※企業概要は受賞当時(2011年)の内容です。
●パッケージなどの紙器製品の印刷加工を主力としていたが、自社のリスクでオリジナルの紙製品開発を決断し、有能な外部デザイナーと自社の技術を融合した「かみの工作所」プロジェクトを発足。デザイン性に優れ付加価値の高い製品の開発と販売に成功したこと。
●オリジナルの紙製品は、繊細さや色遣い・多様な用途に使える斬新なデザインが特徴で、国内外のメディアからも注目され、とりわけ海外の美術館等から高い評価を受けて受注を伸ばし、従来からの受注型業務にとって代わる新たな経営の柱に育てあげる目途をつけたこと。
典型的な印刷の受注下請工場で、クライアントの仕様どおりに加工・納品するだけでは利益確保が難しく、主力であったオフセット印刷も高度な技術があっても絶えずコスト削減を求められるなど、クライアントの環境次第という外部要因に経営が大きく左右されていた。
紙の包装紙やパッケージは、「中身を取り出したら捨てられる」もので、捨てられないためには、「紙が主役になる」製品が必要と気付く。紙を印刷加工するのではなく、発想を転換して、紙加工にデザインという付加価値をつけ、オリジナルの紙製品として販売しようと決意した。
受注製造であれば、言われたとおりに完成させれば心配はない。リスクを負うこともない。しかし、開発やデザイン設計から製造・販売までを行うと、多くの試作品負担やお客様対応、製品管理まで、さまざまなリスクを負う。工場の現場は保守的で、デザイナーとの共同作業は困難を極めた。しかし、何十年も培ってきたパターン技術やノウハウを駆使して、デザイナーの創造力と融合する作業を繰り返し、「かみの工作所」プロジェクトは完成する。
出来上がった製品は、展示会発表やメディアへの働き掛けを通じて、国内外に広くアピールした。紙=日本というイメージもあって、繊細さや独特の色遣い、多彩な目的に使えるデザインの良さが注目され、フランスのルーブル美術館やニューヨーク近代美術館などのミュージアムショップからも引き合いが相次いだ。
現在は、国内300店、海外100店を視野に入れて販路を拡大中であり、会社の売上構成比も5割に達する目途がつくなど、新しい印刷会社のビジネスモデルを模索している。デザイナーと自社の匠の技の融合により生まれる独自の製品に、意匠登録をかけ、完全オリジナルな製品の強みを生かし、さらなる成長戦略を描いている。
「紙」の可能性を追求する
デザインに特化した非常に感覚的な取り組みがビジネスとしても成り立つことを評価して頂き、嬉しい限りです。今まで誰も見たことのない、美しい紙のプロダクト開発を通じて、関わってくれたすべての人と「ハッピー」を共有していきたいです。
(福永紙工株式会社/山田 明良 社長)