※企業概要は受賞当時(2017年)の内容です。
●リーマンショックにより売上が半減。この危機に際し、既存事業と競合するリスクのある新事業の展開と、赤字に陥りながらも成長が見込める中国への工場建設と市場参入に挑戦。その結果、リーマンショック後に離れた顧客を取り戻すと同時に新規顧客を獲得、シェアの維持・拡大に成功したこと。
熾烈な競合の中、
自社の過去モデルを
否定する「勇気」。
リユース事業立ち上げを断行。社運をかけ中国市場へ進出
当社は、エンジン鋳造等で用いられる金型の中子抜き油圧シリンダーや、製鉄所の圧延ライン等で使われるロータリージョイントの製造を手がけています。高熱や高圧、高回転といった過酷な使用環境でもトラブルが発生しない高品質と耐久性で、自動車メーカーや金型メーカー、製鉄会社等から高い評価を得てきました。
2008年のリーマンショックは、当社にとって過酷な試練でした。売上高は半減。当社のみならず業界全体が同様の状況で、結果、熾烈な価格競合に陥りました。そんな中、私が下した決断が「製品リユース」という新たなサービスの展開と、リーマンショックの最中で唯一の成長市場だった「中国への工場進出」です。
リーマンショック以前は、お客様が金型を更新する時にシリンダーも新調してもらえましたが、予算削減のため一部のお客様は古い金型からシリンダーを外し、メンテナンスもせず新しい金型に取り付け始めました。
安全面から見て望ましくはありませんが、逆にそこにニーズを見出したのが、損傷部品の交換で品質を保証する「リユース事業」です。
「新品の受注減につながる」と従業員から反対の声があがりました。「他社がやらないことこそやるべき」と説得し、自社既存事業との競合を覚悟で押し切りました。新製品に比べ、価格は新品の40~50%程度。
更新金型分も含めたトータルでの低価格は、初期コストだけが安い他社の価格を打ち破る競争力があります。 顧客の奪還・新規獲得に成功し、国内の顧客シェアは現在75%に達しています。
大型の景気対策を実施していた中国では、当社の製品への需要も拡大し、代理店を通じた輸出で対応していました。現地化すると本社売上が減るという、社内でのジレンマもあったからです。しかし、動かないと現地競合にコスト・納期で市場を奪われてしまう。そこで赤字の中、3.5億円の投資で現地子会社設立を決断。
中国出身の従業員と、上海に留学経験がある私の弟を中心に進出地を調査し、3カ月で立地等を決め、全社員で立ち上げを支援しました。
模倣防止のため、重要部品は日本から供給し、高品質を維持。黒字化を達成する一方『中国に工場があるなら』と国内企業の取引が増加する効果も出ています。勝負をかけた新たなモデルが、やっと少し見えて きました。