23区を中心に産業廃棄物の収集運搬を担う白井グループ(本社:足立区入谷、社長:白井 護)。「廃棄物ビジネスのDXにより、新たな都市のインフラ産業に〜脱炭素・資源循環・新しい街づくりへ〜」をテーマに、廃棄物の回収業務において、デジタルやAIの技術を積極的に活用しています。

デジタルシフト・DXのきっかけ

 持続可能な社会の実現に向けて、世の中でリサイクルの意識が高まる一方、それら廃棄物・資源の処理に携わる業界は、深刻なドライバー不足や煩雑な事務作業、後継者問題など多くの課題を抱えています。いわゆる「静脈物流」の業務改善に向け、白井グループでは、あらゆる関係者が活用する資源循環プラットフォームの構築を目指し、DXの取り組みを推進しています。


デジタルシフト・DXの取り組み、効果

①デジタル営業の仕組み
 2020年3月にリリースした、事業ごみの回収受付システム「ごみ.Tokyo」は、廃棄物処理の申し込みから決済までを一気通貫で提供する仕組みです。従来は、電話・対面での打合せや見積もり、委託契約書の締結、マニフェスト(産業廃棄物が契約内容通りに適正処理されたか確認するための管理伝票)の管理、請求など、アナログかつ煩雑な手続きが欠かせず、回収をスタートするまでに7~10日かかっていました。「ごみ.Tokyo」では、これらの工程を無人化・電子化したことで、最短で問い合わせの翌日から回収業務が可能に。間接費用の削減やヒューマンエラーの抑止につながったほか、コロナ禍初期に非対面での手続きを確立できたことで業務継続を支えました。

②配車の効率化
 白井グループでは約3,000の事業者の廃棄物回収を担うことから、収集車をいかに効率良く走らせるかが重要となります。配車ルートはこれまで、ベテラン社員が何日もかけて経験と勘で作成しており、ノウハウがブラックボックス化しやすいという問題もありました。そこで、システムの自社開発に取り組み、2014年に「AI配車システム」の運用を開始。開発に際し、配車係のノウハウを整理・集約しました。ごみの種類や回収時間・曜日の指定、車両あたりの積載量、作業の所要時間など複雑な条件を基に、最適化されたルートがアウトプットされます。ルート作成に係る業務負担が軽減されることに加えて、同じエリア内を運行する同業他社とも連携して収集業務を行うことで、車両台数・燃料費が削減され、CO2排出量の削減にもつながります。

「AI配車システム」で出力したルートの例


③収集現場の自動化
 ごみ回収の省力化と排出実績管理のため、RFIDの活用も進めています。同社では、袋メーカーと協業し使用済みプラスチックを100%使用した「進化するごみ袋」を開発し、さらに袋の製造段階においてRFIDタグを貼付。タグには納品前に顧客情報とごみの種類、袋の容量を書き込んでおきます。ドライバーは読み取り機を身に着け、タグ付きの袋で排出されたごみを回収するだけで、誰が何をどのくらい廃棄したかといった情報が瞬時に読み取られる仕組みです。この情報を電子マニフェストや基幹システムと連携させることで、廃棄物管理や請求業務の効率化を実現。将来的には排出量、リサイクル状況の見える化に寄与することを期待しています。
 これらの取り組みは、東京都環境局「事業系廃棄物3Rルート多様化に向けたモデル事業」としても採択され、実証実験では、これまで排出者の特定・査定にかかっていた作業時間の約60%、電子マニフェスト登録業務の80%が削減されました。

今後の展望

 同社では、「DX推進プロジェクト」を発足し、各部の課題を基にデジタル化・DXのロードマップを策定しています。実は、同社のDXを先導してきた前社長(白井 徹 氏)が今年6月に急逝。引き続き取り組みを推し進める白井社長は「現場の課題に即したデジタル化・DXなので、現場と密にコミュニケーションを取りながら推進しています。初めは抵抗があるかもしれませんが、経営者がリーダーシップを取って取り組みの意義を伝えていくことが重要です」と語ります。今後はチーム力をより強化していく方針ということです。自社でのシステム活用に留まらず、ステークホルダーも巻き込んだ取り組みにより、業界全体のビジネス改革を目指しています。



白井社長(左から2人目)とDX推進担当若手メンバーの面々




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