見を
いただけることが嬉しい

スマートものづくり
事例MOVIE

1現場で課題と向き合う

業界全体の斜陽化新たな取引先を開拓したい

業界全体の斜陽化
新たな取引先を開拓したい

当社は1946年の創業以来、出版社から発行される書籍を中心に、博物館の図録やハイブランドのノベルティとして使われるノート等、高い精度が要求される製本の委託加工を手がけています。小規模な工場のため大量生産は難しいですが、デザイン面や機能面を重視した複雑な仕様の製本や手仕事による丁寧な製本を得意としています。しかし、ここ数年は紙離れが進み、出版業界全体が斜陽化。それに伴い、製本業界も売り上げが減少傾向にあります。
 多い時には1,400社あった都内の同業者は450社に減少しているほどです。そのような状況のため、既存の取引先だけに頼らず、新たな取引先の拡大や、個人からの受注による売上の積み重ねの必要があり、自社の強みを広く周知することが求められていました。すでにホームページを持ち情報発信をする製本会社もありましたが、自分自身、アナログ人間でインターネットを使った情報発信には苦手意識を持っていました。

2スマートものづくり実践

職人の技術やこだわりなどユーザー目線に立った情報発信

職人の技術やこだわりなど
ユーザー目線に立った情報発信

しかし、このまま委託加工を続けたとしても、当社の名前が広まることはありません。少しでも情報発信をしようと、ホームページを2011年に立ち上げました。他社のホームページも参考にしながら、素人の方でもチェックマークで見積もりを依頼できるフォームを作ったり、さまざまな方が使いやすいように心がけました。同時期に会社としてFacebookのアカウントを取得。2016年からは製本技術や仕事のこだわり、商品の紹介を月1~2回程度更新するブログをスタートしています。
 ブログは長文または、盛りだくさんの内容になることが多く、作成に時間がかかりますが、仕事中のスキマ時間や電車での移動中などを活用しています。また、委託製本の受注が減少する中で、これまでに培った製本技術を活用した自社製品の開発にも着手しました。2016年12月より、日本製の高級紙を使い、360°折り返して開ける製本を施した、「使いやすさ」「書きやすさ」にこだわったノート「BOOK NOTE」を販売しています。「BOOK NOTE」の販売を機に、TwitterやInstagramもスタート。
 これらのブログやSNSの更新は、私と妻で担当しています。先日、製本する手仕事の様子を動画撮影し、Instagramにアップしたところ、数万件のアクセスがありました。Twitterではイベントの告知や、製品の感想へのつぶやきをリツイートしたり、感想へのお礼を返信しています。SNSでは、ネガティブな内容や、批判的な投稿はしないようにという点には特に留意しています。

3課題解決

新たなファン獲得につながり取引先が拡大 SNSを通じて個人ユーザーとの距離も縮まる

新たなファン獲得につながり
取引先が拡大
SNSを通じて個人ユーザーとの
距離も縮まる

SNSは現在も一日で500件ほどの閲覧があります。開設したことで、23区だけでなく大阪や名古屋、四国まで取引先が広がりました。また、英語のSNSはないのですが、アメリカやスコットランド、香港、マレーシアなど、海外の方からも問い合わせがあり、受注に繋がっています。嬉しいことに、製品の感想を直接いただいたり、BOOK NOTEの具体的な使用方法を教えてもらうこともありお客様との距離が近づきました。製品開発の際に、SNSでご意見をお聞きしたこともありました。そのときいただいたご意見は、ノートの方眼のサイズに関することでしたが、実際に製品に反映しています。
 SNSで小売店の方に商品を売り込むなど、新たな人脈が広がり楽しく感じています。SNSにかかりっきりになることはできないのですが、他の方のSNSを参考にしたり、実際の反響から学んだりして、今後も手探りながら効果的な内容を発信していきたいです。

開設して終わりではなく、
発信をし続けることが大事

開設して終わりではなく、発信をし続けることが大事

ホームページがない会社については、まずは開設することをおすすめします。費用が心配かと思いますが、私たちは荒川区からの補助金をいただき開設しました。そのようなサポートもありますし、そのほかにもランニングコストを抑えて作る方法はいろいろとあります。SNSについては、無料でできます。情報を発信することで、自分たちの強みや弱みを改めて整理することもできます。
 ただ、ホームページやSNSのアカウントは作って終わりではなく、いかに自分たちで更新・発信できるかも重要だと思いますので、開設してからがスタートです。私たちもわからないなりに手探りでやっています。一緒に頑張っていきましょう。無駄にはなりません。

