事業承継事例

IT活用で売り上げの新たな“柱”をつくり出す

割り箸をはじめとした業務用竹木事業で躍進を遂げてきた仲吉商事株式会社(板橋区)。事業承継を機に、それまでの主力事業だった割り箸などの業務用竹木事業から新たな基幹事業を確立しようと模索しています。
これまで取り扱ってきた天然素材食器自社ブランド製品は、原料収集から製作、販売、販促までのすべてを自社で完結。こうした取り組みを支えているのは、クラウドサービスや自社で構築したECサイト等のITツールです。成長につながるIT活用の方法を伺うべく、代表取締役社長 屋田高路さんを訪ねました。


屋田社長

継ぐからには次の“柱”を見つけたい


創業は1988年。代表取締役社長 屋田高路さんのお母様(現会長)が、中国、台湾、香港、カナダとの化粧雑貨や日用品の貿易事業で起業しました。
やがて輸入した竹や木を使ったキッチン用品やテーブルウエアを日本のレストランなどに販売する事業が順調に成長するも、材料となる竹木の品質管理がネックに。中国やベトナムから船便コンテナで到着した荷物を開けると、中の竹材がカビだらけということが幾度か重なったことから、中国に自社工場を持つことにしました。
日本の竹木(たけもく)関連の技術者に協力をあおぎ、本格的な竹木事業に乗り出しました。

現在、同社の売り上げ全体のおよそ3/4を占めるのが、コンビニエンスストア等に卸す割り箸をはじめとした業務用竹木事業です。
一方、近年は新規事業の「家庭用」竹木事業が軌道に乗り始めました。この新規事業に取り組んだのが二代目の屋田高路社長です。

大学卒業後、大手電機機器メーカー勤務を経て、事業承継を見越して仲吉商事に戻ってきたのが2007年。せっかく戻るなら割り箸に代わる新たな柱を見つけたいと、家庭用竹木事業として天然素材食器の自社ブランド展開を開始。当時、仲吉商事には財産とも言うべき業務用竹木雑貨のものづくりで培ってきた加工技術がありました。竹木の小物であればどんな要望にも応える専門職の高い技術をもとに創意工夫を重ね、手に取った人の本能に訴える製品作りを志しました。


提携失敗からの業態転換をクラウドサービスが支える

「実は、2007年当初は他社と提携するなどの方策も模索しましたが、方向性の違いから物別れ。自分の思いやこだわりを、提携先に確実に伝えることは容易ではありませんでした。しかし、ハイブランド等に見られる人の本能に訴えかけるデザインは、ただ見た目がきれいなだけではありません。機能面や哲学的なところまで含めて、製品すべてに反映させるからこそ高い価格で売れるのではないのでしょうか。たとえ時間が掛かったとしても、妥協せず納得できる形にしたかったのです」(屋田社長)

他社提携の失敗を踏まえ、2013年に、素材となる竹の育成、製品開発、販売、ブランド戦略、アフターサービスに至るまで、製品に関わるすべての過程で仲吉商事が誇るものづくりの理念を極める、天然素材食器の3ブランドが誕生しました。自社での一貫した製作を可能にしたのは、東京板橋区の本社、埼玉や中国の工場、海外や国内でリモートワークするスタッフをつなぐウェブ型の業務アプリ構築クラウドサービスです。屋田社長の思いや製品に対するこだわりはもちろん、それに対する現場の疑問や意見、日々の業務連絡の共有も欠かせません。
各現場で同時に情報共有しながら、天然素材食器の3ブランドに磨きをかけていきました



仲吉商事が誇るものづくりの理念を極めた天然素材食器。日常使いだけでなくギフトにも人気


自社EC直販体制で販路拡大を図る

自社EC(電子商取引)は、お客様となる消費者に直接魅力を伝えることができます。また、販路拡大のために大勢の営業社員を確保することもECサイトには不要です。
「ECは自社ブランドの展開に必要不可欠」と考えた屋田社長。気負わず始められたのは、社内デザイナーがウェブ制作の専門技術と知識を持っていたからでした。

仲吉商事には社内デザインチームとして、デザイナー3名、ウェブプログラマー2名、カメラマン1名が在籍し、製品をはじめウェブやカタログのデザインすべてを担当しています。製品も販促も、視覚的な表現手段が統一されるため、ブランドの視覚的印象も整います。社内製作ならではの速さも大きな魅力です。このチームがサイト制作を牽引し、自社EC体制が整いました。

