事業承継事例

実店舗のみの販売からインターネット販売でチャンス拡大

荒川区の日暮里繊維街に店舗を構え、生地織物とその生地で作るオリジナル衣装を販売する株式会社奥山は、1978年に現在の代表取締役社長の奥山貴弘さんの父親が創業されました。
奥山社長は2009年に事業承継し、その後2015年からEC(電子商取引)に着手。それまでは実店舗での販売が中心でしたので、まさにゼロからのスタートでした。
順調に売上げを伸ばしていましたが、コロナ禍による2020年、実店舗での販売売上げが激減。ところがその減少分をECの売上げがカバーしました。
初めてのIT利用から現在に至るまでの経緯を奥山社長に伺いました。

奥山社長(中央)


製品の良さは直接触れないとわからないと、実店舗での販売にこだわった先代


先代は、日暮里繊維街の中で、他店と同じ商材を扱っても価格競争になるだけと考え、化学繊維ポリエステルをメイン商材に決めました。
化学繊維といっても、日本の技術レベルは高く、織りは素晴らしく、発色もすぐれています。その特徴を活かして作ったのがステージ衣装でした。

ママさんのコーラスブームもあり、オリジナル衣装は話題となりました。
「この生地で作る衣装は、まさに世界で一点もののオリジナル衣装となります。手間やコスト効率を考えると、大手企業が手を出さないニッチなところ。このレールを築いたのが先代でした」(奥山社長) 

その社長がずっと言ってきたことは「世界にここだけしかない生地だから、直接見て触れてほしい。だから、どこでも買えるようにはしたくない」と実店舗での販売にこだわっていました。


いいものは広く知ってほしいから、インターネットを使うと決断した現社長

2009年に奥山社長が入社して驚いたのは、会社にパソコンが1台もなかったことです。
創業以来、実店舗での販売と対面電話での営業で成り立ち、PCは必要がありませんでした。
しかし、「現状のままでは衰退するばかり。先代がつくり上げてきた自信のある商品をこのまま埋もれさせてはいけない」と、パソコンを導入しECの可能性を模索しはじめます。

その頃、生地はPC画面上では、色味の再現に限界があり、肌触りが確認できないためインターネットでは売れないと言われていました。
しかし奥山社長は、先代の意志を、自分なりの形で実現するつもりで、「世界で奥山にしかないオリジナルのいいものだからこそ、広く多くの人に知ってもらいたい。」そのために、インターネットを活用して発信を行いました。


ECによって新しい顧客を獲得。顧客メリットの大きさにも気づく

自社サイトを立ち上げた当初、サイトに載せる写真の生地の質感は大切にしました。
写真の色調の調整は細心の注意が必要なため、専門の業者に依頼しましたが、その後は自分で行うようにしました。

最初からすべて自分でやろうとしていたら、ここまでうまく進まなかったでしょう。わからないことは聞くということの大切さを実感しました」と奥山社長。
現在、自社サイトとインターネットショッピングの大手2社でECを展開しています。
大手2社は品揃えを豊富に掲載。自社サイトでは、奥山にしかないものや新商品をまず掲載するというように、使い分けをしています。



たくさんの生地が並ぶ店舗。サイトに載せる生地の写真は、質感や色調が伝わるよう細心の注意を払う。


オリジナル衣装が思わぬ分野で人気に、顧客ニーズを捕まえて信頼を得る

コーラスのステージ衣装は、ステージの演出に新しい価値観を生み出しました。プロのピアニストや声楽家からはオーダーメイドのステージ衣装の依頼も来るようになりました。

さらに現在ではコスチュームへと広がり「オンラインゲームのキャラクターの衣装を作りたいとコスプレのイベントのステージ衣装を作ってほしいといった、コアな問い合わせが増えています」
アニメやゲームなどのキャラクターに扮するコスプレーヤーたちが、質のいい生地でデザイン性にもすぐれた衣装づくりに対応してくれる奥山に注目したのです。

実は奥山の社員に、現役のコスプレーヤーがいます。
奥山社長は、コスプレーヤーの気持ちや望みを知りたくて、コスプレーヤー向けのサービスや商品開発は、必ずその社員と行います。
お客さまがハッピーになるためのモノやサービスを提供するには、お客さまの求めるものを知るのが大切です」コスプレーヤーならではのキーワード(SEO対策)を載せることで、インターネットでの検索のヒット率も上がるようになりました。