【2023年2月取材時点】

SNSの応用でファンを巻き込んだ
商品開発・PRを実現し、海外展開も強化

1前回(2019年2月)取材以降の、
SNS活用の取り組みについて

前回(2019年2月)取材以降の、SNS活用の取り組みについて

Twitter、Facebook、InstagramといったSNSでの情報発信は継続していましたが、業務が忙しくなると休憩時間に更新を行わなければならず、四六時中、仕事のことを考えている状況でした。ただ、2020年に、娘が入社したことで、更新作業を分担できるようになり、余裕が出るようになってきました。「記事・原稿の作成は社長」、「写真の撮影や動画の編集は専務(妻)・娘」というように、複数人で役割分担を行うことで、無理なく続けられる体制が構築できたと思います。

SNSでは、自社製品を購入してくださる多くの方からコメントがありますが、最近は展示会などに出展した際に同業者の若い社長から「工場見学をさせてほしい」、「話を聞かせてほしい」といった声を掛けられるようになり、それがきっかけで取引先の開拓にもつながるなどの効果も出てきています。 また、従業員・取引先の理解を得たうえで、工場で作業している従業員の様子を動画でアップしており、SNSや動画の再生数を気にしてくれている従業員もいます。当社が、何らかの賞を受賞したり、メディアで紹介されたりした際には、社内で共有しており、従業員も喜んでいます。

2新たな取り組みについて

新たな取り組みについて

SNSを活用したアンバサダー制度の開始

自社製品の魅力をもっと多くの人から発信してもらいたいとの思いから、2020年4月頃に、Instagramにて自社製品「BOOK NOTE」の魅力を広めてくれる「アンバサダー」の募集を開始しました。無報酬であったにもかかわらず、有難いことに、当社製品を使用いただいているお客様や、文房具が好きという著名なマンガ家の先生、留学生などからの応募もありました。アンバサダーの投稿が雑誌に掲載されることもあり、思わぬところで情報発信ができています。自分たちだけで情報を発信しようと思っても、限界がありますが、アンバサダーによって、今までとは異なる層にも効率的に情報を発信することができています。

アンバサダーは、製品ごとに5名程度募集をしており、今まで20名以上の方が就任しています。製品PRに加え、マーケティング調査にも協力していただいており、当初想定していた以上に活動していただき、効果を生んでいます。

支援制度を活用した海外販路開拓の展開

想定外であったコロナ禍により、企業活動も鈍化し、当社製本業の売上は、最大で3割ほど減少するなど厳しい状況に見舞われました。そのなかで、何か新しい取り組みを行わなければと思っていたところに、日頃アドバイスをいただいている専門家から勧められ、以前から検討していた海外展開を一気に進めました。

海外展開に必要な費用を賄うため、専門家から教えてもらった各種支援制度に応募してみることにしました。

まずは、ジェトロ((独)日本貿易振興機構)が、全国各地の魅力ある工芸品、日用品等の輸出を総合的に支援する「TAKUMI NEXT」に応募し、2021年8月に採択されました。同制度を活用し、英語版の会社PR動画を制作したほか、海外バイヤーとのマッチングを行ったことによって、海外4店舗(イギリス、フランス、シンガポール、韓国)にて、自社製品を取り扱ってもらえることになりました。

また、東京都が、東京の特色ある優れた商品の販売やPR活動を支援する「Buy TOKYO」を活用し、2022年4月に英語版サイトを立ち上げたことで、海外企業における認知度向上に役立っており、当社ではこれまでアメリカやオーストラリア、シンガポール、マレーシアなどの海外ブランドからOEMの依頼が来るなどの実績を挙げています。

3今後の取り組みについて

今後の取り組みについて

業績は徐々に回復していますが、いまだコロナ禍による影響は完全にはなくなっていません。有難いことに当社の製品は、各種メディアに取り上げられており、一見華々しく見えますが、やはり売上の柱は製本業であり、製本に関する技術があってこその自社製品だと思っています。したがって、まずは製本業の立て直しを図るべく、展示会への出展や、既存顧客への関係強化などに取り組むなど試行錯誤しながら取り組んでいます。

一方で、自社製品に関する取り組みでは、海外展開の更なる強化を掲げ、今後は海外での展示会出展なども視野に入れていきたいと思っています。2022年11月で、自社製品をリリースしてから6年経過しますが、製品ブランド力を向上させるための改良や、販売のためのマーケティングの立案など、まだまだやることは山積みです。これからも、応援してくれるお客様の声を力にしながら新たな挑戦をしていきたいです。

企業情報

会社所在地:東京都荒川区東日暮里3-4-2
電話:03-3802-8381
従業員:11名
創業:1946年
資本金:1,200万円
会社HP:http://www.watanabeseihon.com
オンラインストア:http://www.booknote.tokyo/
2023年2月時点