中小企業M&A連載連載第5回「M&A成功事例~老舗企業がM&Aにより復活」


事業承継事例


これまで本コラムでは、M&AのメリットやM&Aの専門家の選び方をお伝えしましたが、最後に私どもがお手伝いした“老舗企業のM&A事例”をご紹介いたします。

成功した老舗企業のM&A事例

譲渡企業は業歴120年の調剤薬局です。明治時代に創業し、地元では信頼と実績のある薬局であり、健全な経営を続けていましたが、後継者不在を理由にM&Aによる譲渡を決断しました。

ご子息はいらっしゃったのですが、薬剤師の道に進みませんでした。4代目である現社長は、地元の医療の一翼を担っているという責任感から80才を過ぎても経営を続けていましたが、体調を崩し入院をしたこともあったそうです。体調が回復し店舗営業を再開しましたが、年齢のことを考えると心配が尽きないということもあり、ご子息と相談しM&Aによる譲渡を決意されました。

私どもで候補先を募ったところ、地元で薬局を運営する若い経営者の方が興味を持たれました。昔から地元で名の知れた薬局なら、新規に出店するよりも顧客の信頼もあり、地元に根付いて運営するにはまさに打ってつけだ、とのことで検討が進みM&Aが成立しました。このM&Aによって守られたのは120年の歴史だけでなく地域医療の安心だと思います。この薬局は若い経営者の元で歴史とともに地域の安心を守っていくことでしょう。

このように老舗企業の歴史を守る友好的M&Aはこれまでにも多く実行されています。日本最古の老舗企業である「金剛組」の1400年を超える歴史も、友好的M&Aが守りました。2005年に高松建設(現高松コンストラクショングループ)にグループ入りし、現在も日本の伝統と技術を継承し、職人の雇用を守っています。


失敗した老舗企業のM&A事例

一方で引継ぎに失敗した企業もありました。このコロナ禍がまさに始まった時、創業100年以上の老舗食品製造企業が、その歴史を守るために友好的M&Aによる譲渡を進めていました。交渉の過程で、自社の歴史や暖簾の無形資産の価値に対して、買手側の提示額に納得できず交渉が長引いていました。しかし、交渉期間中もコロナ禍の影響によって業容は更に悪化し、ついには廃業を余儀なくされました。

この件で悔まれるのは、“提示額が低い”と主張したのはこの事業に携わっていない親族だったのです。買手からの提示額は決して低いものではなく、我々専門家から見ればむしろ良い条件でした。しかし、事業環境がよくわからない第三者は一部の情報のみで意見することもあります。これは良かれと思ってのことでしょうが、当事者の判断を迷わせてしまい結果的に100年以上の歴史に幕を下すこととなってしまいました。



事業承継事例


自分が相手側の立場ならどう考えるか、も考えるべき

M&Aで譲渡するときにアドバイザーを付けることのメリットは前回ご説明しましたが、「自分が買手側であったらどう考えるか」ということも一度立ち止まって考えてみるのは如何でしょうか。

自社の歴史は社長一人が作ったものではないはずです。買手目線に立つということは、自社を譲渡したあとの会社のゴーイングコンサーン(これからの会社の未来)を考えることとも等しいです。

歴史・暖簾を繋ぐ、社員の雇用を守る、これらの点を買手目線になって考えることで、譲渡した後の会社の将来に携わっていけるのではないでしょうか。


国も友好的M&Aを支援している!

話は変わりますが、M&Aに取り組む際の補助金があるのはご存じでしょうか。

中小企業がM&Aを活用することで、地方の雇用を守る、またM&Aでその地域に核となる中堅企業を育てる、これらを国が応援しています。成長する中小企業のために「事業承継・引継ぎ補助金」が創設され、令和4年も実施される予定です。

事業承継・引継ぎ後の設備投資等の新たな取り組みや、事業引継ぎ時の専門家活用費用等を支援する内容で、補助金の上限は500万円となっています。事業承継、M&Aを検討する際は、ぜひ活用を検討いただければと思います。


最後に

本コラムでは、中小企業M&AのメリットやM&A検討の進め方、M&A専門業者の選び方についてお伝えしました。今後のM&Aマーケットは中小企業が主役になるでしょう。きっと皆様の企業もM&Aに関係することもあると思います。

友好的M&Aは会社を存続させ更なる成長を支援する有効な手段です。本コラムが皆様にとって成功だと思えるM&Aの一助になれば幸いです。

<この記事に関連するサイト>

連載第1回 中小企業M&A「実はM&Aの実態を知らない人の方が意外と多い」
https://www.tokyo-cci.or.jp/jigyoshoukeiportal/column_ma1/

連載第2回 中小企業M&A「後継者がいないなら廃業?M&Aは不要なのか!(清算と廃業の比較)」
https://www.tokyo-cci.or.jp/jigyoshoukeiportal/column_ma2/

連載第3回 中小企業M&A「後継者がいないなら廃業?M&Aは不要なのか!(清算と廃業の比較)」
https://www.tokyo-cci.or.jp/jigyoshoukeiportal/column_ma3/

連載第4回 中小企業M&A「成功する友好的&Aは専門家選びから(専門家の選び方)」
https://www.tokyo-cci.or.jp/jigyoshoukeiportal/column_ma4/

連載第5回 中小企業M&A「M&A成功事例~老舗企業がM&Aにより復活」
https://www.tokyo-cci.or.jp/jigyoshoukeiportal/column_ma5/




お電話でのお問い合わせ

03-3283-7724

中小企業部
平日:9:30~17:00