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企業向け新型コロナウイルス対策情報 【2020/04/28改訂】第7回 健康診断の延期にまつわる考え方

2020年4月28日
東京商工会議所

東京商工会議所では、新型コロナウイルスが感染拡大する中、企業での対策に活用できる情報として、産業医有志グループ(※)より提供される「企業向け新型コロナウィルス対策情報」を配信(不定期)しております。

※本対策情報は、産業医有志グループ(今井・櫻木・田原・守田・五十嵐)が作成し、厚生労働省新型コロナウイルス対策本部クラスター対策班・和田耕治先生(国際医療福祉大学・公衆衛生学教授)のサポートも受けたものです。詳細は本ページ下部の「文責」をご覧ください。


《4月21日(月)に、厚生労働省による「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」が更新されました。》
→今回は、その変更を踏まえた「第7回 健康診断の延期にまつわる考え方」改訂版になります。ご確認ください。

【2020/04/28改訂】 第7回 健康診断の延期にまつわる考え方

経営者・総務人事担当者のみなさま、予定されている健康診断は漫然と延期するのではなく、時期とやり方を考えて決めましょう。


1.課題の背景

厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)(2020年4月21日時点版)」とその関係文書によると、雇入時の健康診断、定期健康診断などの一般健康診断(労働安全衛生法第66条第1項)は、「当面6月末まで延期して差し支えない」とされています。
今回、労働安全衛生法に基づく健康診断を労働衛生機関や病院(以下「実施施設」)に委託している中小企業を念頭に、健診の延期にまつわる考え方について、いくつか例を挙げて解説します。


2.企業でできる対策

○雇入時の健康診断、定期健康診断等は、当面6月末までは無理に実施しなくてよい。

○7月以降は再開がありうることと年間計画を踏まえて検討する。

○特殊健康診断やじん肺健康診断は優先して極力実施する。

○健診を延期した場合でも、就業上の措置の確認・見直しを行う。

<例1>
毎年4月頃に実施している雇入れ時の健康診断や定期健康診断は・・・

・当面6月末までは無理に実施しなくてよい

 雇入れ時の健康診断(労働安全衛生規則第43条)の実施時期は雇入れの直前又は直後ですので、4月1日付けで雇用した従業員の場合、3月末か4月のどこかが通例です。
 また、近い時期に定期健康診断(同第44条)や特定業務従事者の健康診断(同第45条)も行う企業も多数あります。
 今年は、厚生労働省Q&Aにある「当面6月末まで延期して差し支えない」を「6月末までには実施しないといけない」と解釈して手配を急ごうとしている企業もあると見聞きしますが、慌てる必要はありません。「とりあえず6月末までは無理にやらなくてもよい」と捉えるほうが妥当です。

<例2>
6月末まで延期した健診は・・・

・7月以降は再開がありうることと年間計画を踏まえて検討する。

・実施するときは会場での「3密」と接触感染を防ぐ対策をとる。

 「当面6月末まで延期して差し支えない」の後、7月以降は、「さらに延期して差し支えない」となるか、「これ以上延期せず健診を実施せよ」となるか、どちらもありえます。実施施設の担当者とスケジュールや感染防止対策をよく打合せしておくことが大切です。
  
 スケジュールに関して、誕生月など年間通じて健診を実施している場合は、延期分を他の月に振り替えます。年1回の定期健診は5月頃、特定業務従事者の年2回目は11月頃、のように時期を固めて一斉に実施している場合、対象者が多い1回目と比較的少ない2回目を入れ替える方法が考えられます。
 健診の時期や実施施設を固定していない場合、5月時点でいきなり「今年いっぱい延期するので12月までに近くの病院で受けておくように」といった方針を出してしまうと、多くの従業員が未受診のまま12月が迫るおそれが想定されます。健診以外の行事を含む年間計画を踏まえ、概ね3か月以内(四半期)のスパンで見通しを示すほうが無難です。

