芝園開発株式会社(本社:足立区千住、会長:海老沼 孝二/社長:宮本 薫)は、駐車場事業、駐輪場事業、総合自転車対策業務(自治体から受託)などを行うサービス業です。1998年に日本で初めて「無人機械式個別管理時間貸駐輪場システム」を開発し、ビジネスモデル化に成功しました。


デジタルシフト・DXの取り組み


 きっかけは2006年、同社の稼ぎ頭であった駐車場事業が、ガソリン価格の高騰や過当競争等により不採算化していました。荒れるビジネス環境の中、施設ごとの収支状況を正しくとらえようと、会計システムを導入しましたが失敗に終わり、当時の経理部の社員が全員辞める事態に陥るなど、社内の雰囲気が悪く士気も下がっていました。

会計システムの導入
 宮本社長と改革の中心を担う市川常務は危機を乗り越えるため、ITを活用して会社を立て直すことを決意しました。まず、社員が簡単に使える会計システムを導入しました。コストと時間はかかりましたが、社内のデータが見える化されたことで、コスト以上の効果を感じられ、徐々に社員も使いこなせるようになりました。会計システム導入の成功を機に、同社はIT活用をさらに加速し、「攻めのIT活用」に舵を切りました。

放置自転車対策システムの開発
 「攻めのIT活用」として取り組んだのが、放置自転車対策システムの開発です。経営危機を脱しつつあった2010年頃から、官公需事業にも力を入れ始めましたが、自治体から受託する当時の放置自転車対策業務はアナログの人海戦術で、デジタルカメラで現場の写真を撮っていたものの、放置自転車の位置情報を記した地図や撮影データの保存等は手作業で管理しており、いつ・どこで自転車が放置されていたのかを漏れなく把握することが難しい状況でした。

“誰でも使いやすい”仕様に改良
 そこで、IT技術者を直接雇用して、2015年からシステム部門を設置。同年にシステム会社とともに放置自転車対策システムの開発を開始し、わずか6か月で放置自転車対策システム「Capture」が誕生。放置自転車の発見から返還・処分まで、全てをシステム上に記録することでデジタル化しました。放置自転車を1台1台個体管理できるようにしたほか、放置自転車を発見した時間・場所、現場写真、現場スタッフや放置自転車撤去用車両の現在地までGPS機能で、全スタッフがリアルタイムで共有できます。加えて、タブレット端末や本部の管理システムで、撤去した自転車、現場スタッフが警告したが撤去まで至らなかった自転車等、それぞれ色で表示されるので、常に現場スタッフの配置等を見直すことができるようにしました。リリース後も、日々現場から寄せられる不具合や使いにくい点等を改善していき、効果的・効率的に業務を遂行することができています。
 さらに、現場スタッフからの「タブレット端末は重たく、持ち運びに不便」といった声に応えるため、2016年から耐久性の高い業務用スマートフォンに変更。また、音声入力機能を取り入れて文字を入力する手間を省き、カメラ機能を開けば画面に表示されるガイドに従うだけで撮影できる、“誰でも使いやすい”仕様に改良しました。

スマートフォンで作業を行う現場スタッフ


デジタルシフト・DXの効果

 現場スタッフの作業を簡単かつ分かりやすくなるよう工夫したので、現場作業初日に先輩スタッフと一緒に業務を一通り行えば、誰でも一人で作業を行えるようになりました。さらに、高齢スタッフがスマートフォンを使いこなせるようになると、その家族からも喜ばれるそうです。また、不明点や不便な点を本部に共有してもらうことで、システムのさらなる改善にもつながっています。  このシステムが評価され、官公需事業の引き合いが増え、売上も増加、事業規模も拡大しています。官公需事業が売上に占める割合は、システム導入直後2016年の22%から2023年は69%、官公需事業の売上高は約4.7倍に増加しました。


今後の展望

 社内でシステムに備えたい機能や運用イメージを共有して、言語化できるIT人材がいたおかげで、スムーズに開発を進められています。本年5月にはシステム部門を独立・法人化させて、ソフトウェア開発・外販事業に一層注力します。宮本社長は「今後はシステムをパッケージ化して、外販していきたい」と語ります。  宮本社長は「IT活用は目的ではなくあくまで手段にすぎませんが、会社が強くなるためには必要なことです」といいます。顧客のニーズ・ビジネスチャンスがあったのでデジタルシフトに挑戦した結果、他社に引けを取らない事業へと成長できました。「私たちは『もっとこうしたい』を実現するために、今後もIT活用を加速させます」と話します。



宮本 薫社長




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