事業承継事例

導入しやすく、すべての従業員が使いやすいIT活用を推進

港区に本社のある東熱パネコン株式会社の創業は昭和35年(1960年)、当初は暖房設備の輸入・販売業を営んでおりました。
柴田亮社長は2006年に創業者である父より事業を承継し、代表取締役社長に就任。現在は、グループ会社を立ち上げ、建築・設備工事業と建物総合管理業を中心に事業を展開しております。
柴田社長は、当社の強みである高い技術力をもつ現場のベテラン社員と次代を担う若手・中堅社員が双方とも働きやすい職場環境を整え、人を活かすことが、今後の成長のための重要なカギであると考え、この実現のためにIT活用を重視しております。導入しやすく、すべての従業員が使いやすいIT活用を推進する取り組みを伺いました。



柴田社長


「現場を熟知するビル管理」という強みを活かし事業展開


当社は暖房設備の輸入卸売業から転換し設備工事業を長年営んでおりましたが、その当時、顧客であるビルオーナーとの直接取引をすることは無く、ビルオーナーと取引をしているゼネコンやビル管理会社より下請けしておりました。

柴田社長は、元請け企業より設備工事の現場を熟知している当社が直接ビルオーナーと交渉・取引するほうが、当社の強みをより生かせるのではないか、と考えました。つまり、直接取引により、顧客のニーズに迅速・的確に対応できるようになることで顧客満足度の向上を図ることができ、当社もこれまで以上に顧客の建物・設備の状況を把握できることからサービス品質の向上を図ることができるのではないか、と考えたのです。

こうした考えのもと、「現場を熟知するビル管理」という強みを打ち出し、ビル管理事業部を立ち上げました。この事業はサービス品質が支持され、顧客が拡大し当社の事業の柱に育ちました。

実績例:ゴルフ場クラブハウス・デザイン&改修工事(ウッドデザイン賞受賞)



「2014年に社内にあったビル管理事業部は、東熱ビルディング株式会社として独立し、総合建物管理業として着実に実績を上げています」と柴田社長。修繕や改修工事などの現場の施工管理に携わってきた人材を、東熱グループはとても大事にしています。
長年の経験と知識は、すぐに得ようとしても得られないもの。若手に、実際の現場を踏まえたノウハウを伝えるのは、確かな経験を積んだ経験者にしかできないことです。

柴田社長には強い思い入れがあり、「人材を外に出さない」ことを大切にしています。人材あってこそできた、高付加価値のサービスでした。

建物総合管理 物件紹介(用途別)


導入しやすく、すべての従業員が使いやすいIT活用を推進

2020年、東京都のテレワーク助成金や経済産業省のIT導入補助金を受け、社員がいつでもテレワークができるように、現状のIT活用を見直し、改善を図りました。
「現場に行って修繕やメンテナンスを行うのが仕事なので、すべての仕事をテレワーク化できるわけではありません。しかし、現場での仕事以外のときは無理して出社しなくてもいい体制にはしておきたいと思っていました。そのため、社員みんなが使い慣れた既存のソフトやツールを活用して、業務フローの見直しや、社員一人ひとりの負担を減らすことを考えました」と柴田社長。

デジタル化に関しては、ITに慣れている社員でも活用しやすいよう配慮して進めています。より安全と効率化を目指して、全員が共有できるサーバーを構築し、そこに共有フォルダーを置いて、やり取りすることにしました。
さらに社員には、アクセスしやすいようにと全員にスマートフォンを提供。クラウド化に伴い、パソコンで使用している文章ソフトや計算ソフトなども、クラウド型の統合アプリケーションとし、常に新しいものが使えるようにしました。
このクライド型アプリケーションでは、オンライン会議やチャットでのやりとりもでき、さらにセキュリティ機能も組み込まれているために、情報の保護や管理面でも安心して使えるようになりました。

ほかにも、勤怠管理にはタイムカードの代わりに静脈認証のタイムレコーダーを利用しています。センサーに手のひらをかざすだけでデータが記録され、そのデータはクラウド上にアップされます。データはそのまま給与計算などに利用できるので、大幅に時間と手間が省かれました。
また、「それまでも、現場での業務の報告書はメールでやり取りしていましたが、それだけでなく、見積りの作成から請求書まで、業務に関わるすべてがまとめられているので、業務の無駄が少なくなってきました

本社 事務所


柴田社長は、「弊社の規模であれば、オリジナルソフトをつくるよりも既存にあるものを利用するほうが、効果的、効率的なIT活用になります」と言い切ります。オリジナルで構築したとしても、出来上がった瞬間から古くなっていくものです。既存のソフトなら、アップデートにより常に新しい状態が提供されます。

一人ひとりとやりとりができるため、柴田社長が社員に直接メッセージを送ることもあります。病院での業務があるときなど、コロナ禍による不安を払拭するためにひと言、声を掛けます。「もしも、危険を感じるようなことがあれば〝無理をしない勇気〟を持つように言っています。大切な社員ですから、何かあったときは、社長のせいにしていいから、自分と家族を守るためにも断る勇気を持ちなさいと。経験を積んだ社員は、なにものにも変えがたいとても貴重な存在ですから。社員にも、そういった意識をもってほしいといつも伝えています」


IT活用は強みをさらに引き出すための重要な手段

IT活用は当社の強みをさらに引き出すための重要な手段です。ITで効率的な働き方への変革を進め、当社の技術力を支える人材を活かしていきたい。そして、今後は社内にある紙書類をデータ化し、これを活用した事業開発も構想しております」
現場で汗を流す私たちには、確かな技術とノウハウがあります。それはたいへん貴重なもの。これらをITやAIなどのデジタル技術を活用することによって、新しい価値観を創造していく。それが、これからの目標のひとつです」と柴田社長はさらなるIT活用を日々考えています。

IT活用 その後の効果・新たな取り組みは (2022年10月取材)

2020年に東京都の助成金等を受け、IT活用の改善を行いました。現在では、より効率的に仕事ができるように業務の進め方を変えています。具体的には本社とサテライト間での会議で、ネットワークに個々の社員のPCをつなぐと、ネットワーク負荷が高くなりつながりが悪くなります。そこで各拠点では大きなディスプレイを用意して、1カ所で映画を見るような会議形式に変更し、ネットワークの負荷を減らし接続不良を抑えることができました。また、社員がディスプレイ前でプレゼンを行うことで、各社員のプレゼン能力や素質・意外な側面なども見ることができるようになったことが良かったと柴田社長は話します。

情報共有の仕組みをメールからチャットへ切り替え

今まで業務連絡はメールで行っていましたが、これをプロジェクト毎にチャットに変えたことで関係者全員への共有も回答も速くなり、メールよりはるかに良いツールであることに気づきました。このことから、仕事をツールの機能に合わせていくのではなく、使いづらければあきらめ、別のツールに変えることも必要と感じましたと柴田社長は話します。

次の施策はIT活用による業務効率化と標準化

ビル管理業務の標準化やデジタル化は遅れていると感じています。事業規模が大きくなっても、社員を増員せず少人数で効率的に対応できるようにするためには、業務フローを可視化することが必要と考えています。このため、税理士やコンサルタントに依頼し会社の課題を抽出し、今後1年くらいで業務の標準化・デジタル化・システム化を進めたいと考えています。また、そのことが社員教育にもつながりますし、会社のビジョンの共有等が早くできるようになると期待していますと柴田社長は話します。




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