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勇気ある経営大賞

受賞企業紹介

※企業概要は受賞当時(2017年)の内容です。

第15回 優秀賞

協栄産業株式会社

代表者名
代表取締役社長 古澤 栄一
所在地
栃木県小山市城東2-32-17(都内:中央区)
創業
1985年(昭和60年)
従業員数
114名
資本金
1,000万円
事業の
概要
合成樹脂の再生加工・販売
ホーム
ページ
http://kyoei-rg.co.jp/
受賞理由

●従来、ペットボトルリサイクル原料はプラスチック製品の加工原料の増量材としての用途しかなく、1度しかリサイクルできなかった。将来にわたって資源を循環させるため「再びペットボトルに戻す技術が必要不可欠」と決意し、何度でも再生可能なペットボトルのリサイクル技術を確立したこと

企業紹介

限りある資源。
理想を胸に抱き、
進み続ける「勇気」。

ペットボトルの「ボトルtoボトル」を日本で初めて実用化

 当社は1985年に創業した、ペットボトルのリサイクルを手掛けている会社です。94年以降、ペットボトル飲料が爆発的に増加し、リサイクルが追いつかずゴミとしてあふれる懸念がありました。加えて、当時のリサイクル原料は、プラスチック原料の増量材としての用途しかなく、1度しかリサイクルできませんでした。そこで私は、将来にわたって資源を循環させるため「再びペットボトルに戻す技術が必要」と決意。空きペットボトルは資源ではなく「ゴミ」だと認識していた人々の意識を変え、新たな石油を必要としない「究極の資源循環」に向けた闘いが始まりました。

 夢を実現するには工場が必要で、工場を作るには銀行からの資金が必要です。また安定的な顧客はもちろん、国の認証も必要になります。年商約20億円で建設費25億円のプラント計画を銀行に訴えた時、また工場予定地の住民から「リサイクルの名を語ったゴミ処理施設」と猛反対にあった時、私は今後の日本におけるリサイクル産業の必要性、成長性、将来性を示し、理解を得ることに努めました。

 結果、ようやく新工場竣工にこぎつけたのですが、次に必要なのは「不純物の完全除去」「物性低下の克服」という技術的課題の克服と、ボトルtoボトルの安全性を示す採用実績。私たちはある大手飲料メーカーの安全性検査を受けることになりました。それは、極めて過酷な検査でした。

 安全性を確認する手法としてメーカーから提示されたのは代理汚染試験と呼ばれる実証実験。意図的に毒物で汚染させたペットボトルをプラントに投入し、完全に毒物を取り除けるかを確認するテストです。失敗すればプラント自体が汚染され、何カ月も稼働を停止させることになり、事業自体が崩壊します。社員たちと話し合い、それでも「やろう!」と実施に踏み切りました。そして、不純物の完全な除去が確認されたのです。その時の思いは、語り尽くせません。

 このメーカーを皮切りに当社製品は飲料メーカー数社に採用され、現在では年間15億本以上のリサイクル飲料ボトルが製造されています。また、原油からペットボトルを作る場合と比べてCO2を63%削減できるため、海外企業からの受注も増えてきました。「次世代に地球の限りある資源を残す」という当社の理念に、少しずつ近づいている実感があります。

限りある資源を未来の子供たちへ。
「ボトルtoボトル」の国内循環を根づかせたい。

コロナ禍で飲料やアパレルメーカーからの需要が急減。
多くの在庫を抱える中でも、社会インフラとして決してリサイクルの環を止めない

現代社会の生活において大量に使われているペットボトル。当社では、物性劣化をさせずに不純物を除去し再びペットボトルの原料としてリサイクルする「ボトルtoボトル」を手がけています。

天然資源がほとんどない日本において、「使用済みペットボトルは毎日街から湧き出る良質な都市油田」であり、それを貴重な資源として蘇らせる事業を営んでいます。当社のお客様はペットボトルを容器として使用する飲料メーカーや石油を使用しない環境に優しい素材として、欧州サッカークラブのユニフォームをはじめとする衣類などにリサイクル原料を利用するアパレルメーカーなどです。

2020年1月頃から「新型コロナウィルス感染症は未曾有の影響を与えるのでは」と危機感を抱いていました。4月の緊急事態宣言以降、業界には予想以上に大きな影響が現実のものとなりました。外出自粛により家で過ごすことが多くなったことからアパレル需要が大幅ダウン。さらに4月、5月の行楽や学生生活などがはじまるシーズンで外出できなくなった影響で、自販機やコンビニでのペットボトル飲料の購入が急減してしまいました。飲料メーカー向けに販売するペットボトルのリサイクル原料は需要の時期より3カ月ほど前倒しで製造するため、4月以降の需要減で当社の在庫がパンク寸前に。さらにコロナ禍を受け、リサイクル原料と競合する原油由来原料の価格が急落しました。

