政策提言・要望

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「企業行動規範」の改定について

2007年4月12日
東京商工会議所


改定にあたって
  日本資本主義の生みの親であり、東京商工会議所の創立者でもある渋沢栄一翁は、経営哲学として、「道徳経済合一説」(仁義道徳と生産殖利とは元来ともに進むべきもの)を提唱されたが、この精神は、今日の東京商工会議所会員の企業行動原理として、すべからく受け継がれるべきものである。そもそも、自由活発な市場経済は、法令や商業道徳の遵守を前提として成り立ち、機能するものであり、渋沢翁の経営哲学は企業行動の基本理念として共通不変の規範であると言える。
  近年、企業を取り巻く社会情勢は激変し、社会と企業の関係はより深長、かつ一層多面的に変わりつつある。それとともに企業行動に対する社会の評価も格段に厳しくなり、企業に対する要請も広範となる等、「企業の社会的責任(CSR)」が問われる時代にあると言える。この社会的要請に対応し、企業が持続可能な発展を図るためには、企業活動の根幹である経済性、効率性の追求のみならず、顧客や取引先をはじめ社会からの信頼を獲得する不断の努力が必要である。
  ところが、経済のグローバル化をはじめとする経営環境の変革が進む中、企業は国内外の厳しい競争に晒され、ともすれば目先の利益の追求を優先しがちとなり、最近も企業による偽装、不正入札事件等、企業不祥事が相次いでいる。企業不祥事が発生すれば、これまで築き上げた信用、さらにはその企業価値を一瞬にして喪失し、中には企業の存続すら危ぶまれる事例も頻発している。とりわけ、中小企業においてこのような事態が発生した場合、企業経営にとって致命的打撃となりかねない。こうした情勢を踏まえれば、今後の企業行動には一段と高い倫理観、遵法意識が求められていることは明白であり、倫理意識の醸成による社会的要請への着実な対応が、企業の持続的発展にとって不可欠である。
  東京商工会議所では、渋沢翁の経営哲学を踏まえ、企業行動のあり方の道しるべとも言える「企業行動規範」を平成14 年12月に公表し、会員企業にその実践を勧奨してきた。しかし、依然として企業不祥事が絶えない情勢を顧みて、改めて企業倫理の重要性を会員企業に喚起すべく「企業行動規範」を改定し、中小企業にもより分かり易く、実践しやすい規範となるよう刷新した。これにより、会員企業の企業倫理やコンプライアンス(法令等の遵守)への理解の一層の促進と各社の実情に応じた社会的責任への取り組みの実践を願うものである。

提言要望

Ⅰ.企業行動規範
1.法令の遵守
法令を遵守し、立法の趣旨に沿って公明正大な企業活動を行い、社会の信頼に応える。
2.社会とのコミュニケーションの促進
社会の声に積極的に耳を傾け、必要な企業情報を幅広く適時、適切に開示し、「開かれた企業」として社会とのコミュニケーションの促進をはかる。
3.地域との共存
地域の健全な発展と快適で安全・安心な生活に資する活動に積極的に参加・協力し、地域との共存を目指す。
4.環境保全への寄与
環境に配慮した企業活動を行い、環境と経済が調和した持続可能な社会の構築に寄与する。
5.顧客の信頼の獲得
顧客のニーズにかなう商品・サービスとそれらに関する正しい情報を提供するとともに、顧客情報等を適切に保護・管理し、顧客の信頼を獲得する。
6.取引先との信頼関係の確立
公正なルールに則った取引関係を築き、円滑な意思疎通により取引先との信頼関係を確立し、相互の発展をはかる。
7.従業員の自己実現への環境づくり
従業員の人格、多様性を尊重し、公平な処遇を実現するとともに、それぞれの能力・活力を発揮できるような職場環境をつくる。
8.出資者・資金提供者の理解と支持
公正かつ透明性の高い企業経営により、出資者や事業資金の提供者の理解と支持を得る。
9.政治・行政との健全な関係
政治・行政とは健全かつ透明な関係を維持し、不当な癒着や公正さを欠く活動を行わない。
10.反社会的勢力への対処
社会秩序や安全に脅威を与える反社会的勢力、団体に対しては、毅然とした態度で対処し、あらゆる関係を持たない。

