【入門】データ活用による「事業計画策定」の第一歩<Part3>
2026.01.30
本パートでは、公開データを用いて市場環境を客観的に検証する「Step 1」と、社内データから売上に貢献する優良顧客を特定する「Step 2」の2段階の分析プロセスを解説します。分析と聞くと難しく感じるかもしれませんが、やるべきことはシンプルです。
「市場(外)」を見て、「顧客(内)」を知る。この2つの視点をデータで繋ぎ合わせることで、感覚ではない確かな勝ち筋が見えてきます。また、多くの事業者が陥りがちなSNS活用の落とし穴についても触れています。
チャプター
動画サマリー
1.Step 1:市場を客観的に検証する(外部環境)
まずは外の世界、つまり市場環境をデータで把握します。ここで使うフレームワークは「PEST分析」です。政治、経済、社会、技術の4つの視点で整理しますが、特に中小企業が重視すべきなのは以下の2点です。
S(社会)
人口動態 商圏内の昼間人口と夜間人口の差や、来街者の属性を把握します。
E(経済)
需要と価格 ターゲット層の消費動向や、競合の価格帯、賃料水準などを確認します。
セミナーで紹介した港区の事例では、同じ区内でもエリアによって昼夜間人口が全く異なることがデータで示されました。
新橋・虎ノ門エリア
昼間人口が夜間の数倍に達するため、ビジネスパーソン向けの「ランチ回転率」や「テイクアウト」が勝ち筋になります。
麻布・白金エリア
夜間人口(住民)が多く富裕層比率も高いため、「単価の高いディナー」や「体験価値」への訴求が有効です。
このように、公的データ(RESASや国勢調査)でエリア特性を裏付けることで、感覚に頼らない立地戦略や商品設計が可能になります。
2.ターゲットの絞り込みと優先順位
市場全体を把握したら、次はターゲットを絞り込みます。あれもこれもと欲張るのではなく、自社が勝てる領域にリソースを集中させるためです。 絞り込みは、「市場全体 → セグメント → ペルソナ」の順で行い、最終的な優先順位は以下の4つの基準で決定します。
収益性
単価や粗利が高く、購入頻度が見込めるか。
到達性
広告や営業活動によって、その顧客にアプローチできる手段があるか。
規模
ビジネスとして成立するだけの母集団(パイ)があるか。
競争強度
競合他社が多すぎないか、差別化の余地があるか。
3.Step 2:売上に貢献する顧客を特定する(内部環境)
外部環境の次は、内部環境(自社の実績)に目を向けます。ここで目指すのは、売上の8割を作っている上位2割の顧客、つまり「誰が自社を支えているのか」を特定することです。
具体的には、社内データを使って以下の指標を確認します。
継続率・離脱率
一度買った顧客がどれくらい定着しているか。特に「初回購入後の離脱」が多い場合は、サービス品質やフォロー体制に課題(弱み)がある可能性があります。
LTV(顧客生涯価値)
一人の顧客が取引期間全体でもたらす利益はいくらか。
これらを分析することで、「高LTV層の比率が高い(強み)」や「初回離脱が多い(弱み)」といったSWOT分析の要素が、データに基づいて明確になります。
4.RFM分析で「優良顧客」を見つけ出す
優良顧客を客観的に見つけるための手法として、Excelで簡単にできる「RFM分析」を紹介します。顧客を以下の3つの指標でランク付けする方法です。
R(Recency):最新購買日
最後に購入したのはいつか。最近であるほど高評価。
F(Frequency):購買頻度
これまでに何回購入したか。多いほど高評価。
M(Monetary):購買金額
累計でいくら使ったか。高いほど高評価。
例えば、「直近3ヶ月以内に来店し(R)、通算2回以上利用(F)、累計3万円以上使っている(M)」顧客を抽出します。 この層こそが、自社の「勝ち筋」を知る鍵です。彼らが選んでいるメニュー、来店時間帯、担当者などの共通項を探ることで、具体的な打ち手(紹介キャンペーンや特別プランの案内など)が見えてきます。
5.注意喚起:SNS・インフルエンサー活用のリスク
最後に、多くの事業者が陥るプロモーションの罠について触れておきます。 「フォロワー数」だけを見てインフルエンサー活用やSNS広告を行うのは非常に危険です。フォロワー数は売上に直結しない「虚栄の指標(Vanity Metrics)」になりやすいからです。
プロモーションを行う際は、必ず以下の指標で費用対効果を検証してください。
CVR(成約率)
アクセスした人のうち、何人が購入に至ったか。
CAC(顧客獲得単価)
顧客1人を獲得するためにいくら掛かったか。
ROAS(広告費用対効果)
広告費に対してどれだけの売上が上がったか。
最初から予算を投下するのではなく、小さくテストして、これらの数字が良いチャネルに後から予算を配分する。これがデータに基づく正しいプロモーションの手順です。
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