 感染防止対策のうち「3密」(密閉・密集・密接)を避ける方法として、できるだけ広い会場を確保する、一度に会場に入る人数を制限する、会場内にいる人同士の距離をとるか仕切りを設けるなどがあります。
 接触感染防止を図る方法として、聴力検査用ヘッドホンなど複数名の手が触れる備品は、家庭用洗剤かアルコール消毒剤で清拭する、などがあります。

<例3>
延期対象に含まれない特殊健康診断やじん肺健康診断は・・・

・「3密」と接触感染を防ぐ環境で極力実施する。

 4月21日時点で、一定の有害業務に従事する労働者を対象とする特殊健康診断(有機溶剤、特定化学物質など)やじん肺健康診断(じん肺法)は、例2で挙げたような感染防止対策を講じた上で、法令に基づく頻度での実施が求められています。
 ただし、十分な感染防止対策を講じた実施施設での実施が困難な場合には、6月末まで延期することとして差し支えないとされています(4月21日版で追加)。少なくとも、対応できる人数が限られる場合、優先すべきはこれらの健診です。

<例4>
 健診を延期した場合でも・・・

・就業上の措置の確認・見直しを行う。
 
 健診を延期した場合でも、前回までの健康診断結果、あるいは傷病休職などの事情により就業制限等(例:残業や深夜勤務の制限、車両・クレーン運転作業の制限)の対象となっている方の措置内容の確認・見直しはしておきましょう。
 例えば糖尿病を抱えた労働者が長時間の残業を強いられ、食事の節制や必要な通院治療がままならない状況になっていませんか。労働安全衛生法(第66条の5)では、事業者に対して、労働者の健康診断結果と実情を踏まえた就業上の措置を義務づけています。ここでいう「就業上の措置」とは、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮のように個人を直接対象とするものだけでなく、作業環境測定の実施、施設の整備のように職場環境を対象とするものの両方が含まれます。


〔関連情報リンク〕

(1)厚生労働省
  新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)(2020年4月21日時点版)
  ※本ページ下部のリンク(1)をご覧ください。

(2)厚生労働省
  新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえた労働安全衛生法に基づく健康診断の実施等に係る対応について(2020年3月11日)
  ※本ページ下部のリンク(2)をご覧ください。
  ※リンク先は (独)労働者健康安全機構 福島産業保健総合支援センター

【2020/04/20掲載(改訂前)】 第7回 健康診断の延期にまつわる考え方

経営者・総務人事担当者のみなさま、予定されている健康診断は漫然と延期するのではなく、時期と方法を考えて決めましょう。

1.課題の背景

厚生労働省「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)(2020年4月17日時点版)」とその関係文書によると、雇入時の健康診断、定期健康診断などの一般健康診断(労働安全衛生法第66条第1項)は、「当面5月末まで延期して差し支えない」とされています。
※本ページ下部のリンク(1)をご覧ください。
今回、労働安全衛生法に基づく健康診断を労働衛生機関や病院(以下、「実施施設」)に委託している中小企業を念頭に、健診の延期にまつわる考え方について、いくつか例を挙げて解説します。


2.企業でできる対策

○雇入時の健康診断、定期健康診断等は、当面5月末までは無理に実施しなくてよい。

○6月以降は再開がありうることと、年間計画を踏まえて検討する。

○特殊健康診断やじん肺健康診断は優先して極力実施する。

○健診を延期した場合でも、就業上の措置の確認・見直しを行う。


<例1> 毎年4月頃に実施している雇入れ時の健康診断や定期健康診断は・・・
 
・当面5月末までは無理に実施しなくてよい
  
雇入れ時の健康診断(労働安全衛生規則第43条)の実施時期は雇入れの直前または直後ですので、4月1日付けで雇用した従業員の場合、3月末か4月のどこかが通例です。
また、近い時期に定期健康診断(同第44条)や特定業務従事者の健康診断(同第45条)を行う企業も多数あります。
今年は、厚生労働省Q&Aで示されている「当面5月末まで延期して差し支えない」を「5月末までには実施しないといけない」と解釈して手配を急ごうとしている企業もあると見聞きしますが、慌てる必要はありません。「とりあえず5月末までは無理に行わなくてもよい」と捉えるほうが妥当です。


