<M&A事例 No.1>コロナの影響が直撃! 事業の継続と発展を目指し、
          上場企業の傘下に ~音楽鑑賞協会 ー チエル~



M&A事例

<事例のポイント>
● 経営者の高齢化、後継者不在の状況における第三者承継

● 大手企業の傘下に入り、相互の顧客基盤を活かした相乗効果を目指す

● 自社では対応が難しかったサービス・業務のデジタル化を実現


50年以上にわたり事業を継続 コロナの影響が“事業承継”を進めるきっかけに

東京音楽鑑賞協会は、創業者である高山社長が、次世代を担う子供たちに「生の音楽に触れる機会」「音楽での感動体験」を提供すべく、1971年に創業。全国各地の小・中・高等学校で実施する「音楽鑑賞会」・「芸術鑑賞会」を、50年以上にわたり開催してきた。

事業承継を考え始めたのは、高山社長が70歳を迎えたころ。しかし、親族や社員に後継者候補がおらず、具体的な承継計画が描けない中で、新型コロナウイルス感染拡大の影響が事業を直撃した。音楽鑑賞会の中止が相次ぎ、売上は平時の10分の1程度まで減少。当面の“事業継続”と“事業承継”の課題を並行して解決する必要性に迫られた。

東商ビジネスサポートデスクからの助言もあり、 M&Aを事業承継の選択肢に

コロナの影響を大きく受け苦境に立たされる中、高度専門的な経営支援を展開している「東商ビジネスサポートデスク」の相談窓口を利用。補助金申請や資金繰りに関する相談、支援を受ける中で、事業承継問題の解決に向けて「東京都事業承継・引継ぎ支援センター」を紹介される。さっそく、同センターに相談したところ、学校教育という分野で事業拡大を目指していたチエル社を候補先として紹介された。

社員のためにも、この厳しい状況を乗り越え、成長の実現を目指す

高山社長は、譲渡先には「事業の基盤が“学校”に関連したものであること」、「新たな事業展開の期待が持てること」、「社員の雇用を継続してくれること」などの条件を望んでいた。コロナ禍で生の演奏会開催が難しくなる中、オンライン対応の必要性も感じており、チエル社と一緒になれば演奏会のオンライン化への対応や、相互の顧客網の活用などを通じて事業の成長が実現できると感じ、M&Aの交渉を進めていくことになった。

具体的な交渉にあたっては、チエル社側のM&A担当役員と高山社長との間で、現場の見学に行くなど、相互の事業に関する理解を深めつつ進められた。その間、事業承継・引継ぎ支援センターによって交渉の進捗状況のフォローと、ビジネスサポートデスクが派遣した専門家が状況に応じたアドバイスを行うなどのサポートが行われた。「M&Aは初めてであったが、専門家が親身になって対応、助言をしてくれたことで、円滑に交渉を進めることができた」と高山社長は振り返る。


左:チエル 粟田社長   右:音楽鑑賞協会 高山取締役



「学校の先生に役立つ事業を」 企業規模問わず、M&Aにより事業領域の拡大を模索

チエル株式会社は学校教育ICT専業メーカーとして創業。株式上場後は「学校教育」を中核として事業領域を広げ、子会社4社、関連会社4社を有する規模まで事業を拡大してきた。

同社では、M&Aによって買収を検討する際、「当社の顧客である学校の先生に役立つ事業を展開しているか」、「M&A後の成長性があるか」、この2点を最も重視している。「東京音楽鑑賞協会について、足元はコロナの影響で業績が悪化していたが、音楽鑑賞会は以前から学校教育における重要な行事として多くの実績があり、継続的なニーズが見込まれる。当社のグループに入ることで、どのような成長が見込めるかが重要だった。」と粟田社長は話す。


M&A後の円滑な経営統合や成長に向け、経営者には引き続き事業に携わってもらいたい

同社のM&Aの方針として、「M&A後も、現在の事業を理解している人に引き続き代表を務めてもらう」としている。粟田社長は、「現社長など、経営が分かる人が会社に残ることで、M&A後の円滑な経営統合や成長が見込め、社員の理解も得られやすいといったメリットがある」と話す。実際に、東京音楽鑑賞協会の全株式を高山社長から2022年8月に同社が譲り受けた後も、高山氏が社長として経営に携わりながら、シナジー効果を活かした業績改善や、次期社長候補への引き継ぎに取り組んでいる。

当社が得意とするデジタル化による事業拡大を期待

東京音楽鑑賞協会が主催する「音楽鑑賞会」・「芸術鑑賞会」は、コロナの影響を受け一時的に厳しい状況となっていた。しかし、東京音楽鑑賞協会が保有する顧客との接点を基にしたビジネスの拡大可能性があることと、鑑賞会そのもののデジタル化をグループとして支援することで、さらなる事業拡大が見込まれると判断し、株式取得を検討することとなった。また、東京音楽鑑賞協会において遅れていた社内業務のデジタル化についても、同社のシステムやノウハウを活用しながら順次進め、業務効率化の実現も目指している。

M&Aに対して、東京音楽鑑賞協会の全社員も前向きに理解しており、社長・社員一体となって、コロナ禍における厳しい経営状況の脱却と、シナジー効果によるさらなる飛躍を狙っている。

各社の情報

株式会社東京音楽鑑賞協会
http://www.tokk.co.jp/

チエル株式会社
https://www.chieru.co.jp/

本事例でも登場する東商の関連サービス

東京都事業承継・引継ぎ支援センターの詳細はこちら
https://www.jigyo-hikitsugi.jp/

東京商工会議所「ビジネスサポートデスク」の詳細はこちら
https://www.tokyo-cci.or.jp/soudan/bsd/

事業承継支援施策などの情報を掲載している「東商事業承継支援ポータルサイト」はこちら
https://www.tokyo-cci.or.jp/jigyoshoukeiportal/

関連情報

本事例も掲載されている「後継者が決まっていない 小さな会社のためのM&Aガイド」はこちら
https://www.tokyo-cci.or.jp/page.jsp?id=1033754

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