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勇気ある経営大賞

受賞企業紹介

※企業概要は受賞当時(2011年)の内容です。

第9回 優秀賞

株式会社旅籠屋

代表者名
代表取締役 甲斐 真
所在地
東京都台東区寿
創業
1994年(平成6年)
従業員数
84名
資本金
1億円
事業の
概要
ロードサイドホテルチェーン「ファミリーロッジ旅籠屋」の経営
ホーム
ページ
https://ssl.hatagoya.co.jp/
受賞理由

●シンプルで自由な旅行スタイルを提案し、欧米にあるMOTELに倣い、車で旅する人が誰でも気軽に利用できる、日本初の素泊まりロードサイドホテルの事業化に成功。創業時の理念である「快適・シンプル・周囲への貢献」を重視し、様々な規制に対しても、手間を惜しまず、真摯な説明と対話を繰り返し、正攻法で一つ一つ実現していったこと。

●高速道路のSA・PA内における宿泊施設の必要性を長きにわたり提言し、日本道路公団の分割民営化を契機に、実現化に向け本格的に着手。地元自治体や諸官庁との調整に多大な労力と時間を要したが、平成20年に2店舗をオープンし、高速道路の利便性に大きな可能性を切り拓いたこと。

企業紹介

起業のきっかけは、留学帰りの友人から聞いた「アメリカでは安くて広く気軽に泊まれるモーテルが大変便利だった」という話だ。当時まだ会社員だった社長が、何故そのような業態が日本に無いのか?と疑問を持ち、事業を起こす決意をした。
同社は、欧米にあるモーテルに倣い、食堂・温泉・売店・娯楽施設などの付加的なサービスを排除し、宿泊機能に特化。これにより、家族4人で一泊1万5百円~というリーズナブルな価格で宿泊できる、今まで日本に無い新しい汎用ロードサイドホテルチェーンを構想し、3年後、遂に日光鬼怒川に第1号店をオープンさせた。1号店の黒字化により、2号店の設立に向けた銀行による資金調達を図るも、同社の信用は思いのほかまだ低く実現できなかった。そのような中、開設後間もないグリーンシート市場へ登録。個人投資家説明会で事業説明を行い、小口ながらも多数の融資を受けられた事が、その後の多店舗展開への弾みとなった。ビジネスホテルや観光ホテルとの差別化を行い、1人でも家族でも同じ部屋に宿泊できる同社の小規模な施設は、ニッチ市場でのオンリーワンと言える。
また同社は以前より、高速道路は日本最大最長の幹線道路であり、安全かつ快適な長距離ドライブのため、サービスエリア内の宿泊施設の必要性を強く提言していた。日本道路公団の分割民営化後を契機に、新ビジネスとして実現化に向け本格的に着手。地元自治体や諸官庁との調整に多大な労力と時間を要したが、3年後の平成20年に2店舗をオープンする事が出来た。稼働率は平均70%以上と高く、高速道路の利便性や活用方法に大きな可能性を切り拓いている。
フランチャイズ展開をせず直営出店を基本とするため、展開スピードは緩やかながらも、高速SA・PA内を含め全国30数店にまで業容拡大を図っている。利用者は延べ120万人を突破しており、同社が提案する「シンプルで自由な旅行スタイル」は、確実に拡がっていくであろう。

  • 高速道路内への初出店(壇之浦PA店)

  • 付加的なサービスを排したラウンジ

  • 全店統一されたシンプルな客室

受賞コメント

「シンプルで自由な旅と暮らし」を提案し続けます
ライフスタイルや生活の質の向上に直接大きな影響を与えるサービス業の価値に注目いただいたことを嬉しく思います。全国への出店を実現し、年配のご夫婦を含め多様な方々に気軽に活用いただく基盤施設となることを目指しております。

(株式会社旅籠屋/甲斐 真 社長)

手軽に泊まれるミニホテルを全国展開し、
移動の自由や人々の生活を支える
社会インフラを目指す。

新型コロナにより稼働率と売上は急降下、社会情勢は向かい風

アメリカでは、モーテルという誰もが気軽に利用できる素泊まりの安いミニホテルがあり、その数はコンビニよりも多い。車で移動しモーテルに泊まりながら家族で頻繁に旅行を楽しめるようなライフスタイルを支える、自由で経済的な宿泊施設です。

このような宿が日本中にできたら日本人の旅行スタイルがもっと自由になり、自立した楽しみ方ができるのではないかと考え、前例のなかった日本でのモーテル経営に乗り出しました。それが当社旅籠屋のファミリーロッジ旅籠屋です。

