ニュースリリース
企業向け新型コロナウイルス対策情報 第28回 職域における自費PCR検査の在り方
東京商工会議所
東京商工会議所では、新型コロナウイルスが感染拡大する中、企業での対策に活用できる情報として、産業医有志グループ(※)より提供される「企業向け新型コロナウィルス対策情報」を配信(不定期)しております。
本対策情報は、産業医有志グループ(今井・櫻木・田原・守田・五十嵐)が作成し、厚生労働省新型コロナウイルス対策本部クラスター対策班・和田耕治先生(国際医療福祉大学・公衆衛生学教授)のサポートも受けたものです。詳細は本ページ下部の「文責」をご覧ください。
企業の経営者・担当者のみなさま、全国的に感染者数が増えてくる中で、身近に感染者や濃厚接触者が発生したときに、「自費でも社内でPCR検査を受けさせたほうが良いのではないか」と思われる方もいるかもしれません。
どのように考えればよいのでしょうか。
1.課題の背景
派遣会社の社員に対して新型コロナウイルス感染の陰性証明を求めたり、電力会社が他県からの作業員に対してPCR検査の提出を求めるなどの動きがみられます。けれども、「PCR検査の結果が陰性」であることは、「新型コロナウイルスに感染していない」ことを示すものではありません。
また、陰性であれば問題はないと考えて、感染対策不十分なまま人と接触をしてしまう、リスクの高い場所に出かけてしまうといったことがないようにしなければなりません。
2.企業でできる対策
○検査の意味について理解する
○企業が検査を行う場合、従業員の自由意思に基づいて受けてもらう
○具合の悪い従業員への対応を行う際、安易に陰性証明を求めない
1)検査の意味について理解する
PCR検査、抗原検査はそこにウイルスの遺伝子やたんぱく質が存在することを調べるものです。検査で陰性だったのは、「見つけられなかった」可能性もあり、感染を否定することはできません。このため、濃厚接触者やそれに準ずる状況で、「PCRが陰性であれば自宅隔離を解除してよい」という誤解を持たないようにすることも重要です。
□検査で「感染していないこと」の証明はできないことを理解する
□検査で陰性だったとしても、見逃されている可能性があるため、濃厚接触者の場合は14日間の自宅待機が求められている
2)企業が検査を行う場合、従業員の自由意思に基づいて受けてもらう
プロスポーツや演劇、コンサートなど関係者のリスク低減や観客に安心感を与えたい、という理由で検査を行うことや、接待を伴う飲食店などのハイリスク職場で定期的に検査を行うことがあります。また、海外渡航において相手国からPCR検査を求められることもあります。しかし、すべての企業で同様に行うことは適切ではありません。
□検査結果は従業員の個人情報であり、検査を受けることや結果の提出を強制はできないことを理解する
□一般の接客業においてはマスクの着用やレジ前のパーテーションの設置、お客様との距離の確保、こまめな手洗いなどの感染予防対策の徹底で対応する
3)具合の悪い従業員への対応を行う際、安易に陰性証明を求めない
具合の悪い従業員に対しては、陰性証明の提出を求めるのではなく、自宅待機や医療機関への受診を勧めます。新型コロナウイルス感染症は、軽症の場合は発症から8日後には感染力が低下していると考えられます。
その間、自宅待機してもらうことで職場にウイルスを持ち込む可能性を低減できます。職場にウイルスが入り込んでいないか確認したい、と思うこともあるかもしれませんが、そのためにPCR検査や抗原検査を自費で受けさせることは医療機関への負担を増加させ、重症患者や新型コロナウイルス感染症以外の患者さんのための医療資源を奪うことになります。
また、定期的にPCR検査を実施しているJリーグで検査と検査の間に風邪症状を発症し、PCR陽性となったケースや、参加者全員にPCR陰性であることを条件づけていたにもかかわらずクラスターが発生したアメリカのサマーキャンプの事例など、PCR検査が陰性であったとしても感染を完全に予防できるものではなく、感染を拡大させないための対策が常に必要です。
□保健所で「濃厚接触者」に認定されなかったが、濃厚接触が疑われる人は14日間自宅で過ごす
□発熱などで受診しても主治医からPCR検査を実施する指示がなかった場合は、発熱後8日以上かつ症状の消失後3日が経過するまで自宅から出ないようにする
□自宅待機で家庭内感染がおこらないように注意を呼び掛ける
(部屋を分ける、マスクを着用する、手洗い、換気、共用部分の消毒など:関連情報リンク3)参照)。
関連情報リンク
【文責】櫻木 園子(一般財団法人京都工場保健会)
※本文章は、産業医有志グループ(今井・櫻木・田原・守田・五十嵐)で作成しました。
厚生労働省新型コロナウイルス対策本部クラスター対策班・和田耕治先生(国際医療福祉大学・公衆衛生学教授)のサポートも受けております。
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