ニュースリリース
企業向け新型コロナウイルス対策情報 第24回 職場の感染リスク管理~スイスチーズモデルで考えましょう!~
東京商工会議所
東京商工会議所では、新型コロナウイルスが感染拡大する中、企業での対策に
活用できる情報として、産業医有志グループ(※)より提供される「企業向け
新型コロナウィルス対策情報」を配信(不定期)しております。
本対策情報は、産業医有志グループ(今井・櫻木・田原・守田・五十嵐)が作
成し、厚生労働省新型コロナウイルス対策本部クラスター対策班・和田耕治先
生(国際医療福祉大学・公衆衛生学教授)のサポートも受けたものです。
詳細は本ページ下部の「文責」をご覧ください。
経営者・総務人事担当者のみなさま、職場の感染対策は万全でしょうか?
今回は職場の感染リスク管理について、スイスチーズモデル(スイスチーズを
モチーフとしたリスク管理の考え方)をベースに考えてみたいと思います。
1.課題の背景
職場の中で、「マスクさえつけていれば社会的距離は不要だろう」、「社会的
距離が確保できていればマスクは不要だろう」、「換気をしているから多少社
会的距離が近くても大丈夫だろう」と言った声が出ていませんでしょうか。
効果的な職場の感染リスク管理のためには、どこまでの対応をとればよいので
しょうか?
このような疑問に対して、スイスチーズモデルを基にした職場の感染リスク管
理の考え方につき解説いたします。
2.事業所でできる対策
○スイスチーズモデルについて理解する
○職場の感染リスク管理をスイスチーズモデルで考える
○職場の感染リスク管理につき、従業員に周知徹底する
1)スイスチーズモデルについて理解する(関連情報リンク1)
スイスチーズというのは、チーズの中でも内部にボコボコと穴が開いて
いるチーズのことで、スイスチーズモデルではそのチーズを薄切りにし
たものを何枚も重ねた状態をイメージします。内部に穴が開いていると
はいっても、その穴は不規則なものです。一つ二つを重ねたとしてもど
こかの穴は重なるかもしれませんが、枚数を重ねるうちに隙間が埋まっ
ていくため、徐々にその穴が最後まで通じる可能性は低くなるでしょう。
リスク管理においても同様に考えて、1つの考えに基づいた防護壁では
事故(穴が最後まで通じてしまうこと)が起こる可能性が高くても、異
なる視点からの防護壁を複数組み合わせることでその安全性は高まって
いきます。1つでは完璧な防護壁はなくても、いくつも重ねることで完
璧に近づいてくだろうというのがスイスチーズモデルです。
※関連情報リンク2 補足イメージ図(スイスチーズ)
⇒関連情報リンク3参照
2)職場の感染リスク管理をスイスチーズモデルで考える(関連情報3)
それでは、職場の感染リスク管理をスイスチーズモデルで考えてみまし
ょう。ここでは隙間が最後まで通じてしまう状況を職場の集団感染とと
らえます。それを防ぐための防護壁として、「マスクの着用(Face
Covering)」、「社会的距離の確保(Safe Distancing)」、「従業員
の症状チェック(Symptom Checking)」、「定期的な職場の換気
(Ventilation)」などを考えます(図を参照のこと)。
「マスクの着用」だけでも効果は高そうに感じますが、職場で終日過ご
すうちに、いつの間にかずらしてしまったり、外してしまったりするこ
ともあるでしょう。100%の着用を従業員に求めることは難しい部分も
あるかと思われます。そこで、不適切なマスク着用による隙間を埋める
ための別の防護壁が必要になるという訳です。
同様に「社会的距離の確保」だけでも効果は高そうですが、職場で終日
過ごす中で常に2mの距離を保ち続けることは困難でしょう。何かの拍
子に距離が近づくことは当然起こりうる話です。「従業員の症状チェッ
ク」でも必ずしも正しく従業員が症状を申告しない可能性、「定期的な
職場の換気」でもうっかり換気をし忘れることなど、単独で隙間がない
防護壁を期待することは難しいでしょう。
このようなことから、単独の対策だけで十分ということはなく、いくつ
かの対策を重ねていくことで職場の集団感染リスク管理がより効果的な
ものになる(隙間が埋まっていく)ということが言えるでしょう。
とはいうものの、やみくもに防護壁を重ねるのは避けた方がよい場合も
あります。例えば、流行が落ち着いている地域において、マスクとフェ
イスシールドの着用を求める場合など、防護壁を重ねすぎることで熱中
症など他のリスクを招いてしまうこともあります。状況に応じて重ねる
防護壁の数や内容を検討してみることも重要と言えます。
※補足イメージ(関連情報リンク4の図を一部改変)
⇒関連情報リンク5参照
3)職場の感染リスク管理につき、従業員に周知徹底する
いくら経営者や人事総務担当者が職場の感染リスク対策を進めようとし
ても、肝心の従業員が感染リスク管理の考え方を理解してしないと隙間
が大きくなってしまうかもしれません。筆者自身も嘱託産業医として契
約企業での職場巡視を行う中で、打ち合わせなどで社会的距離が確保で
きていない状況、マスクを着用できていない状況を見かけることがしば
しばあります。このような場面では、従業員が単独の対策を過信してい
る状況(「1.課題の背景」で述べた状況)も垣間見えます。
従業員の一人一人が感染リスク管理に対して共通の認識を持つことも、
隙間を埋めていくのに非常に大事な要素となります。ぜひ今回のスイス
チーズモデルも活用しながら、従業員に対して職場の感染リスク管理の
考え方につき周知徹底していきましょう。
<関連情報リンク>
※本ページ下部のリンク参照
1)「スイスチーズモデル」って知ってますか?(シンク出版)
2)スイスチーズモデルで組織事故を考える(リスクの眼鏡)
3)関連情報リンク2 補足イメージ図(スイスチーズ)
4)The CIC COVID-19 Safety Plan(Tim Rowe)
5)補足イメージ(関連情報リンク4の図を一部改変)
6)配信動画
7)OHサポート株式会社 配信情報バックナンバー
関連情報リンク
【文責】今井 鉄平(OHサポート株式会社 代表・産業医)
※本文章は、産業医有志グループ(今井・櫻木・田原・守田・五十嵐)で作成
しました。
厚生労働省新型コロナウイルス対策本部クラスター対策班・和田耕治先生
(国際医療福祉大学・公衆衛生学教授)のサポートも受けております。
OHサポート株式会社(代表/産業医 今井 鉄平)では、経営者・総務担当者向
けに必要な感染拡大防止策情報を随時配信しています。本情報は著作権フリー
ですので、ぜひお知り合いの経営者に拡散をお願いします。
また、動画配信も行っております。リンクは本ページ下部参照。
※本情報配信に関するご意見・ご要望は、こちらまでお寄せください。
covid-19@ohsupports.com
※これまでに配信しましたバックナンバーは、本ページ下部のリンク参照。
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