※企業概要は受賞当時(2021年)の内容です。
●度重なる困難を教訓に国際規格を取得し自社を変革。これまでにない新たな医療機器の開発に挑戦
当社は65年の歴史を有する耳鼻咽喉科に特化した医療機器メーカーです。
中小企業ながら大手に負けない製品開発に取り組み、高品質の製品を医療現場に提供することにより患者さんのQOL(クオリティ オブ ライフ)の向上に寄与しています。
当社ではものづくり企業として品質方針を定めていますが、その一番に掲げているのが、「患者さんのことを考える」。
例えば、今日の社会的課題としてストレスが要因で「めまい」を発症し仕事ができなくなる方々がいます。そこで当社の医療機器が治療をサポートし、患者さんの「めまい」が改善して仕事に復帰できるようにすることが当社の役割と心得て日々の仕事に打ち込んできています。
2020年2月、新型コロナウイルス感染者が報告され、耳鼻咽喉科に設置されている、薬剤を噴射するスプレーや鼻水を吸引する器具などを備え付けたユニットという診察用の機械は当社のメイン製品のひとつですが、このユニットが空気を用いて吸引・排出する際にウイルスも混在する感染リスクがあるのではないかと、多くの施設で使用禁止に。
さらに大学病院やクリニックでは営業担当者の訪問は感染リスクが高いと禁止になる所も増え、加えて大事な営業活動である学会展示会は春夏ほぼ全て中止。
これらの制限に加えて、耳鼻咽喉科の患者様が減り、医療施設の経営が厳しくなったことも影響して、当社の売上も減少。当社は8月決算ですが、例年なら最も売上の高い期間の売上が今年は前年比4割減、決算全体では前年比1割減となりました。
しかし、最も重要な課題として私が捉えたのは当社の社員と家族の不安感を払拭できるかどうかということです。
感染リスクの高い最前線で頑張っている医療従事者の方々には大変頭が下がりますが、当社の社員たちもその最前線に出入りして、納品や機器の修理を行っています。感染リスクへの恐れを感じないわけがありません。
彼らは、そして家族は、どんな気持ちでいるのか。耳・鼻・喉・めまいの医療に関して社会に貢献していこうというのが我々のミッションですが、社員の心身を守れなければ本末転倒です。
社員を守りたい、その気持ちでいっぱいでした。
新型コロナウイルス感染症対策の起点として、社内で総務や企画のメンバーを中心に対応本部を立ち上げました。
すぐに実行したのは、直行直帰やテレワーク、オンライン会議の推進と、社員へのメッセージの発信です。 毎月発行している社内報では、家族向けのメッセージも発信しました。我々はこの仕事により社会に貢献しているのだから最大限にリスク管理をして頑張ってほしいという内容です。それとともに、社員用にフェイスガードや手袋などの感染対策グッズを支給しました。
経営理念を明確にし、今後10か年の計画を立て、行動しようと準備している最中にコロナ禍となりました。
新たにwith コロナというキーワードを組み込み「みみ、はな、のど、めまいのエキスパート集団として世の中を変える」を経営理念に「誰にどんなお役立ちができ、世の中に認められるかを考え、製品・サービスの開発に取り組む」などを行動理念に打ち出しました。
さらに、毎年9月に開催している社員総会は、東京、大阪、名古屋、仙台、福岡の全社員70名をオンラインで繋いで実施。経営理念や基本方針、行動理念を共有するとともに、当社の新型コロナウイルス感染症対策への満足度も高く、ともに行動していこうという手応えを感じました。
事業面では、まず、排出する空気の感染リスクについて、ユニットにフィルターを設置するなど仕様を変更。 また、耳鼻咽喉科の医師がつける専用のフェイスシールドや看護師さん向けのフェイスシールド、並列で吸入器を使用する患者さんを仕切るパーテーションなどを製造し、ハードとソフトの両面からリスクを低減させ、医師と患者双方のリスク管理サポートをしています。
当社のショールームは、医師やバイヤーが来て製品を見ていただくための場所でしたが、密になってしまうので発想を切り替えて、このショールームをスタジオとして、ここから製品の情報を動画などで発信することにしました。
その後、12月から始めているのは説明会を開催して医師の方々にオンラインで集まっていただき、こちらから動画で説明するニューノーマルの営業スタイル。 訪問禁止の中の営業活動ですでに個別にはZoomなどを活用していましたが、このような大掛かりな学会展示会などでもオンラインをさらに活かしていきたいと考えています。
私たちは、みみ、はな、のど、めまいのエキスパート集団を目指しています。そのためには、開発力が重要であり、2020年9月に技術センターを新設し今後の軸とすべく力を入れています。
1年以上前から準備してきたので、思いがけずコロナ禍での大規模な投資となり方針転換も考えましたが、ここで製造と開発力の向上に注力し、新たな挑戦を続けていくべきと考え推進を決めました。
現在スタジオとして活用しているショールームでは、新たに「ENT +」というコンセプトを打ち出しました。E(ear)N(nose)T(throat)という我々の事業領域において、専門家や医師と連携し、プラスに向かう場所と位置づけたものです。
リアルな実機とバーチャルなVRレイアウトを駆使した耳鼻咽喉科の企画提案の場として、技術センターと合わせてウィズコロナでの新たな展開に挑戦していきます。
そして、東京2020大会に向けて、医療業界に携わる当社では何ができるだろうかと考えた時、まずは医療従事者の方々の様々な負担を鑑みながら新たな方法で開催するという前提で、日本では当社のみが販売している鼻血止血用品「チケア」を出場する選手をサポートする商品としてお役立てていただきたいと思っています。鼻血が出た時に日本ではティッシュペーパーを詰めることが多いですが、ティッシだけではリスクもあり、フランスで販売実績のある本商品は天然海藻由来で、鼻出血された方を応急処置できる商品です。
このような小さなことをはじめ東京2020大会に関われたら嬉しく思います。