「実店舗にご来店いただくお客さまは、口コミで人から人へ奥山や商品のことを広めてくれます。インターネットのユーザーは、サイトにレビューを書き込み、そのレビューは、購入しようとしている商品に興味のある人が目にします。口コミと違い、その伝わる速度と広がりは驚くほどで、とくに、コスプレとネットの相性はいいと感じます」

2020年はコロナ禍により、外出が制限されイベントの中止が相次ぎ、実店舗への来店客数は激減しステージ衣装の売上げは8割減となりましたが、ECでのコスプレの売上げがその減少分をカバーするほどとなりました。


質の良い生地とデザイン性が注目され、コスプレーヤーからの受注が増加


ECの顧客は国内にとどまらない、越境ECで海外にも広げる

インターネットのいいところは、情報を発信すると世界中に届くことです。コスプレは今や世界的な人気を博し、ニーズは日本のみならず、フランス、ロシア、台湾など、とどまるところを知りません。

日本製の生地の人気も高く、モンゴルの富裕層からの問い合わせもあるほどです。「今はパンデミックにより輸出入は制限されていますが、再開されたら海外向けのECにも力を入れていこうと考えています」

奥山社長は、コロナ禍の今は、越境ECの準備のための期間だととらえています。
「奥山は、ものづくりやサービスといった人でないとできないアナログの部分を大事にしています。ITは活用しますが、デジタルだけでは人は幸せになれないと考えます。ものづくりを大切にして、『衣装を通じてハッピーになる』というポリシー実現のためにITを利用し続けるつもりです


IT活用の効果・今後の展望

コロナ禍でのEC販売の状況

コロナ禍により実店舗の売り上げは激減しましたが、マスク生地の需要拡大や、コーラスのステージ衣装とコスプレヤーへのEC販売により売上が3倍に増えた月もありまた。マスク生地の需要拡大は一時的なものでしたが、これをきっかけに多くのお客様とオンラインでの接点が増えたため、EC販売時に自動的に発行されるサンクスメールの返信だけでなく別のメールをお送りして、お客様とのコミュニケーションを深める工夫をしました。

SNSの特徴を活かしリピーターを獲得

ECでのお客様にリピーターになってもらうため、奥山社長は各種SNSの活用を始めました。例えば、Twitter(ツイッター)で奥山の生地で作った商品を紹介している人に「いいね」をして、そこからホームページに誘導しています。Instagram(インスタ)では見栄え重視で衣装や製品になったものを紹介しています。楽天や自社オンラインショップのクーポンやセールといったイベントだけではなく、Twitter(登録者3000名程度)や自社ラインを使って生地の紹介を行い、オンラインショップに誘導します。また、生地の用途やどんなお客様が来ているのか、日暮里繊維街としての取り組みは何をしているのか、定期挨拶、想定しているペルソナが好みそうな生地の紹介や、他社と奥山の生地の差別化などに内容変更し、最近は自社オンラインショップの売上が伸びてきていす。今後は自社だけでなく自社の店舗が所在している荒川区の日暮里繊維街の取り組についても紹介していきたいと奥山社長は話しています。


(株)奥山のSNSのご紹介

【奧山インスタグラム▶nippori_okuyama】は、ステージ衣装DRESS OKUYAMA の衣装を掲載しています。衣装のアンバサダーを中心に衣装をプロモーションしています。またYouTubeへの流入を狙っています。



Instagram


【奧山ツイッター▶@Niooiri_okuyam】は、お客様とのできるだけオンタイムでのつぶやきへの反応や、こまめな商品情報、用途の発信のために使っている生地専門のツイッターとなります。



Twitter


【奧山YouTube▶https://www.youtube.com/channel/UCvMp7AA9xR6ltRMgSxdM02w】は衣装の動きを見せ、アンバサダーの感想などを掲載しインスタや直接の商談への流入を狙っています。



YouTube


日暮里繊維街のご紹介

(株)奥山が所在する荒川区の日暮里繊維街は『布地』や『服飾雑貨』を通して、お客様の『モノづくりを応援する街』から一緒に『モノづくりを楽しむ街』に変化しつつあります。参加型のワークショップ、ハンドメイド商品を試し販売できるスペース、布地にオリジナルプリントを施して世界で唯一の布地づくり、個人事業主の方がつどいビジネスのきっかけを作る街です。布地、服飾雑貨、モノづくりのためのミシンやプリンターといった器械類、あらゆる角度から楽しめる街づくりをしています。

現在の主な活動は日暮里繊維街HP内から各店舗のオンラインショップにつなげる仕組みを構築し、地位団体商標登録を申請し地域としてのブランド力を高める試み、SNSを活用した産官学連携事業を計画中です。



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