株式会社伊場仙(本社:中央区日本橋、社長:吉田 誠男)は、団扇や扇子等の和紙製品を製造・販売しています。江戸後期に団扇を手掛けるようになり、歌川広重など人気絵師の版元になり、浮世絵を団扇に刷り込んで販売しています。現在は、同社本社1階の直営店のほか、百貨店や歌舞伎座などでも取り扱いがあります。

伊場仙本社の1階店舗



デジタルシフト・DXの取り組み・効果

 同社はコロナ禍をきっかけに、BCP対策・海外展開を目的として、①テレワークの導入、②SNSの運用、越境ECサイトの構築に取り掛かりました。「有事の際でも事業を継続させ、従業員を守りたい」と、創業400年の歴史を持ち、創業以来10数回の天災等を乗り越えてきた、同社の14代目である吉田社長は話します。

取り組み①:テレワークの導入
 新型コロナウイルスの影響が出始めた時期に、営業職の従業員にモバイルワーク可能なパソコン、マイクやスピーカー、モニターなどの機材やタブレット端末、携帯電話を配付しました。テレワーク導入当初は、従業員から不安の声が挙がっていましたが、「会社が従業員の健康を守ってくれている」という意識が浸透し、徐々に機材を使いこなせるようになり、自宅から取引先とのオンライン会議を行えるようになりました。

取り組み②:SNSの運用、越境ECサイトの構築
 2022年夏から、ウェブサイトへのアクセス数を増加させるため、SNS対策を強化しました。InstagramやX(旧Twitter)、YouTubeへ画像・動画とともに新商品情報やコラムを投稿しています。また、サイトの構築・デザインや管理、SNS用の動画・写真撮影、投稿、問い合わせ対応等は、従業員1名と海外在住のフリーランス1名の計2名で企画・対応しています。また、同社は、国や都等が展開している補助金・助成金などの情報を収集し、積極的に活用しています。2022年度にはものづくり補助金に採択され、同年冬に越境ECサイトの構築を開始しました。吉田社長は「越境ECサイトからの売上を伸ばすことが鍵となる」と話します。
 デジタルシフトの取り組みにより、コロナ禍(2020年)と比較すると売上は2倍に増加、コロナ禍前(2019年)と比較しても増加傾向にあります。また、ウェブサイトやSNSを見て実店舗に来店する顧客が増えており、SNS実施の効果を感じているそうです。また、SNS対策強化後のオンラインショップでの売上は、対策前と比べると10%程度増加しました。

伊場仙オンラインショップでも扇子・団扇を販売している


今後の展望

 今後はオンラインショップの売上をさらに増加させることが目標です。また、「インバウンド向けに注力し、オンラインショップの中でも越境ECの売上を増加させたい。そのためには、ウェブサイトやSNSの更新をこまめに行い、新規顧客の獲得につなげたい」と吉田社長は語ります。
 また、同社は、今年6月にメタバースを活用した3D美術館「浮世絵美術館」をオープンさせました。仮想空間のマーケティング・コンサル会社とともに手掛け、江戸時代の浮世絵を自由に鑑賞したり、アバターに話しかけたりすることができます。今後は、浮世絵NFT(※)の販売も予定しています。吉田社長は、「こういった取り組みの目的は『事業を継続させること』。店舗や日本国内にとどまらず、オンラインの活用や海外へのさらなる展開を通じて、歴史ある会社・従業員を守っていきたい」と今後の決意を力強く述べられていました。

※非代替性トークン…ブロックチェーンを基盤にして作成された代替不可能なデジタルデータ(デジタルアートやデジタルファッション、ゲームのアイテムなど、有形・無形さまざまなものが対象))



吉田 誠男社長




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