まずはここから!事業計画書の基本
~考えを整理し、書き始めるための基本ガイド~
2026.02.03
はじめに
「事業計画書」と聞くと、「難しそう」「数字が苦手」「きちんと書ける自信がない」と、つい身構えてしまう方も多いのではないでしょうか。しかし、事業計画書は最初から完璧に仕上げる必要はありません。本来の役割は、頭の中にある事業のアイデアや考えを整理し、次の一歩につなげるための道具です。本コラムでは、事業計画書に初めて取り組む方に向けて、「そもそも何のために作るのか」「いつ作ればよいのか」「何を書けばよいのか」といった基本的な考え方を、わかりやすくお伝えします。読み終えたときに、「これなら書き始められそう」と感じていただくことが、本コラムのゴールです。
1.そもそも事業計画書とは何か?なぜ必要なのか
事業計画書というと、融資や補助金の申請時に提出する「書類」というイメージを持たれがちですが、実際にはそれだけではありません。事業計画書は、経営の設計図ともいえる存在です。作成することで、主に次の三つのメリットがあります。
- 一つ目は、頭の中の整理です。事業アイデアを言葉や数字にすることで、漠然としていた構想が具体化されます。
- 二つ目は、課題の見える化です。書き出してみると、「資金は足りるのか」「本当にお客さまは来てくれるのか」など、今後検討すべき点が明確になります。
- 三つ目は、周囲との共通言語になることです。金融機関や支援機関、家族やパートナーに事業内容を説明する際、事業計画書があることで、話がスムーズに進みます。
「小規模事業者や個人事業主にも必要なのか」と疑問に思われる方もいらっしゃいますが、規模の大小に関わらず、事業を継続・成長させるためには、考えを整理するツールとしての事業計画書は有効です。
2.事業計画書はいつ作る?ベストなタイミング
よくある誤解として、「融資を受けるときだけ作ればよい」というものがあります。しかし、実務の現場では、事業計画書を作成するタイミングは一つではありません。
代表的なタイミングとして、
- 創業前
- 融資や補助金を申請するとき
- 事業が思うように伸び悩んでいるとき
- 新商品や新店舗など、次の展開を考えるとき
が挙げられます。
事業計画書は、一度作って終わりではなく、状況に応じて見直し、更新していくものです。「まだ早い」「もう少し固まってから」と考えるよりも、思い立った今が、最初の作成タイミングといえるでしょう。
3.【全体像】事業計画書に書くべき基本項目
書き始める前に、まずは事業計画書の全体像を把握しましょう。
事業計画書は「作文」ではなく、事業の成り立ちを、第三者が理解できる形に翻訳する作業です。そのため、一般的には次のような項目で構成されます。
- ①事業概要・ビジョン
- ②市場・顧客・競合
- ③自社の強み・提供価値
- ④販売・マーケティング戦略
- ⑤組織・人員体制
- ⑥財務計画
ここで大切なのは、項目を「埋める」ことよりも、項目同士のつながりを意識することです。
例えば、
「誰に(顧客)」→「何を(商品・サービス)」→「なぜ買う(提供価値)」→「どう届ける(販路・マーケ)」→「どう回す(体制)」→「数字で成り立つ(財務)」
という一本の流れが通っていると、読み手は理解しやすく、計画としての説得力が高まります。
また、初心者の方がつまずきやすいポイントとして、「どこから書くべきか」があります。結論から言うと、順番どおりに書く必要はありません。むしろ、書きやすいところから着手した方が前に進みます。例えば、
- すでに商品・サービスのイメージがある方は「事業概要」から
- 客さま像が明確な方は「市場・顧客」から
- 数字が得意な方は「売上の立て方(財務の一部)」から
など、入口は人それぞれです。
まずは全体像を「地図」として押さえ、いま書けるところから少しずつ埋めていきましょう。
4.いきなり書かない!作成前にやっておきたい3つの準備
事業計画書が書けない理由の多くは、「能力不足」ではなく、準備が曖昧なまま書こうとしていることにあります。いきなり文章にせず、次の三つを整えるだけで、作業の進み方が変わります。
準備①:「誰に・何を・どのように提供する事業か」を言葉にする
ここは、事業の核です。難しい言い回しは不要で、まずは一文で表現してみてください。
例:「港区周辺の忙しい共働き世帯に、時短で栄養バランスの取れる惣菜を、予約と受取で提供する」