環境に優しいリサイクル原料とはいえ、価格差が大きければ経済合理性の観点から使われなくなってしまいます。一方、市町村が回収したペットボトルを当社が買い取る金額は年2回の入札で決定され、どんなに大きな市況変動があったとしても、その価格が半年間を通じた仕入額になってしまいます。新型コロナの影響でマーケットが縮小する中、さらに原油価格が下落する中、仕入値は変わらないにも関わらず、リサイクル原料の販売価格は引き下げざるを得ない状況に陥りました。

そのような厳しい事業環境下でも、日々家庭などから排出される大量のペットボトルを回収しない訳にはいきません。私たちの経営に影響があるからといって市町村から引き取らないことになればペットボトルがゴミとして街にあふれ、社会混乱が起こってしまうからです。私たちが担う仕事は社会インフラだという思いを改めて強く抱きました。

どんな時でもリサイクルの灯を消してはいけない、それが当社の使命そのものです。

リサイクル原料の持続的な国内循環に向け、最善を尽くす

原油価格の下落により価格差が生じたからといって、リサイクル原料から原油由来原料に戻すのではなく、持続的にプラスチックを循環させる仕組みが必要だとメーカーにも呼びかけ、協力してもらいました。コロナ禍にあっても迅速に協力を得られたのは、ペットボトルを国内で循環させる重要性を共有していたからです。

2008年頃、中国が大量の使用済みペットボトルをプラスチック原料として日本から輸入していました。日本国内でも、「ボトルtoボトル」の当社の取り組みは評価できるものの、中国でリサイクル原料となるならば十分価値があるという考えが大勢を占めていました。私自身、「そんなことはない」と思っていましたので、国内循環の重要性を理解してもらうために何が必要なのかを考えました。

その時に注目したのが、二酸化炭素(CO2)排出です。しかし、国内循環が本当にCO2排出削減となるのかという検証データを探し求めたところ見当たりませんでした。それならば、自分たちで作っていこうとシンクタンクと一緒に調査し、国内で循環させることは、原油由来原料と比較してCO2排出量を63%も削減できるということを実証しました。国内循環をやればやるほどCO2排出削減が可能というわけです。2010年に発行された「ものづくり白書」にも、この効果が掲載され当社の国内循環の取り組みが、CO2排出量を削減するということを多くの方に知っていただきました。

こうした取り組みがあったからこそ、コロナ禍でもメーカーをはじめ多くの方から協力を得られたのだと思います。常に最悪を想定し、その中で最善を尽くす、そうであればこそ、どう対処していけば良いのかが見えてくる、そう信じて突き進みました。

国内循環の確立のために挑戦を続ける

ここ数年、東京2020大会の開催、SDGs(持続可能な開発目標)への機運高まりを受け、「ボトルtoボトル」の需要は大きく伸びるだろうと見込んで、2019年から年間売上の3割近い金額を投じて設備投資をおこなってきました。コロナ禍で見込みは大きく変わり、この影響は数年続くでしょう。

一方、飲料メーカーやアパレル業界だけでなく、欧米の家具メーカーからもポリエステル素材としてペットボトルのリサイクル原料を使いたいという声をいただいています。コロナ禍であれ、資源を循環させるための設備投資は不可欠という認識に立ち、この歩みを止めることはありません。

2018年には石油資源の利用抑制とCO2削減効果に加えて、ものづくりで重要なコスト低減が図れる新たな仕組みとして、世界初の生産技術となる「FtoPダイレクトリサイクル」を実現しました。従来は使用済ペットボトル→フレーク→ペレット→プリフォーム→ペットボトル成形という工程でしたが、フレークからダイレクトにプリフォームにしてペットボトルを作る技術を開発。工程が減ると熱を加える回数および工程ごとの輸送の回数も減るため、CO2排出削減とともにコストダウンも図れます。これは世界初の技術で特許も取得しており、2018年に世界第1号、2019年に世界第2号の設備を東日本FtoPファクトリー(茨城県笠間市)に設置・稼働させました。

SDGsの目標の中に「つくる責任 つかう責任」とあるように、リサイクルは企業の社会的責任であり、消費者の方も含めて一人ひとりのリサイクルへの意識を高めていくことも必要です。2020年1月には、東レと「&+(アンドプラス)」という、使用済みペットボトルを原料としたリサイクル繊維ブランドを立ち上げました。この一環としてユニクロと共同開発したペットボトルリサイクル繊維は高機能&高品質を実現し、アスリートのユニフォームなどに使用されています。

こうした取り組みを進める中で、例えば毎年国民体育大会が開催されていますが、2020年の茨城大会では当社のリサイクル繊維がメダルのリボンなどに採用されました。国民体育大会は、開催する都道府県が毎年変わり、全国から多くの選手の方が参加されます。大会で使用されるユニフォームやボランティアベストなどを通じて、開催地の市民の方、参加する選手の方に限りある資源を大切に使おうというメッセージになるはずです。こうした活動の積み重ねが国内循環の確立につながります。

「ボトルtoボトル」をはじめとする国内循環とリサイクルを定着させることで、限りある資源を次の世代に残していく。そのために挑戦を続けていきます。

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