事業承継事例

会社を維持、発展させるためにITで活路を拓く

株式会社NHC(板橋区成増)は、新聞を配る・売る以外に、地域に貢献することをコンセプトにした新聞販売店を目指しています。代表取締役の山口英司さんは、自社の付加価値を高めようと、担当エリア一帯約4万軒の顧客を対象にハウスクリーニングやパソコンサポート、健康サポートといった「まごころサポート」を展開しています。
当社では、これまでの事業で培った強みとITの活用により新たな事業を立ち上げたほか、高い専門性を有する従業員の確保に向けて労務環境システムを導入するなど、会社の成長と経営課題解決のためにITを積極的に活用しております。


山口社長


コロナ禍でさらに収入減。折込み広告の強みとIT活用でPR支援事業を立ち上げ


2020年のコロナ禍において新聞自体の売り上げはさほど落ち込みませんでした。しかし、折込み広告の収入は1/3にまで激減。それまで1カ月600万円あった収入が200万円程度にまで下がりました。

一般的な折込み広告は、専門の広告代理店から新聞販売店に完成した折込み広告が送られる流れです。仮に収入が激減した場合に待つだけの仕組みに疑問を感じていた山口社長は、コロナ禍で改革を急ぐ必要を感じていました。

「今までは地域にお住まいの方のお困りごと解決に取り組んできましたが、地域の事業者さんにもお困りごとを解決できる可能性があるのではないかと気づきました。毎日7,000軒に新聞を配るのは、7,000世帯に情報を届けること。弊社の強みである地域のお客様とのつながりを活用すれば、消費者と事業者の結びつけが可能になります。

折込み広告は、各スポンサーの宣伝広告のお手伝いです。 “折込み”スタイルにこだわらず、私たちが宣伝業務を担う会社になればと考えました。そうすることで、従来からの折込み広告以外にピンポイントでのポスティングが可能です。
最近、動画が有効な宣伝手段と言われているので、動画配信のサポートも実施しています。社屋の1階にスタジオを設置し、動画のライブ配信が可能です。」

NHCとして、SNS(ネット上で社会的なつながりを提供するサービス)の公式アカウントも取得して情報発信を始めました。NHCが新聞を配布している7,000世帯の顧客を含むエリアにおおよそ4万世帯が存在し、新聞配布率は2割弱です。残る8割強に情報を届けることを目指しています。

折込み広告にこだわらず、動画配信やSNSを活用し宣伝業務を担う


ITを活用して「働きたい会社」になる

新聞販売店は過酷な長時間労働で知られていました。朝は午前1時45分にスタンバイ。新聞広告の折込み作業を行ってから朝刊を配達し、夕方には夕刊の配達。その合間に、購読料の集金や新規開拓の営業活動を行っています。
通常業務以外に、新しく建物が建てばお知らせのポスティング、配達に使うバイクのメンテナンスなど、雑務にも事欠きません。

山口社長は、不可能と思われていた新聞販売店の労務改善に着手します。ITを活用しながら働き方の改革(労務改善)を実践しました。

きっかけは、2019年の『いたばし働きがいのある会社賞』(板橋区産業振興公社主催)の入賞にあと少しのところで届かなかったことです。
会社の業績が良くても、勤怠管理が不十分であれば世間で認められないと気づきました。十分な勤怠管理によって従業員が定着すると考え、業務の効率化を含めITを導入しました。

従来のタイムカード制から勤怠管理システムに変更。タイムカード導入時は、雨や雪のために配達時間が延びると早めの退社は無理でした。
勤怠管理システムを導入してからは、「トラブル発生により朝の勤務時間が延びた場合は、夜は早く帰りましょう。」と、従業員の意識も変わりました。システムの移行期に勤務経験の長い社員が会社に居づらくなって辞める一方で、専門性を持つ若手社員が増加しました。

長時間におよぶ過酷な労働環境をIT活用で改善



メッセージアプリも導入。全員が顔を合わせるミーティングの回数を減らし、代わりにチャットで用件を的確に伝達。従業員が外回り中にも連絡がとれ、得意先訪問が急に生じた際もチャットで指示を送ることで受信者はメモを取る必要もなく、作業の効率化につながりました。
さらに、モバイルプリンターを導入。従来は購読料の集金に行き、紙の領収書を発行していましたが、モバイルプリンターの採用により即時集計が実現しました。

「これらのIT活用により集金方法が変わり、集金頻度が7割から3割に激減。現在は『完全週休2日』を実現でき、優秀な人材確保につながっています。
新聞販売店の9割は、自社の採用サイトを有していないと思われます。若者は、企業サイトを見ながら希望職務を検討することが多いことから、自社の採用サイトが存在しなければブラック企業と思われかねません。熱心に応募してくる若者の中には、採用サイトの記載内容を読み込んだうえで『この部分に共感した』と発言される場合もあります。また、地方在住の求職者にとって、弊社の採用サイトが安心材料の一つになればいいなとも考えています。」

ITの活用によって働く職場としての魅力を高めていくことを今後も目指していきます。





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