東京商工会議所工業部会（部会長＝平井克彦　東商特別顧問・東レ相談役）は5月19日（金）、由紀精密社長の大坪正人氏を講師に招き、講演会「宇宙産業を支える町工場～世界が注目する由紀精密の挑戦と今後の展望～」を開催し、109人が参加した。

　大坪氏の祖父が創業した由紀精密は、公衆電話や光ファイバー部品を製造する金属加工下請け工場であったが、携帯電話の普及やＩＴバブルの崩壊などにより経営危機に見舞われた。そこで、2006年に大坪氏が入社後、自社の強みを把握するため、取引先に対しアンケートを実施。「高品質で信頼性が高い」という評価が得られたことから、「強みが活かせる分野として、高精度の加工技術が必要な航空宇宙や医療機器へ進出した」と説明した。

　航空分野では「これまでの大量生産とは異なり、高品質で少量多品種の生産体制の構築が必要」と分析。そこで「社内システムのＩＴ化や、航空宇宙分野の品質マネジメントシステムの取得を行ったほか、不良品を出さない従業員の意識改革を行った」と説明した。また、積極的に国内外の展示会に継続して出展。「一度受注すると安定的に取引でき、エンジン・機体の部品を数十種類製造するまでに成長した」と述べた。
　
その後進出した宇宙分野では、ベンチャーや大学との連携によるプロジェクトを多数紹介。超小型の芸術専用衛星であるARTSAT2 DESPATCH、微小サイズの宇宙ゴミの位置観測を行う人工衛星の開発支援を挙げた。複数の事業成功の秘訣として「社内で開発部を立ち上げ、要望に応えるのみならず、コストダウンから品質向上まで相手目線での提案が重要」と強調した。
　最後に今後の展望について「製造業に興味を持ってもらい、ものづくりで夢を叶えられるようにしたい」と語った。

　今後も工業部会では部会員の皆様のビジネスに役立つ情報提供をしていきます。