事業承継事例

多様な顧客ニーズへの対応と業務効率化に向けたIT活用


株式会社藤ダイレクト(代表取締役:加藤和久氏、所在地:中野区上高田)は、挨拶状や販促に関する印刷物等の企画提案から印刷、発送作業までワンストップで対応。ITを活用しながら顧客データベースを管理、独自ノウハウを駆使しながらさまざまな業務代行業を受注しています。

創業から2012年ごろまでは、百貨店のカード会員管理やDM発送を主力事業としてきました。近年は、大手コンビニエンスストアの地域別展開の店頭掲示ポスターの生産から仕訳、梱包、物流センターへの一括納品など、幅広いニーズに応えています。

複数の印刷会社や発送会社と独自ネットワークを構築している藤ダイレクトは、印刷物の企画から仕分け、発注作業をワンストップで受注。大手企業でもアナログになっているケースも多いこれらの作業を、バリアブル印刷をはじめとしたデジタルツールの活用によって対応しています。


加藤和久社長


きっかけはDX促進に向けた経営塾への参加

2018年、加藤社長はアメリカの小売業を視察するツアーに参加。アメリカ国内で普及が進んでいた無人店舗やセルフレジの利便性、有人レジも利用しながら顧客目線で展開している小売業の先進モデルに触れながらデジタルの重要性を体感しました。

帰国後、ツアーに参加していたDXコンサルティングの経営者が開催する勉強会で、中小企業が今後成長するにはDXやデジタルシフトは必須との考えを学び、IT活用を促進するようになりました。

「デジタルシフトはシステムを構築するのではなく、業務を効率化しながら生産性の向上を実現すること。自社が抱える複数の業務を整理し、IT活用によって処理時間を短縮する。業務効率化によって創出された時間は、オンラインを用いたインサイドセールスにつなげる。IT活用にあたり顧客目線でどうすべきかを重視している。」(加藤社長)

業務の効率化にITツールを活用

藤ダイレクトは、B to B特有の仕訳処理に便利なクラウド会計ソフトのマネーフォワードを導入。勤怠管理はクラウドサービスに変更。給与明細も電子化し、給料日に従業員あてにメールで自動送信するなど、これまで手作業で行っていた業務をITツールの導入によって処理時間の大幅な短縮につなげました。

その結果、担当者の業務負荷も大きく軽減。加藤社長も場所や時間にとらわれることなく、外出先での営業活動と並行しながら各種業務を処理するなど柔軟な働き方を実践しています。

名刺情報を活用した顧客管理にクラウド型のサービスSansanを導入。藤ダイレクトは、プライバシーマークを取得している関係から、個人情報保護について適切な措置を講じる必要があります。Sansanの導入によって、取得した名刺情報を自社の顧客管理データベースに入力する手間が省けるとともに、保管リスクに気を遣う必要もなくなりました。多くの顧客と関わりを持つ加藤社長にとって、面談相手や企業名・所属先を即座に確認できる点が大きな導入メリットです。

そのほか、外出先からでもファイルにアクセスできるMicrosoft 365のOneDriveや、取引先が導入するグループウェアを利用した発送スケジュール管理、従業員や顧客とのコミュニケーションはチャットアプリ、コロナ感染対策と移動時間短縮を目的としたオンライン商談など、ITツールをフル活用しています。


Webを活用しながら販路開拓に注力

藤ダイレクトにとって、コロナ禍での大きく低下した売り上げの回復と、新規顧客の開拓が喫緊の課題です。

2016年、自社のネームブランドを広めるために小規模事業者持続化補助金を活用しながらホームページを作成。今夏の全面的なリニューアルに向けて再構築作業に着手しており、印刷や発送代行業務を求める顧客とマッチングするWebマーケティングとコンテンツ開発に力を入れています。

信頼できるIT専門家と連携しながら主要顧客にヒアリングを実施。ユーザーの考え・行動把握に向けたサンプル収集を繰り返し、Webサイトのリニューアルを進めています(今秋に完成予定)。

「中小企業こそ自社を必要とする顧客から自社の存在を知ってもらえるかどうかに着目し、IT専門家からアドバイスを得ながらWebを活用したPR活動に取り組むことが重要。 大手競合企業と価格面で劣後していても、個人情報の保護体制をはじめ顧客から見て融通がきくか、迅速に正確に対応できるかどうかで評価される。そのような方針で進めてきた結果、顧客からグループ企業を紹介してもらうケースも多い。今後もITをフル活用しながら業務の効率化を図り、生産性の向上につなげていく。」(加藤社長)

デジタルシフトを考えている経営者の皆さまへ

世の中には使いやすいITツールがたくさんあります。IT活用に取り組もうと考えている中小企業経営者の皆さまにおかれては、自社の業務に合致したITツールを開発するよりも、関連する既存のITツールを試されることをおすすめします。一部無料で利用できるものもあります。

中小企業の強みは、ルールの変更や運用方法変更などに柔軟に対応できることです。自社の運用方法やルールに合致するITツールがなくとも、近いものや利便性が高いもの利用し、自社のルールや運用方法をITツール側に合わせてしまうのも一つの方法ではないでしょうか。

経営者の皆さま自身が、様々なITツールに少しでも触れることで利便性や効果に気づくケースが多くあるはずです。東商会員企業の皆さまがデジタルシフトを進めていくことによって、業務の処理効率や顧客対応力を向上され、さらなる業容拡大につなげていかれることを願っています。




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