1995年に1号店の日光鬼怒川店をオープン、2021年4月現在では全国77カ所にあります。「ファミリーロッジ旅籠屋」のお客様はほとんど国内在住の方でリピーター率が6割超と高いのも特徴。広告宣伝はあまりせずに、口コミメインで利用者が広がって順調に発展してきました。

しかし、2020年2月後半から新型コロナ感染拡大の影響が出始め、3月に稼働率も売上も急降下、4月は稼働率5割減、売上7割減。感染の第1波は稼ぎ時のゴールデンウィークを直撃し、第2波は夏休みと重なり売上は壊滅的な状態に。秋は一旦GoToトラベルで回復したものの第3波到来の2021年1月?2月はまた最低の売上にまで落ち込みました。

ファミリーロッジ旅籠屋は予約客が9割以上ですが、キャンセル続出という平時ではありえない状況に見舞われ、さらに、自治体から休業要請もあり、近所の住人の方からの抗議の声や、支配人らの不安の声も挙がりました。

なくては困る社会インフラだからこそ、全店通常営業を続ける

コロナ禍でも、「自由な旅」=「移動の自由」を支える社会のインフラとして、全店舗が1日も休業することなく営業を継続しています。ファミリーロッジ旅籠屋は必須の社会的基盤である、これが絶対的なポリシー。コロナ感染対策を徹底しながら、平常心で全てのお客様を受け入れる方針を掲げています。

なぜならファミリーロッジ旅籠屋を必要としている方がいるからです。例えば、テレワークができるのは一部の人だけで、世の中には現場に行かなくては仕事ができない人も多く、そういう方々には宿泊場所が必要。また、医療従事者の方々に対する偏見があり、自宅に帰ることが困難であるなどひどい状況が見受けられたことから、私どもは病院に呼びかけて医療従事者の宿泊を受け入れたところ、大変喜ばれました。

さらに、これまではカップル向けの風営法営業ホテルとの混同を警戒して昼間の利用を禁止していましたが、部屋が広くネット環境も整備しているのでテレワークに使いたいという要望があり、2020年3月からデイユースも実施。1人使用限定で、9時?17時まで1日3千円、売上としては微々たるものですが社会のニーズに応えるという意味では必要だと考えて導入しました。

そもそも、天災や何かが起きた時に宿泊施設は被災者の命を守るシェルターだという想いが大きく、2011年の東日本大震災の時に東北の各店舗は多くの被災者の方を無償で受け入れました。その時に停電で困った経験から、その後オープンする店舗には全てプロパンガス式の非常用発電機を完備しています。法的義務はありませんが、これはのちに岡山の水害時や、函館の大停電の際にその地域の店舗周辺の方々のために大変役立ちました。

そして、コロナ禍で業績が厳しい中でも2021年4月に77店目となる山形県庄内店をオープン。これは3年がかりの案件で、自治体からの出店要請に応じたものです。人口減少で悩む自治体の町おこしに常設の宿泊施設は必須であり、ファミリーロッジ旅籠屋は規模感などが条件に適合し、国の補助金等を使いながらやっと実現しました。コロナだからと止めるわけにはいきません。同様に町おこしを趣旨とした自治体からの出店要請の相談は、現在でも日々多く寄せられています。

つまり、コロナ禍でも休まず営業を続けているのは、従業員の生活を守るためと同時に、当社の掲げる社会インフラとしての使命感からなのです。先行きが不透明な今は新規出店を見合わせていますが、今後、状況を見ながらさらに具体化も考え、事業拡大を図っていきます。

自転車で日本一周できるくらいの店舗網を目指し、個人の移動の自由を支え続ける

もともと全国何店舗達成とか売上何億円達成など数字の目標のために起こした会社ではなく、車社会のインフラ整備に貢献したいという将来に向けてのビジョンを抱いてきました。従って、少なくとも全都道府県に1軒ずつ旅籠屋の店を開設し、日本全国ある程度の距離の中にくまなく、分かりやすく言えば旅籠屋に泊まれば自転車で日本一周できるくらいの店舗数を目指したいと思っています。

1970年代のオイルショックの時に、不要不急のマイカー旅行自粛というキャンペーンが張られました。今のコロナ禍でも然りですが、個人の自由を制限するべきではないというのが私の考えです。文化を守るとか、一人ひとりの生活や尊厳を守るという意識をもっとしっかりと持ってほしい。個人の意志よりも周りの顔色を気にしてしまう、そこが日本人の弱いところだと思っています。同調圧力に屈せず、前向きに力を合わせて乗り越える。そんな日本の姿をぜひ見たいと期待しています。

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