※企業概要は受賞当時(2021年)の内容です。
●先代の急逝による事業承継時の難題を、発想の転換で克服。帰宅後のフットケア市場を新たに開拓し、靴下だけでなく快適な生活を創造する企業へと進化したこと。
自分を変え、会社を変え、ビジネスモデルを変える「勇気」。
社長就任時の四面楚歌をバネに、自分も会社もチェンジして成長。
職人気質の父が創立した当社は靴下の製造販売業を営み、2代目社長の兄が時代の変化に対応できる企業へと事業の再編成を進め会社を牽引していました。しかし2004年、その兄が病気で急逝。常務だった私が後を継ぎ、3代目社長になって1週間のうちに、金融機関からの貸し?がし、取引先である協力工場からの仕掛品の即時買い取り要求、そして社員たちの相次ぐ退職という事態が発生しました。
まさに冷や水を浴びせられた思いで眠れない日々が続きました。自らを省みれば、常務時代は経営陣としての自覚もなく、先代社長に舵取りを任せっきりにしていた事実があり、その結果が社長としての力量を期待されていないことにつながったと痛感。自分も会社も変わるしかないと決意を新たにしました。当時38歳、中途半端な戦略では絶対に通用しないと覚悟し、四面楚歌の中、信用される企業および社長となるためチャレンジを始めました。
靴下業界はニーズが多様化する一方、輸入品も大量に参入して来ており、当社の設備では対応しきれないと考え、アパレル業界でも多くの企業が進めていた生産設備を持たない製造業になることを決断。
そのためには、付加価値を創造するしか活路はありません。次に、商品定義を転換。従来は肌着売り場にあった靴下を、雑貨売り場やECサイトに切り替え、それによりお客様や価格帯が変わると考えました。
下町の靴下製造業から、足元の悩みを解決する企業に生まれ変わる企業像を描きました。そして、商品の時間軸の転換。一般的に靴下は「いってきます」から「ただいま」までの活動的な時間帯の商品ですが、当社は「ただいま」から「おはよう」に絞り、家でくつろぐ時間帯の商品を拡充することに。帰宅後の時間を入浴やお風呂上がり、就寝時など細かく区別し、そこに疲労回復や美脚など健康や美容に対し、高いパフォーマンスが発揮できる商材として 靴下をメインに考えていきました。ニッチのトップシェアメーカーを目指すことにしたのです。
いずれの取り組みも四面楚歌からスタートした私にとっては、一つ一つが挑戦であり、04年度から愚直に諦めることなく続けることで、20年度の売り上げは4倍強に増えました。また、私自身は社長として「物事の成否は常に50%」を行動指針として貫いています。
「キモチデザインカンパニー」をビジョンに掲げてさらなる成長を目指し、靴下にとらわれることなく、サステナブルやニューノーマルな生活様式、女性特有のお悩みなどに対応できる、新たな商品の企画・開発を進めています。