会頭コメント

会頭コメント

平成24年年頭所感(東商新聞掲載)

2012年1月1日
東京商工会議所

 平成24年の新春にあたり、謹んでご挨拶を申し上げます。本年が東日本大震災からの本格的な復興と日本経済再生に向けて、力強く前進する一年であることを心から祈念いたします。

■全力を挙げて大震災からの復興を 

 昨年、わが国は未曽有の大災害に見舞われました。震災から約10カ月を経て、被災地の環境は徐々に改善されつつありますが、復興は緒に就いたばかりであり、地域経済や雇用を支える中堅・中小企業の業績回復も途上の段階にあります。また福島県では、原発事故によりいまもなお深刻な状態が続いています。
 東京商工会議所では、震災直後から会員企業にご協力をいただきながら支援活動に取り組んでまいりました。皆様から寄せられた義援金や機械設備の無償提供など、被災地域の中小企業が事業再開に向け一歩を踏み出すきっかけになっており、これからも被災地の完全復興をめざして支援活動に全力を傾注してまいります。

■中小企業の活力強化を成長戦略の柱に

 国内外の経済環境は予断を許さない状況にあります。欧州では財政問題が金融市場、さらには実体経済に影響を及ぼす負の連鎖が懸念され、米国では緩やかな景気回復が続いているものの、財政問題もあり先行きには不透明感があります。また、世界経済を牽引(けんいん)してきた新興国にも減速感が見られます。国内経済も震災の復興需要により回復基調にあるものの、超円高局面の継続やエネルギーの供給制約、さらにはタイ洪水被害による影響などで企業は苦境に立たされており、産業空洞化の進行が強く懸念されています。
  わが国が再度立ち上がり持続的な成長路線を歩むには、中小企業や地域経済が活力を取り戻すことが不可欠です。そのためには、成長戦略の柱に中小企業の強化を位置付けることが必要であり、政府に対して強く働き掛けてまいりたいと存じます。

■積極的な国際展開を

 グローバル化が加速する中、日本経済成長のためには、アジアとともに成長することが不可欠です。中小企業も積極的な国際展開が重要であり、商工会議所はこれまで以上に国内外の政府関連機関などとの連携を密にしながらサポート態勢を強化してまいります。一方、円高などにより海外移転を余儀なくされ、空洞化が進む状況は何としても防がなければなりません。国際的な立地競争力を高め、国内企業のみならず海外企業からも魅力ある投資環境が整備されるよう取り組んでまいります。
 昨年、政府はTPP(環太平洋経済連携協定)交渉への参加を決定しました。今後、TPPなどの経済連携協定締結により中小企業の国際展開を強力に後押しすることが期待されますが、同時に高いレベルの経済連携と両立できる強い農林漁業の実現と、地域経済対策の確実な実行が必要です。交渉では影響を極小化しつつ、守るべきものはしっかり主張して国益の最大化を図らなければなりません。政府には強い交渉力を発揮できるよう万全の態勢で臨むことを求めるとともに、商工会議所としても農商工連携などによる6次産業化や輸出促進、観光振興などを含めた地域活性化に一層取り組んでまいります。

■日本再生に向けて勇気と希望を

 東日本大震災は国民生活や日本経済に深い傷跡を残しながらも、日本人の行動力、絆の深さをあらためて示すことになりました。これからも国民が絆と連帯の精神で一丸となって、本格的な復興と日本経済再生を果たしていかなければなりません。日本商工会議所は昨年、全国514商工会議所の総意として2020年東京オリンピック・パラリンピック招致実現に向けて全面的に支援することを表明しました。平和と友好親善の象徴であるオリンピック・パラリンピックの日本招致が、国民の心を奮い立たせ夢を持てるような「共通の目標」となることを期待しており、東京商工会議所もJOC、東京都はじめ関係機関との連携を密にしながら、本部・支部一体となって積極的に活動を展開してまいる所存です。
 130年を超える東京商工会議所の長い歴史を振り返れば、初代会頭・渋沢栄一翁をはじめとする先達は叡智や力を結集し、イノベーションによって幾多の困難を乗り越えてきました。わが国は戦後最大の危機を迎えていると言っても過言ではありませんが、現代を生きる私たちもこの国難に打ち勝つ底力を有していると確信しています。
 辰年は「動いて伸びる年」とされます。東京商工会議所は、関東大震災から復興の先頭に立った渋沢翁の信念と行動力を受け継ぎ、持続可能な経済成長を実現するため、会員企業の皆様とともに前進していく決意であります。皆様の一層のご支援とご協力を心からお願い申し上げます。

以上