この一文ができると、以降の項目(ターゲット・販路・価格・必要設備)に連鎖していきます。
あわせて、次の3点をメモにしておくと、計画が具体化しやすくなります。
- お客さまの困りごとは何か(ニーズ)
- 競合と比べて何が違うか(選ばれる理由)
- 継続して提供できる根拠は何か(自分の経験・強み・体制)
準備②:数字は仮でOK。まずは方向性を考える
初心者の方は「数字が正しく出せない」ことを恐れて手が止まりがちです。しかし、最初の目的は正解を当てることではなく、「数字の構造」を理解することです。
例えば、売上は基本的に「売上=客数×客単価」で分解できます。ここから先は、あなたの事業に合わせて、
- 客数は?新規顧客と既存顧客の数や割合
- 客単価は?商品・サービスの提供価格や売れ筋
といった形で、さらに分解して根拠を作ります。
数字は後から何度でも修正できます。まずは「これくらいを目指す」という方向性を置き、根拠づくりは作成途中で精度を高めていきましょう。
準備③:他人に説明できるレベルを目指す
事業計画書は“自分のため”でもありますが、同時に“他人に伝えるため”でもあります。おすすめは、家族や知人などに、3分で説明するつもりで話してみることです。言葉にすると、
- 伝わりづらい部分
- 根拠が弱い部分
- 自分でも曖昧だった部分
が浮き彫りになります。
事業計画書は、書きながら考えてよいものです。完璧な下書きを作ってから清書するのではなく、「書く→気づく→直す」を繰り返すことで、計画の精度が上がっていきます。
5.良い事業計画書と、うまくいかない事業計画書の違い
うまくいかない計画書は、「文章が下手」というより、読み手が判断するための材料が不足しているケースが多いです。よくある「もったいない計画書」の特徴は、次の3つです。
(1)よくある「もったいない計画書」の特徴
①抽象的で、実態が見えない
例:「地域に愛されるお店にしたい」「高品質なサービスを提供したい」だけでは、具体的に何を、誰に、どう提供するのかが伝わりません。
→「どの地域の、どんな人に、どんな方法で」を入れるだけで伝わり方が変わります。
②夢や想いはあるが、根拠が弱い
情熱は大切ですが、金融機関や支援機関が知りたいのは「実現の可能性」です。
→価格設定の理由、集客の手段、競合との差別化、経験・人脈・協力者など、“実行できる理由”をセットで示すことが重要です。
③数字が現実離れしている/数字と内容がつながっていない
例:客数が根拠なく大きい、広告費ゼロなのに新規客が増える想定になっている、など。
→数字は「事業の動き」の結果です。販路や施策と数字がつながっているかを見直しましょう。
(2)良い事業計画書に共通するポイント
一方、良い事業計画書には共通点があります。
①自分の言葉で書かれている
借り物の表現よりも、「なぜこの事業をやるのか」「誰を助けたいのか」が、自分の言葉で書かれている計画書は強いです。読み手も応援したくなります。
②課題と対策が整理されている
リスクがない計画は存在しません。大切なのは、課題を隠すことではなく、
- 何がリスクか
- どう備えるか
が整理されていることです。これは、事業の見通しの良さとして評価されます。
③数字とストーリーがつながっている
「どんなお客さまに、どんな価値を、どんな方法で届けるか」が明確になるほど、数字の根拠も作りやすくなります。逆に言えば、数字が作れないときは、ストーリー側(ターゲットや提供価値)が曖昧になっているサインでもあります。
見栄えの良さよりも、「読み手が判断できる材料がそろっているか」を意識することで、事業計画書の質は確実に上がります。
6.一人で悩まないために|支援機関・専門家の活用
事業計画書は、一人で完成させるものではありません。商工会議所や支援機関、専門家に相談することで、客観的な視点が加わり、計画の精度が高まります。第三者に見てもらうことで、自分では気づかなかった改善点が見えてくることも少なくありません。
おわりに
事業計画書は、経営を前に進めるための実践的なツールです。完璧を目指して手が止まるよりも、まずは書き始めることが大切です。
次回以降のコラムでは、各項目の具体的な書き方や、財務計画についても解説していきます。本コラムが、事業計画書作成の第一歩となれば幸いです。
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