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導入企業事例

導入企業事例

日本琺瑯釉薬株式会社

日本琺瑯釉薬株式会社 代表取締役 小島 大介

国内外の取引先200社に最適な
素材を提案し開発
特殊ガラス「ガラスフリット」を扱う
スペシャリティマテリアルメーカー

  • 企画、設計
  • 製造、生産管理
  • 21名以上~50名以下
  • 業務効率化・省人化・業務改善
  • 技能伝承・脱属人化・人材育成
  • その他

会社の強みである
技術力・開発力をアップし続けるため
高いレベルの仕事を受注し
人材育成と技術継承にひと工夫

スマートものづくり
事例MOVIE

1背景と課題

現場で課題と向き合う

新たな開発・製造に活路を見出す

当社は1955年に祖父が創業し、2代目の父が釉薬の事業を始めました。その後、絶縁性の高い「絶縁用ホーロー」(特殊ガラス)を開発し、抵抗器という電子部品などの分野で発展していきました。しかし、私が入社した1990年には、倒産寸前の厳しい状況でした。入社後、会社の建て直しを考えた結果、これからは半導体とともに電子デバイス部品が不可欠な時代になると仮説を立て、付加価値の高い電子材料用ガラスフリットを開発・製造することが会社存続の道だと考えました。

ガラスフリットとは、ものの表面に焼き付けたり、他の素材と混合して焼結することでそのものに備わっていない機能を付加できる特殊なガラス粉末です。ガラスフリットは、1,000万分の1ミリの単位で品質をコントロールする必要があり、これまでとは製造工程やガラスの特性が違います。当社には当時、製造するための十分な資金も設備もノウハウもありませんでしたから、中小企業総合事業団(現・中小企業基盤整備機構)の補助金などを活用したほか、東京都立産業技術研究センターの研究者から開発に関する助言や、同センターへ研修に来ていた学生に技術者として入社してもらい、1998年から彼と二人で「ガラスフリット」の開発を始めました。開発後は、顧客からの依頼に対して、儲かるかどうかではなく、“技術的な価値があるか”“社会的な価値があるか”、という観点で判断してどんな案件でも引き受けて、約25年間で技術力や製造に関するデータ・ノウハウを蓄積して当社の大きな強みとなりました。

しかし、データ・ノウハウの蓄積を重視して赤字になるような案件も引き受けていたため、会社の利益は上がらず、従業員に十分な給与を支払えない時もありました。従業員に私の想いや現状、自社の目指している姿を共有して、会社のベクトルを同じ方向にすることが課題でした。

2課題解決への取り組み

スマートものづくり実践

従業員に会社の現状を理解してもらい、
各自が成長する仕組み

①決算書の共有

まず私が取り組んだのは、毎年決算書を従業員に公開し、財務状況を説明することです。会社の状態を共有して、従業員一人ひとりが今後何をすべきか考える、私はこれが一番の従業員教育だと思っています。従業員には、当社の付加価値額や労働分配率も提示・説明して、現状を理解してもらっています。継続して適切な給与を支払うためには、自社の技術力を高めて付加価値の高い仕事に対応するほか、経費削減や生産性向上が必要と話しています。そのために従業員一人ひとりに改善・改革を促し、会社一丸となって取り組んでいます。

 

②スキルマップ、ジョブローテーション

2023年にISO9001(品質マネジメントシステム)の教育項目の規定に沿って、「スキルマップ」を作成しました。これは当社の福島県矢祭工場で働く技能職が対象で、一人ひとり作業できる工程を示すもの。「◎」は大半の作業を一人でできる、「○」はある程度のサポートに入れる、「△」はトレーニング中、の3段階で示し、1年ごとに見直しています。また、2〜3年ごとに技能職の担当作業を変更し、一人ひとりが様々な仕事に取り組めるようジョブローテーションをして、BCP対策にも対応しています。

 

③フォローアップノート、目標チェックシート

技術職・技能職においては、20年ほど前から「フォローアップノート」による新人教育を行っています。これは新人と先輩従業員との交換日記のような形式で、1年間毎日続けます。内容は、新人が今日やったことや、初めて覚えたこと、感想等で、それらに対して先輩からフィードバックを記載します。デジタルな時代に手書き形式を採用している理由は、温もりがあって距離感が近く感じられると思っているからです。フォローアップノートを継続していることで、従業員同士のコミュニケーションの促進にもつながっています。また、2年目は、個々の目標管理をするために「チャレンジシート」を作成させ、所属長と個人面談をしながら、年間の業務や本人がやりたいことなどをすり合わせており、人材育成にも効果的です。

3効果および今後の目標

課題解決

事業拡大とともに
人材育成にいっそう注力

人材育成について、いろいろな工夫をしていますが、一番重要なのは、仕事を通じてどのように人材育成をするか、だと思います。同じレベルの仕事を繰り返し対応するだけでは、従業員の成長機会を逃してしまいます。現状より高いレベルの技術を要求される仕事を積極的に引き受けることが、人材育成につながります。中小企業に高いレベルの仕事を依頼できるか不安もあるでしょうが、それを払拭させる程の技術的優位性・技術的根拠を示せればいいと考えています。

今年は従業員に向けた決算説明会で、20年後の売上100億円、経常利益25億円の目標を掲げました。ガラスフリットの開発は、顧客の依頼に対してカスタマイズして対応する高度な仕事ですが、毎月50〜60種類の試作品を制作しており、1日あたり2〜3種類、多い日には10種類ほどの試作対応があります。4年前から毎年新人を1人採用していますが、顧客からさらにレベルの高い依頼が増え続けており、嬉しい悲鳴をあげています。事業拡大とともに、新たな人材を受け入れて育成できるよう、着実に取り組みたいと思います。

仕事を通して従業員の技術力を高める

POINT
  • 毎年決算書を共有することで、従業員が会社の状況を自分ごととして捉えることができる。
  • 新人と先輩従業員との交換日記を実施して、従業員同士のコミュニケーションの促進を図っている。
  • 2~3年ごとに技能職のジョブローテーションを実施して、多能工やBCP対策にも対応する。
  • 今よりレベルの高い仕事を受注することで、技術力向上や人材育成を促すことができる。

企業情報

会社所在地:東京都板橋区宮本町49-1
      工場:福島県東白川郡矢祭町下関工業団地
電話:03-3969-4561
従業員:32名
創業:1955年
資本金:4千万円
web:http://www.nhy.co.jp/
2024年2月時点