<例2> 5月末まで延期した健診は・・・

・6月以降は再開がありうることと、年間計画を踏まえて検討する。
 
・実施するときは会場での「3密」と接触感染を防ぐ対策をとる。

「当面5月末まで延期して差し支えない」の後、6月以降は、「さらに延期して差し支えない」となるか、「これ以上延期せず健診を実施せよ」となるか、どちらもありえます。実施施設の担当者とスケジュールや感染拡大防止策をよく打合せしておくことが大切です。

スケジュールに関して、誕生月など年間通じて健診を実施している場合は、延期分を他の月に振り替えます。年1回の定期健診は5月頃、特定業務従事者の年2回目は11月頃、のように時期を固めて一斉に実施している場合、対象者が多い1回目と比較的少ない2回目を入れ替える方法が考えられます。
健診の時期や実施施設を固定していない場合、5月時点でいきなり「今年いっぱい延期するので12月までに近くの病院で受けておくように」といった方針を出してしまうと、多くの従業員が未受診のまま12月が迫る恐れがあると想定されます。健診以外の行事を含む年間計画を踏まえ、概ね3か月(四半期)以内のスパンで見通しを示すほうが無難です。
  
感染拡大防止策のうち「3密」(密閉・密集・密接)を避ける方法として、できるだけ広い会場を確保する、一度に会場に入る人数を制限する、会場内にいる人同士の距離をとるか仕切りを設けるなどがあります。
接触感染防止を図る方法として、聴力検査用ヘッドホンなど複数名の手が触れる備品は、家庭用洗剤かアルコール消毒剤で清拭する、などがあります。


<例3> 延期対象に含まれない特殊健康診断やじん肺健康診断は・・・

・「3密」と接触感染を防ぐ環境で極力実施する。

4月17日時点で、一定の有害業務に従事する労働者を対象とする特殊健康診断(有機溶剤、特定化学物質など)や、じん肺健康診断(じん肺法)は「従前のとおり」となっています。
実施に際しての感染拡大防止策は、<例2>と共通であり、現実問題として例年と全く同じようにいかないことは十分にあり得ます。少なくとも、対応できる人数が限られる場合、優先すべきはこれらの健診です。


<例4> 健診を延期した場合でも・・・
 
・就業上の措置の確認・見直しを行う。

健診を延期した場合でも、前回までの健康診断結果、あるいは傷病休職などの事情により就業制限等(例:残業や深夜勤務の制限、車両・クレーン運転作業の制限)の対象となっている方の措置内容の確認・見直しはしておきましょう。
例えば、糖尿病を抱えた労働者が長時間の残業を強いられ、食事の節制や必要な通院治療がままならない状況になっていませんか。労働安全衛生法(第66条の5)では、事業者に対して、労働者の健康診断結果と実情を踏まえた就業上の措置を義務づけています。ここでいう「就業上の措置」とは、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮のように個人を直接対象とするものだけでなく、作業環境測定の実施、施設の整備のように職場環境を対象とするものの両方が含まれます。


〔関連情報リンク〕

・厚生労働省
 新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)(2020年4月17日時点版)

・厚生労働省
 新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえた労働安全衛生法に基づく健康診断の実施等に係る対応について(2020年3月11日)

【文責】田原 裕之(産業医科大学 産業精神保健学)

※本文章は、産業医有志グループ(今井・櫻木・田原・守田・五十嵐)で作成しました。
 厚生労働省新型コロナウイルス対策本部クラスター対策班・和田耕治先生(国際医療福祉大学・公衆衛生学教授)のサポートも受けております。

OHサポート株式会社(代表/産業医 今井 鉄平)では、経営者・総務担当者向けに必要な感染拡大防止策情報を随時配信しています。
本情報は著作権フリーですので、ぜひお知り合いの経営者・総務担当者の方に拡散をお願いします。

また、動画配信を始めました。現在、順次更新しております。
※本ページ下部のリンク(3)をご覧ください。

これまでに配信しましたバックナンバーは、本ページ下部のリンク(4)をご覧ください。
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