社内デザインチームがサイト制作を牽引し、自社EC体制が整った



コロナ禍の2020年度においても、自社ブランドの売り上げは、法人向け小売業の売り上げが激減したものの、ECの売り上げは2倍、3倍の伸びに。自社ブランド全体の利益は昨年対比1.8倍で、自社ECの売り上げが、売り上げ全体の8割から9割程度に達しました。

屋田社長に、成功する自社ECの展開の秘訣を伺いました。
「デジタルを活用する目的を明確にすることが大切だと思います。最近はEC用のプラットフォームも多彩で、カートシステムさえあれば、とりあえずECを始めることはできるでしょう。しかしながら、ECは開設して終わりではなく、そこからが本番です。ネット上でお客様から商品の良さをいかに知っていただくか、リアルとネットをいかに融合させるかなど、集客分析と販売促進活動が最大のポイントです。」


クラウドサービスで自社の付加価値を創出

屋田社長が追求するのは、本能に訴える美しさと竹木ならではの機能性、さらに優れた安全性です。高い水準を実現するために、ほぼ全工程を自社製作しています。竹製品なら中国にある自社保有竹林で育てた孟宗竹を、100%出資の海外現地工場で製材・粗削りをして日本に輸送します(『タフタ』で使用する木材は北米や東南アジアから入手)。埼玉県越谷市にある自社工場で、職人の手によって仕上げ成形、レーザー加工、コーティングし、お客様に直接届けます。各現場の作業状況をクラウドサービスで一元管理することで、高品質な製品づくりを実現しています。

中国江西省に150万本の竹林を保有・育成


同時に、職人たちの技の結晶でもある知的財産はブランド確立のために必要と考え、様々な特許を積極的に申請、取得しています。たとえば食器のコーティングに採用している自然派塗装「ロハスコート」(特許出願中)は、天然緑茶成分と竹が持つ有効成分を配合した独自に開発したものです。

「お客様に選ばれるブランドであり続けるために、知的財産の付加価値は欠かせません。『コンビニ弁当の割り箸はこれに尽きる』と支持してくれる消費者は存在せず、かんたんに替えがききます。一方、付加価値によりオンリーワンと認知された製品は替えがききません。天然素材食器の3ブランドはそこを目指していきたい」

業務用竹木事業と家庭用竹木事業は、多品目を扱うという共通点はあるものの全く異なるビジネスです。業務用竹木事業の販路は商社に任せ、製品の品質と供給力、価格で勝負します。家庭用竹木事業は、製造販売をはじめ、販路開拓、販売促進までのすべてを自社で行います。

「業務用製品は、品質と価格を磨き、欧米も含めた全世界の外食産業やコンビニエンスストアに竹木キッチンツールを広げたい。世界一のシェアを目指したいですね。家庭用の自社ブランド製品については、フランスの某ハイファッションブランドを意識しています。職人集団から始まり、その技術力と販売力、ブランディング戦略や市場分析力で世界を席巻し、ものづくりを極めて多くの人に愛される製品。そんな唯一無二のブランドに育てたい。近い将来、家庭用自社ブランド製品が業務用製品の売り上げを追い越すことを目指しています」


IT活用 その後の効果・新たな取り組みは (2022年8月取材)

Kintoneの業務アプリのブラッシュアップにより更なる業務効率化を達成

屋田社長自身が旗振り役となって制作したKintoneの業務アプリは、商談から受注、製造、発送、請求に至るまで一貫して同アプリ上で情報登録・処理・連絡を行うことが可能であり、情報の一元化、非属人化により、大幅な業務効率化を達成しました。前回(2021年3月)の取材以降も、現場の社員の声を聞きながら、入力項目を抜け漏れなくスピーディに入れてもらうため、随時項目を見直したり、プラグイン機能を使って、一部項目の入力自動化を行い、社員にとってより使い勝手のよいアプリを目指して改善を続けてきました。同システムは、ノーコード(プログラミング不要)で開発ができるため、社長や社員がスピーディに必要な箇所を改修できるメリットを最大限に活用しながら取り組みを進めてきました。
また、社内システムのクラウド化推進のため、会計ソフトについてはfreee会計を導入し、更なる業務効率化に向け取り組みを始めました。


動画活用によるプロモーションで販路拡大も

長引くコロナ禍でリアルの場での商談の機会が少ない中で、天然素材を用いた自社ブランドの食器を広くアピールするため、本社工場内のスタジオで社内デザインチームが製作した動画を使ってプロモーションを開始しました。自社YouTubeチャンネルで公開したところ、一部の動画は1万回以上再生されるなど、PRの効果が出ています。また、お客様に最新の情報をわかりやすくお届けするため、クラウドの電子書籍システムを導入、商品カタログを電子化し、営業の現場で役立てています。



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