事業承継事例

八大株式会社(本社:中央区日本橋、社長:岩田 享也)は、食品輸送、基幹物流、倉庫業務などを行う物流会社です。1942年に創業し、紙物流を主力としていましたが、2000年代に入りインターネットの普及やデータ化により需要が減少し、生花を扱う花き物流にシフトしました。その後、2011年の東日本大震災によって嗜好品の取扱いが減少する中、食品の輸送にシフトするなど、時代の変化に柔軟に対応してきました。


八大株式会社 本社営業所



IT活用のきっかけ

岩田社長は、物流業には、荷主の指示を受けて、その仕事をただこなせば良いという業界特有の風土がある、と感じていました。しかし、人口減少・高齢化社会の進展による人手不足に直面する日本では、そうした従たる姿勢は通用せず、今後は、主体的かつ柔軟に取り組む必要性を痛感していました。 先端を走っている企業と伴走し生き残っていかなくてはならないとの思いで、物流業に厳然として存在するアナログ文化の打破が重要だと考え、IT活用に取り組み始めました。

IT活用の取り組み

同社は、社内ネットワークの構築や会計システムの導入など、ITを積極的に導入していましたが、社長とIT企業での勤務経験のある管理部長の旗振りのもと、①デジタイゼーション、②デジタライゼーション、③デジタルトランスフォーメーションのステップを踏みながらさらなるIT活用を進めていくことにしました。

まず第1段階のデジタイゼーション(特定分野におけるデジタル化)では、ビジネスチャットソフト「Chatwork」を導入(のちにLINE WORKSに移行)したほか、自社HPをリニューアルし、会社の最新情報や業務風景をタイムリーに発信するようにし、同時に月例のミーティングにおいてアクセス分析(ページビュー数の推移等)を行うようにしました。あわせて、社内の様々な文書のペーパーレス化も推進しました。

こうしたデジタル化の基礎が整った段階で、第2段階となるデジタライゼーション(業務フロー・プロセスのデジタル化)を行いました。
具体的には、車両の動態管理として、ネットワーク型デジタコ(デジタル型運航記録計)である「ITPウェブサービス」(トランストロン)を導入し、管理系の社員のPC上でリアルタイムでの動態情報の追跡・取得ができるようにしました。各配達員や車両の情報がリアルタイムで見える化できるようになり、休憩の確実な取得を含む労務管理の徹底、急ブレーキ・加速等のデータを基にした安全運転・省燃費運転への意識づけ、食品の冷蔵・冷凍輸送時の庫内温度の可視化が実現しました。

また、あわせて、従来は人員を設置し行っていた出発前の点呼について、「IT点呼キーパー」(テレニシ)を導入し、アルコールチェッカー・免許チェッカーも併せて行うことで、「人によらない点呼」で省力化が実現したほか、データ化も併せて実現しました。


以上のような取り組みにより、社内の各種データ化が実現されたため、2021年からデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みをスタートしました。
具体的には、物流DXを支援するベンチャー企業ascend社と連携しながら、クラウドシステム「アセンド・ロジ」を共同開発・導入しました。同システムは、物流業に特化し、案件管理・配車表作成・請求書管理をはじめとする現場の管理業務を効率化・脱属人化するとともに、ダッシュボード機能や経営分析レポートの作成により経営者や管理者が見たい経営情報(年次・月次・日次の売上・費用・利益等)を早く、細かく、深く、可視化するものです。

システムの設計では、現場の社員の声を集めながら、使いやすいシステムを作ることを目指しました。このシステムを共同開発・導入したことにより、デジタル化による業務効率化と、蓄積したデータの分析による経営の効率化の双方を達成することができました。

IT活用の効果・今後の展望

IT活用による効果として、業務の効率化・経営データの見える化が達成されるとともに、結果として会社が安定し、落ち着いたと岩田社長は語ります。また、各種データの見える化によって、経営層・社員ともに定性的な思考からデータをもとにした定量的な考え方ができるようになったことで、課題に対する打ち手が明確になったとのことです。

今後は、共同開発した「アセンド・ロジ」をより良いものにするため改良を重ねていくとともに、中小運輸業全体のデジタル化を促進すべく、自社の取り組み事例を広く発信していきたいとのことです。さらに、現在は法律による規制があるものの、ロボット・隊列運転・自動運転といった最新技術の活用についても常に情報をキャッチし、注視していくとのことです。

デジタルシフトを目指す中小企業経営者へのメッセージ

岩田社長は、中小企業のデジタルシフトについて、次のように語ります。

「リソースが限られる中小企業にとっては、『スモールスタート』と『PDCA』が重要であり、まずは業務の一部分からデジタル化を始め、継続的な見直しをしながら必要があればいったん引き下がることも必要です。スモールスタートでデジタル化が進めば、従業員もその成功体験をもとに、さらなるステップアップに向けて自ら動いてくれます。

また、ITツールの選択に際しては、比較的安価なクラウドサービスを積極的に活用すべきです。経営者として重要なのは、決して否定をしないことです。思うように成果が出なくても、失敗と捉えずに、経験として捉えて、それを積み重ねていくことで成功につながります。

代表取締役 岩田 享也 氏




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