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企業向け新型コロナウイルス対策情報 第34回 職場クラスターを防ごう①

2020年11月16日
東京商工会議所

東京商工会議所では、新型コロナウイルスが感染拡大する中、企業での対策に活用できる情報として、
産業医有志グループ(※)より提供される「企業向け新型コロナウィルス対策情報」を配信(不定期)しております。

本対策情報は、産業医有志グループ(今井・櫻木・田原・守田・五十嵐)が作成し、
厚生労働省新型コロナウイルス対策本部クラスター対策班・和田耕治先生
(国際医療福祉大学・公衆衛生学教授)のサポートも受けたものです。
詳細は本ページ下部の「文責」をご覧ください。

経営者・総務人事担当者のみなさま、職場の感染対策は万全でしょうか?
大規模な職場クラスターの発生が相次いで報道されていることもあり、
今回は「職場クラスターの防止」について述べたいと思います。

1.課題の背景:

新型コロナウイルス感染症の伝播は、主にクラスターを介して拡大することが分かっており、
クラスターの連鎖をおさえることが極めて重要です。
新型コロナウイルス感染症対策分科会から出された「分科会から政府への提言(10月23日)」を見ると、
8月以降、クラスターの総数は減少しているものの、各月で職場クラスターの全体に占める割合は
高いことがわかります(下表)。
また、前述のように、大規模な職場クラスターの発生も相次いでいることもあり、今冬に向けて
職場でのクラスター対策は重要であると言えます。
分科会から出された「クラスターの分析に関するヒアリング調査等の結果と今後に向けた検討(関連情報2)」
の中では、クラスターが実際に発生した様々な場面の分析が行われていますが、その中でも今回は
職場クラスターの一つであるコールセンターを題材に職場のクラスター対策について解説します。

表)7月以降のクラスター等の発生状況の推移(関連情報1)下記参照

2.事業所でできる対策:
 ○職場クラスターが発生した背景を理解する
 ○職場クラスター事例を自社のクラスター対策に活用する

1)職場クラスターが発生した背景を理解する(関連情報2)

<クラスターのイメージ(下図)>
 コールセンターで起きたクラスターのイメージを示します。
『会議室サイズのコールセンターで、従業員が発熱後も業務を継続し、異なるフロアに移動するなどして、
クラスターが発生した。従業員は食堂や休憩室を共用しており、身体的距離も換気も十分でない環境にあった。』

さて、このケースでは一体何が問題だったのでしょうか?
私どもの第5回配信内容
「3密の解消!職場環境をチェックしましょう<コールセンター編>
(関連情報3)」でも述べましたが、まずコールセンターの特性をまとめます。

<コールセンターの特性>
 ・一日中話し続ける業種であり、飛沫が飛びやすい
 ・電話・インカム・ヘッドセットなど、物品の共有が多い
 ・効率的な運用のため、一部屋に比較的大人数を集めて業務を行わせる必要がある
 ・設備面の制約があり、こまめな換気が難しいケースが少なくない

以上のように、コールセンターにおいては、対策がとられていないと飛沫感染・接触感染・
マイクロ飛沫感染(空気中に漂う微粒子を介した感染)を生じやすい条件が揃っていると言えます。
しかしながら、職場をまたいだ大規模なクラスターの発生にはそれだけではない、一般の職場でも
起こりうる条件が重なってしまうことも考えられます。

<一般の職場でも起こりうる条件>
 ・従業員が発熱後も業務を継続していた
 ・職場間の交流が多く、フロアを超えて感染が伝播していった
 ・食堂・休憩室・喫煙室などを介して、昼食休憩時に感染が拡大していった

図)コールセンターに係わるクラスターのイメージの一例(関連情報2)下記参照

2)職場クラスター事例を自社のクラスター対策に活用する(関連情報2)

では、このケースをどのように自社の対策に活用していったらよいのでしょうか?
まず、「従業員が発熱後も業務を継続していたこと」が問題の発端になっていることと思われます。
これはどの企業においても強化が必要なことと言えますが、このような行動は従業員の認識の問題
だけではない部分もあるのかもしれません。自分が穴をあけると他に迷惑をかけてしまう、
有給休暇が残り少ないなど、従業員にも様々な事情があって、発熱後も無理をして出勤してしまうという
行動につながっている可能性も否めません。コロナ禍においては特に、具合が悪い時には、
会社に病気欠勤を申し出やすい雰囲気・制度を整備しておくことも重要でしょう。
次に、コールセンターの特性にあげた4つの項目ですが、対策がとられていないとフロア内で感染者を
広げてしまうことになります。このため、
①会話が発生する場面ではマスクを着用する、
②電話・インカムなど口が触れるものの共有を避ける(または使用後の消毒を徹底する)、
③身体的距離が確保できるようにフロアの人数を調整する、
④特定建築物の換気量の基準を満たしているかをチェックする
(満たしていない場合は換気量を調整する)といった対応が必要だったと思われます。
なお、狭い会議室での密な会議、固定電話の共有など、一般の職場でも似たような事象が起こりうることかと
思われます。実際に会議室クラスターの発生例も報告されておりますので、上記①~④に留意していく
必要があります。
最後に、一般職場でも起こりうる条件ですが、これも対策がとられていないと、職場間の交流や共有設備
(食堂・喫煙室等)を通じて事業場全体の感染拡大につながりかねません。
特にマスクを外して会話する可能性のある食堂・喫煙室については、手指消毒の徹底、利用人数の制限、
身体的距離の確保(パーテーション設置や座席配置の工夫など)、マスクを外した状況での会話を控えるなどの
対策を講じておく必要があると言えます。
一つ一つの対策は当たり前の内容と思われるかもしれませんが、これらを怠ることで大規模な職場クラスターに
つながってしまうことを念頭におき、今一度、日頃からの対策がきちんと行われているか点検を行いましょう。

【文責】今井 鉄平(OHサポート株式会社 代表・産業医)

※本文章は、産業医有志グループ(今井・櫻木・田原・守田・五十嵐)で作成しました。
 厚生労働省新型コロナウイルス対策本部クラスター対策班・
 和田耕治先生 (国際医療福祉大学・公衆衛生学教授)のサポートも受けております。

OHサポート株式会社(代表/産業医 今井 鉄平)では、経営者・総務担当者向けに必要な感染拡大防止策情報を随時配信しています。
本情報は著作権フリーですので、ぜひお知り合いの経営者に拡散をお願いします。

また、動画配信も行っております。参考情報リンク参照。

※本情報配信に関するご意見・ご要望は、こちらまでお寄せください。
 covid-19@ohsupports.com

※これまでに配信しましたバックナンバーは、参考情報リンク参照。

以上
【本件担当・問い合わせ先】

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