※企業概要は受賞当時(2009年)の内容です。
●金型を使わず、印刷技術によって樹脂シート上にレンズを印刷する画期的な技術を確立。この3D技術(レンズ効果による立体的な視覚)は他社の模倣が困難なため、装飾パッケージのほか、入場券・定期券等の幅広い用途が見込めること。
●トップセールスで海外市場の開拓を展開、昨年ドイツでの展示会出展以降、すでに20カ国を超える輸出実績をあげ、成長期待の大きい海外市場開拓の好事例となったこと。
スーパーの折り込みチラシ印刷は長らく技術的な進化とは無縁である。よって、価格競争は熾烈である。少子高齢化による人口減少社会では印刷需要は減る一方である。インターネットの拡大が紙の需要減に追い討ちをかける。不況になれば底が見えない。「紙に印刷するだけでは生き残っていけない。」この強い危機感が、誰が見ても凄い、とうならせる画期的な発明品を生み出す原動力となった。
同社が開発したハニカム・アレイ・レンズ・シート(HALS)の原理は、樹脂シートの上に印刷技術でレンズとなる樹脂を塗布する。それに紫外線を当て、瞬時に固まらせ、レンズに仕上げていく。シートの裏側の平面に印刷を施し、レンズのある側から見ると、レンズ効果で立体的な視覚が得られるというわけだ。
一般的には、金型を使用し、高温・高圧下で加工するが、同社が国内・海外特許を有する技術の特長は、印刷技術でレンズを成形し、常温下で加工でき、大量・安価な供給が可能であることだ。1時間に1万平方メートルの生産キャパシティを実現している競合他社は世界に存在しない。
現在同社は、この素材をベースに、最終製品の製造受託をはじめ、素材の提供、ライセンス供与など、ビジネスの多角的展開を図っているところである。他社には同じ素材の製造が不可能なため、特に途上国において、証明書、カード、教材、パッケージなど、偽造防止の観点から、幅広い用途が見込まれる。
営業的にも特筆すべきは、海外市場の将来性をにらみ、社長自らトップセールスを務め、東奔西走の毎日で海外市場開拓に余念がないことである。昨年5月にドイツ・デュッセルドルフで開催されたdrupa展示会に出展したところ、大きな反響を得て、短期間で20カ国30社を超える輸出実績を作り上げ、同社製品のブレークスルーを早くも予感させる。高成長が見込まれる海外市場に会社の活路を見出し、積極的に打って出る姿勢は、大いに他の中小企業の良き手本となろう。