株式会社三上旗店(本社:中央区日本橋、社長:三上 明夫)は、京都府にて装束店として創業後、1907年に東京に進出。のぼりや染め旗、バナーやタペストリーといった旗類の製造・販売を手掛けます。大手企業の社旗やオリンピック等で使用する旗類のほか、高校・大学等の校旗・応援団旗も数多く手がけており、今夏の全国高等学校野球選手権大会でも当社が納品した旗がはためきました。

デジタルシフトの取り組み

 大学卒業後は外資系企業に就職した三上社長。その後当社に戻り、2005年に社長に就任しますが、「あらゆる業務が紙で行われている状況に愕然とした」と当時を語ります。営業担当者が手書きで見積書を作成し、得意先にFAXで送信。受注したら受注伝票へ手書きでの転記が必要でした。また、販売管理が営業と経理で分断され、与信管理も曖昧に。さらには、同一の仕様にも関わらず、担当者の裁量によって見積価格が異なるという事態も発生していたことから、営業プロセスのシステム化を急務と捉え、社長自ら基本構想を開始しました。

 基盤となるソフトウェアの選定にあたっては、社内で更新・修正できる仕組みであることを最低条件としました。そこで、自社でカスタマイズ可能なMicrosoft Office Access(データベース管理ソフトウェア)を選択。基幹システムの開発は外部ベンダーに委託しましたが、フローチャートも入念に確認して設計しました。

 Accessの活用により、見積書・受注伝票の作成、在庫管理、納品書・請求書・領収書等の文書作成、与信・売掛管理といった一連のプロセスを、一つのデータベース上で管理できるようになりました。得意先別の与信設定や役職別の権限付与設定、各種書類の出力様式の変更などにもきめ細かく対応できるように作り込まれています。社長限定の機能として、顧客別・営業担当別の実績管理も可能です。さらに、三上社長への承認申請・通知機能や社員間の業務依頼機能も搭載し、社内コミュニケーションも円滑化。「このシステムがあれば、労務管理以外は完結できるほど便利」と三上社長はいいます。

 なお、Accessの導入に際し、三上社長と社員1名で研修講座を受講し、基本的な操作方法をマスターしました。導入以後の更新・修正は自社でスピーディに対応できるため、業務への支障もありません。インボイス制度や電子帳簿保存法への対応も完了しているといいます。
 営業システムのほか、経費精算の仕組みもAccessで構築するなど、デジタルシフトの取り組みにより事務作業は大幅に効率化されました。

Accessのメイン画面


セキュリティ対策の取り組み

 同社ではデジタルシフトの取り組みと並行して、サイバーセキュリティ対策も入念に取り組んでいます。UTMと、サーバーや各コンピューターにもセキュリティソフトを導入し、多層の対策を講じています。データの自動バックアップソフトも導入し、万が一サイバー攻撃の被害に遭っても、直近までのデータは復旧できる体制を整えています。情報セキュリティ基本方針も定め、情報処理推進機構(IPA)のSECURITY ACTION二つ星宣言も実施しています。「デジタル化とセキュリティ対策を両輪で進めることに加え、複数のセキュリティ対策を組み合わせることが重要です」と三上社長は強調します。


今後の展望

 営業プロセスのシステム化により事務処理量は激減し、処理精度も格段に向上したといいます。与信管理・売掛管理も徹底され、資金繰り改善にも寄与しました。三上社長は「わが社のような小規模の企業でも、やろうと思えば十分できる。特に業務効率化の点において、デジタル化は大いに効果を発揮します」と力強く語ります。
 今後、Accessデータベースの容量の限界が到来する前に、別言語でのシステム開発を検討することを課題に挙げますが、引き続き自社で使いやすい設計を目指し、身の丈に合った取り組みを進めていきたいといいます。



三上社長




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