【インタビュー】SDGsで「持続不可能」から「持続可能」な世界へ(前編)


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2030年までに達成すべき17目標を定めたSDGs


2030年までに世界の課題を解決し持続可能な社会の実現を目指すSDGs(持続可能な開発目標)が2015年9月に国連で採択されました。SDGsの達成に向けて私たちに何ができるのでしょうか。環境経営を専門とし、「eco検定アワード」審査委員長を務める鶴田佳史・大東文化大学社会学部社会学科教授にお聞きました。その内容を2回に分けてご紹介します。


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すでに地球は限界を迎えている

──SDGsが採択され、7年が経とうとしています。なぜSDGsが注目されているのか、改めて教えていただけますか。

SDGsは、「誰一人取り残さない」というスローガンのもと、2030年までに17目標・169ターゲットを達成することを目指しています。2020年からは目標達成に向けた「行動の10年」が始まり、実際に行動に起こしていく段階に入っています。このままでは世界は「持続不可能」なため「持続可能」な社会に移行しなければなりません。

──「持続不可能」とは、どのような状態でしょうか。

ヨハン・ロックストローム博士を中心とした世界の科学者グループは2009年、「プラネタリー・バウンダリー」(地球の限界)という概念を提唱しました。

これは、境界(閾値)のなかであれば、人類は安全に活動できますが、境界を超えると壊滅的な環境変化が起きる可能性があるということを科学的に示したものです。すでに「気候変動」「生物多様性」「土地利用の変化」「窒素・リンによる汚染」の4項目で、危険域に進んでいます。

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「気候変動」「生物多様性」「土地利用の変化」「窒素・リンによる汚染」で危険域に進んでいる
(C)Ninjatacoshell(CC BY-SA 4.0)



気候変動問題に関する国際的な枠組み「パリ協定」が2015年12月に採択されましたが、当時は気温上昇を2度未満、できるだけ1.5度に抑えることが目標に掲げられていました。

その後、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は2018年に「1.5度特別報告書」を発表しました。温暖化の影響が「2度」と「1.5度」でどう違うかをまとめたものですが、気温上昇を1.5度に抑えたとしても甚大な影響があることが分かりました。

2021年11月に英国で開かれたCOP26(第26回気候変動枠組条約締約国会議)では、気温上昇を「1.5度」以内に抑えるということで世界は合意しました。

このように気候変動の観点からも、地球はすでに持続不可能な状態になっているといえます。気候変動は生物多様性にも大きな影響を与え、環境が悪化して「自然資本」が失われれば、人類の生存も脅かされます。


SDGsに貢献するための5ステップ

──SDGsは、エコピープルにとっても活動の指針になりますね。

SDGsには、科学的根拠に基づいた指針が提示されていますが、その方法論についてはある程度自由です。SDGsを事業や何らかの活動に取り入れようとした場合、17目標と169のターゲットだけではなく、「SDGsインデックス・スコア」に目を向けることも重要です。

「SDGsインデックス・スコア」は、独ベルテルスマン財団と持続可能な開発ソリューション・ネットワーク(SDSN)が各国のSDGs達成状況をまとめたもので、科学的根拠に基づき、持続可能な状態を数値で表しています。

2021年6月に発表された報告書では、日本は世界18位で、ジェンダー平等や気候変動対策、陸上や海洋の持続可能性、パートナーシップなどの課題がありました。

また、SDGs の企業行動指針「SDGコンパス」では、次の5つのステップを提示しています。これは企業だけではなく、すべての組織や個人の参考になる考え方だと思います。まずSDGsを理解するうえで、SDGsの目的を示した「序文」も読んでいただきたいですね。

SDGsの17目標すべてに取り組まなければならないと思いがちですが、リスクになりえるものは改善して、貢献できるものは強みを生かして取り組んでいくという視点が重要です。「選別」ではなく「共存」を志向し、試行するSDGsに期待しています。

(※)eco検定アワードとは

東京商工会議所は2008年から毎年、他の模範となる環境活動を実践したエコユニットおよびエコピープルの実績を称える「eco検定アワード」を実施しています。優れた実績を顕彰・周知することで、より多くの企業や団体、個人が、積極的に環境に関する知識を身に付け、実際にアクションをおこす一助としてもらうことを目的としています。

<参考> https://kentei.tokyo-cci.or.jp/eco/lp/people/award/index.html





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