<事業承継事例No.5>【【オーナー経営者のための事業承継】ファンドを選択した事例(後編)


事業承継事例


~親族・従業員、第三者承継(M&A)でもない、“ファンド”という選択肢~
国境と世紀を越えた中小企業の事業継承とその前後
-SVPジャパンの事例・後編-


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ファンドがまず何をするのか?

SVPの社員のみなさんとの初対面の場で溢れ出た率直な疑問にもあったように、事業承継ファンドがオーナーになって何をするのか?は気になるところです。

では、新しいオーナーになったTOKYOファンド(JPE)が何をしたのか?ここでは、その一端ですが、ご紹介いたします。 JPEがSVP社のことを想いながら取り組む仕事は、株式の譲り受けが決まる前、既に、①『後継社長を探す』ことから始まっています。

そして、株式譲受後は、まず、目の前の課題を速やかに解決するために、②『管理体制を整備・強化する』ことに着手しました。

さらに、将来を見据えて、③『人材採用の体制を構築する』 ④『デジタル化を進める』といった、中長期の成長戦略や施策に取り組んでいます。





“トップ”を見つける

まず、何よりも後任の社長が決まらなければ、会社の“軸”が定まりません。社内に適任者がいない場合、JPEが社長を探してきて派遣します。JPEでは、意向表明がオーナー経営者に受け入れられたタイミングから、SVP社の社風や事業戦略を常に頭に描きながら、後任の経営者探しを進めていました。その過程では、小笠原社長が語る“新社長”のイメージとして『これからの時代を担うには40代かな。』というつぶやきも意識して探し続けていました。

今回、社長に迎えた橋本雅氏と出会うまでには、約6カ月の時間をかけ、数十人の候補者との面談を実施しました。ようやく巡り会えた橋本氏は1973年生まれで当時47歳。国内外の事業会社でのビジネス経験、経営戦略立案や戦略マネジメントの経験が豊富で、ベンチャー企業の経営者としても苦労してきた方です。大企業の組織もベンチャー企業の運営もわかる人材ゆえ、組織運営はもちろん、デジタル化への対応力等、これからのSVP社に必要な要件を満たす人材であると考え、代表取締役社長として迎えました。

橋本社長自身は、就任早々に全社員との面談を実施したうえでSVP社の将来ビジョンを描き、中期経営計画に落とし込み、全社員と株主とも共有したうえで、経営者として本格始動しています。


変えること”と“補うこと

SVP社に限らず、中小企業のオーナー経営者一人でできることは限られており、中小企業ならではの先送りされた課題は、どの会社にも山積しています。一方で、成長や収益の伸びしろや改善余地が様々あるのも中小企業ならではです。 変えるべきものを変える、足りないものを補うという観点から、特に、コロナ禍での働き方も大きく変えざるをえないなかで、人事労務を中心とした管理体制について会社全体を俯瞰しながら、細かい作業と改善を積み重ねて整えていく必要がありました。




Withコロナ、Afterコロナを見据えて

コロナ禍において、新しい施策にも取り組んでいます。例えば、SVP社における従来の電話や対面営業のいいところを残しながら、より高度で効率的なアプローチを目指して、「インサイドセールス」の導入を試みました。営業攻略の緻密なシナリオの策定と従来型営業を組み合わせることで、試行錯誤しながらも、新しい営業スタイルの構築に挑戦しています。

また、会社のWebサイトも全面的にリニューアルし、会員企業の方が顔と名前を出してSVP社の魅力やサービスの活用法を多くの人に直接伝えるといった取り組みや、Webサイトを営業面のみならず採用や経営に関する情報のすべてのポータル(玄関)と情報発信の場としての機能をもたせるなど、Webを活用した新しい取り組みも始めました。



“三方良し”の事業承継

ファンドがオーナーになったからといって、ファンドがすべてを握り、好き勝手に経営をするわけではありません。ファンドにとってのメリットや利益は、会社から利益を吸い上げることではなく、会社の価値が高まることです。よって、“いい会社”にする必要があり、あくまでも主役は、現場のことを一番よくわかっている“社員”のみなさんとなります。

今まで、オーナー経営者が一人で抱えてきたことを、社員、経営者、株主がまさに三位一体となり、役割と責任を分担しながら、互いに補完・共有し、みんながひとつの船に乗り込むことで“航海”が始まります。

特に、最初のうちは、『新しい株主や新しい経営体制になって会社が変わった』『社員の声が経営により届くようになった』『自分達の声と力で会社も変わっていく』という感触を社員のみなさんが少しでも実感できるようにと意識しています。

SVP社に限らず、中小オーナー企業が“開かれた会社”へと変わっていくことは、社員の方にとっても望ましい、前向きな変化であり、貴重な経験ともチャンスともなるはずです。
 そして、もちろん会社としても、オーナー企業の良さも残しながら組織経営へと移行する、事業基盤が強化され確立する、ネットワークが広がり成長する、新しいことにも挑戦できるようになるなど、永続的な発展を目指すことが可能となります。

 こうして、コロナ禍で決断した事業承継は、オーナー経営者にとっては、そのタイミングや進め方は非常に難しいものだったかと思いますが、大変な時だったからこそ実現すべきことであったともいえ、結果としては、会社、社員、オーナーご自身、みんながハッピーになることができる、まさに“三方良し”の選択であったといえます。

以上、歴史ある中小オーナー企業のコロナ禍での事業承継“前”と“後”について、前編後編にわたってご紹介しました。

オーナー経営者の想いや会社の真の課題、ニーズに沿った解決策の一つとなりうるのが「事業承継ファンド」であり、今だからこそ、ファンドの役割や経験が必要とされています。
 オーナー経営者の方にとっての事業承継は、人それぞれ、会社それぞれですので、そう簡単に進められるものでないことは承知の上です。しかし、コロナ禍など外部の環境変化が加速している今だからこそ、“三方良し”でみんなが幸せになるシナリオを描くため、将来を見据えて、事業承継の選択肢の“慎重な検討と決断”、“果敢な実行”が、今オーナー経営者には求められています。

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