事業承継事例

市場の縮小、コロナ禍の影響をECサイトの工夫で克服!

株式会社碌山は、1981年に現在の田中大介社長の父親が創業。アンティーク・ジュエリーをヨーロッパで仕入れ、日本国内で販売していました。 現社長は2005年に入社、先細りの宝飾市場の中での事業承継でした。宝飾業界の国内市場は1992年のピーク時から4分の1へと激減し市場が厳しさを増すなか、新しい世代別ブランドを立ち上げ、その販売にEC(電子商取引)を活用し、ECの売上げは対前年で月によって200~400%を記録するほど伸ばしています
そのECサイトの活用法などを田中代表取締役社長に伺いました。



田中社長(中央)


自社工場でジュエリー製造ができることで
新ブランドの立ち上げとECサイトの活用で活路を見いだす


1986年、先代社長はアンティーク・ジュエリーの技法を活かした独自デザインジュエリーの製造・販売へと方針を転換するため、自社工場を建設しました。高い企画力と品質が評価され、国内外からの取引先からのOEM(相手先ブランド製造)依頼が増えていきました。

田中社長に事業承継した2005年頃、当社が扱っているジュエリーは高級品が多く、顧客層は50代以上が中心で、新たな顧客層を開拓する必要性を感じていました。 このため、2008年、若年層向けのゴールド主体ジュエリー商品を自社工場で製造し、『sowi』としてブランドを立ち上げ、同時に代官山に直営店をオープンしました。2012年には、ウェブサイトも作りましたが、立ち上げ後数年間はサイトからの売上げはほとんど立っていない状況でした


2017年頃から、スマートフォンの普及とともに当社サイトもスマホからのアクセスが急増し、これを受け、スマホからも買い物しやすいようにECサイトのリニューアルを本格的に取り組みはじめます。
スマホでも見やすい画面構成にデザイン変更したほか、支払方法も初めはクレジットカードのみでしたが、購入手順の途中での離脱を防ぐため、決済入力の手間が省けるオンライン決済サービスを追加し(『sowi』では今後対応予定)、売上向上に繋がるためのサイトの改善を数多く行いました

また、リニューアルに際してGoogle Analyticsを今まで以上に活用して分析を行い、顧客の顔が見えてきました
通常の時期はアクセスの90%が女性ですが、季節によっては、男性からのアクセスが急に増えることがわかりました。女性へのギフト需要です。 その季節に対応した顧客の求めるものに応えられるようになったことや、オンライン決済サービスの追加により途中離脱するお客様が減ったことなどで、サイトリニューアルの翌年2018年から、『sowi』のサイト売上げは、右肩上がりが続いています。


碌山として年代別に3ブランドを揃えたことでOEMの需要も拡大、
ECサイトは少ないコストで展開

若者向けブランド『sowi』を2008年に立ち上げた後、2011年にはより幅広い世代に向けたシルバー主体のブランド『FATRAS』を、2019年には、それまで卸しかしていなかった50代以上の商品群をブランド『ROKUZAN』として立ち上げました。 3ブランドが立ち上がったことで、幅広い年齢層に向けた商品ラインナップが揃い、それぞれの年代に届けられるようになりました。 ブランドごとのサイトは、対象層が異なるために、それぞれ独自の展開をはかっています。


自社ブランドが育ったことで、OEM(相手先ブランド製造)の引き合いも増えました。
当社のOEMは、オリジナルの宝飾品が作れますので、取引先企業としてもメリットが大きく、BtoB(企業対企業の取引)の間口が広がるという好循環を生み出しました。

ところが、2020年に緊急事態宣言が発出されると、BtoBの取引先の主要販路である百貨店等への納品がすべてストップされたのです。
その時の当社の売上げ比率は、OEMが約35%、自社製品が約65%です。
自社製品は、直営店での販売やECでの販売だけでなく、TVショッピング、通販カタログなど多様な販売チャネルを展開していますが、売上が安定しているECの比率を強化したいと考えています。

ECサイトでの展開は、実店舗を出すよりもコストが安く抑えられるというメリットがあります。ただし、ECサイトでは常に新しい試みが必要です。
インターネットの世界は変化が速く、素早く対応していかないとユーザーに飽きられ、顧客が離れていってしまいます。一度、離れた顧客を取り戻すのはたいへんです。

そのため、碌山では、ブランドサイトとインスタグラムなどのSNS(ネット上で社会的なつながりを提供するサービス)を連動させています。
『sowi』のインスタグラムのフォロワーは約1万2000人。SNSによる口コミの広がりは、たいへんな広告効果を生み出します。
SNSは、ECサイトへの集客を導く、有効な販売促進策となっています。



コロナ禍で減った実店舗売上げは、ECサイトの売上げでカバー
ブランド事業は増収増益に

2020年は、コロナ禍により実店舗の入店者数は対前年30%減となりました。
ところが、『sowi』のECサイトでの売上げは対前年で月によって200~400%を記録しており、実店舗での販売売上げの減少を補い、ブランド事業としては増収増益となりました。

「ECサイトを運用していく上では、大きな変化でなくてもいい、小さな変化の積み重ねが大切です。宝飾のビジネスも、時代の変化に対応できないと生き残って行けないでしょう。当社もできることを少しずつ積み重ねてきたことで、成果が目に見えてきました。これからもITの最新情報を積極的にとり入れ改善し、皆様により良い商品を提供していこうと思います」(田中社長)


IT活用の効果・今後の展望

EC に利用しているカートシステム(WEB 上での商品販売を処理する仕組み(商品をカートに入れ、決裁を完了するまで))をShopify(ショッピファイ)に変更することで、EC サイトの運用を内製化しました。変更前はEC サイトの更新は協力会社に依頼し、都度費用と時間が掛かっていました。今回導入したShopify は操作が簡単でPC 操作ができれば対応できるため、EC サイトの制作をすべて自社内で完結できるように運用体制も変更しました。社員の増員等は行っておらず、実店舗とEC サイトの売上比率も変わったため、実店舗の販売員やその他社員も含め業務分担の見直しをはかり対応しています。「運用の内製化により、EC サイトの更新をスピーディーに行うことが出来るようになり売上の増加にもつながっています」と田中社⾧は話しています。

チャット、SNS(LINE)、メールの活用によりリアル店舗に近い販売活動

お客様からのお問い合わせにタイムリーな返答、提案ができるようにチャットサービス(チャネルトーク)を導入して、コミュニケーションの方法を見直しました。また、メルマガ・SNS(LINE)などのツールを使い、お客様との接点を増やすことにより、リアル店舗に近い販売活動が行えるように工夫をしています。


新商品の発売スケジュールを見直し、商品を見る機会を増やす

これまで季節ごとに新商品を発売していましたが、貴金属は季節による影響が少ないため、最近は短いスパン(毎月、毎週)でメルマガ・SNS(LINE)を利用して発表し、新商品を見てもらう機会を増やし、発売しています。メルマガ・SNS(LINE)、EC 販売活動などを内製化してお客様とのコンタクトの頻度を高めたことで、このような対応ができるようになりました。

今後も細かい改善を繰り返し、更なる売上向上を進めたいと田中社⾧は話しています。




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