※企業概要は受賞当時(2013年)の内容です。
●縮小の一途を辿る業界において打開策を探るべく、7年前に自社デザインの商品開発に挑戦。在庫リスクを抱えながらも粘り強い挑戦を続け、数多くのヒット商品の開発に成功。下請けからの脱却の実現と、多品種少量生産における生き残りの道を切り拓いたこと。
●刺繍ワッペンのパイオニアを目指し、膨大な資金と時間を要するキャラクタービジネスに挑戦。蓄積した技術力を武器に、ディズニーやサンリオなど、数多くの有名キャラクターのライセンス取得に成功し、業界における先進的事例を築き上げたこと。
同社は、ロゴや社名等の刺繍や刺繍ワッペンを製作する刺繍加工メーカーとして、日本を代表する企業や、オリンピックナショナルチームなどに対して、創業以来、豊富な実績をあげてきた。
古くから刺繍業界は、アパレルメーカーの下請けとしての役割を担っていて、いわば受注産業だった。しかし、メーカーの海外生産に拍車がかかった影響を受け、平成17年には同社の売上はピーク時の約70%にまで落ち込んでしまった。
ピンチの中、既存の枠を超えた刺繍関連の新規ビジネスを模索した結果、自社企画商品の多品種少量生産とインターネット販売の着手を決意。デザイナーの採用自体初めてであったが、素人ながらも熱い想いを持った女性を、面接したその場で採用。社運をかけた挑戦は、デザインに全くの素人であった2人でスタートした。自社企画は売れ残りリスクを抱えることを意味し、幾度も大量の在庫を廃棄することがあった。しかし、勇気を持って開発を続行したことで、幅広い年齢の女性に共感を生み、ヒット商品が数多く生まれ、今では同社の事業の柱となった。
刺繍業界で自社製品を持つオンリーワン企業としての飛躍は続く。平成21年、初となる展示会で、自社開発した携帯電話用刺繍デコシールを出展したところ、雲の上の存在であるサンリオから、ハローキティの商品化の提案が持ち出される。まさに、同社にとっては夢のような話だが、多額のライセンス料の発生や短納期への対応など、キャラクタービジネスの参入には多くのリスクが伴う。しかし、社員全員での取り組みによって1年後にライセンスを取得。その後も挑戦を続け、ディズニーやポケットモンスター等、8社からライセンスを取得した。キャラクター商品に個人ネーム刺繍を入れて販売している会社は他にはなく、同社の独占販売商品として多くの消費者に支持されている。
将来は、日本初となる刺繍ウェブシステムの開発を成功させ、アパレル業界のデファクトスタンダードに成長させること、刺繍名入れサービスの展開による消費者への貢献を視野に入れている。小さな企業の大きな挑戦はとどまることを知らない。
多くの方々の支援に感謝
栄誉ある賞を受賞したことは大変光栄であると同時に、今までしてきた事がすべて報われた思いである。昭和39年創業以来刺繍を真摯に取組んできた事、初めてのキャラクタービジネスに社員一丸となって挑戦してきた事等の結果だと受け止めており、多くの方々の支援に感謝したい。次は個人向け刺繍ネーム入れサービスに取り組みたいと考えている。ネームは一点ものである上、顧客が出来映えを想定しにくく、普及していないのが実情。現在、完成時シュミレーションが可能なWEB刺繍受発注システムを東京都助成により開発しており、3年後には主要アパレル・小物通販サイトと接続し、刺繍ネーム入れのデファクトスタンダードにしていきたい。
(株式会社ミノダ/箕田 順一 社長)