Ⅱ.規範の実践にあたって
1. 企業経営トップの姿勢

企業行動は経営者の考え方により大きく左右されます。それゆえ、経営者は日々倫理観を高めていくとともに、日頃の言動の中で従業員に倫理観を示していく姿勢が大切です。
社内で企業倫理を周知徹底していくことが、経営者の最も重要な責務であることを十分に認識し、地道に実践していく必要があります。
企業活動の前提ともなるコンプライアンス(法令等の遵守)に関しては、日々遵法意識の醸成に努めて、不祥事を「許さない」「隠さない」という企業風土を確立していくことが求められます。

2. 不祥事防止のための体制整備

企業不祥事は発生してからの対応以上に、未然に防ぐことが何よりも重要です。そのため、不祥事防止に必要な社内体制の整備を検討しておく必要があります。
防止のための体制づくりとしては新たな組織を新設するのではなく、既存の組織内で、特命で任命する方法でも良く、要は誰が何をするのかを予め決めておくことが大切です。
また、社内情報の伝達や管理が行き届き、従業員から経営陣に、良い情報はもとより悪い情報についても即座に伝わる報告体制を確立する、いわゆる風通しの良さを確保することがポイントとなります。

3.法令は知らないではすまされない

「法令による規制があることを知らなかった」、「違反行為だと認識していなかった」といっても、違法行為自体が許される訳ではありません。結果的に法令に抵触すれば、処罰されることとなります。そのため、業務上必要不可欠な法令の知識を確認して社内に徹底させる責任者を決め、定期的な研修などを通じて確実に習得させる体制を作ることが重要です。
特に、経営陣にとっては法令の知識がコンプライアンス実践の前提となりますので、業種や企業の特性に応じて、自社が守るべき法令を経営陣が常に把握できる仕組み(体制)をつくっておくことが不可欠と言えます。
それとともに、事業上重要となる法令の制定や改廃等を確実にフォローして、法令に関する最新情報をもれなく把握できるようにしておくことも大切です。

4.実践は日々の積み重ねが重要

どれほど立派な企業行動規範を策定しても、それが日々の活動の中で実践されない限り、何の意味もありません。そのことを全員に徹底し、確実に行動規範を遵守していくことが不可欠です。
規範の実践を社内で定着させていくには、経営者自らが日頃から現場で模範を示して実践していくとともに、従業員へ規範を繰り返し説いて教育していくことが最も有効な方法と考えられます。


Ⅲ.規範違反時の対応について
■ 事前に対処すべき事項
(1) 平常時から、事態が発生したときに臨機応変に対応できる、社内態勢(広報対応を含む)と対応方法についてのマニュアル、ルール集等を自社の状況にあわせて整備しておく。
(2) 危機対応のマニュアル策定にあたっては、自社の現況を踏まえて発生可能性のあるリスクを全て洗い出し、内容を検討して各リスクの種類ごとに対応した対処方法を決めておく。
(3) 事態発生時にマニュアルに従って迅速に対応し、事態の拡大を防止できるよう、日頃からマニュアルの研修等により周知徹底をはかる。
■ 発生時に対処すべき事項
(1) 事態発生時には、経営者の指揮のもと、事前に決めておいたルールに従って、事態の正確な把握、原因の究明、応急措置、再発防止措置などを適時・的確に行うとともに、責任の所在を明らかにする。
(2) 関係当局へ通報、対外的な情報提供など、必要な対応を迅速かつ円滑に行う。
(3) 不祥事等で法的な問題が発生した場合には、できる限り外部専門家等に即座に連絡し、対外公表をはじめとする以後の対応について相談する。

「Web版企業行動規範」について
  今回、「企業行動規範」の改定にあたり、各社での企業行動規範の策定、見直しや実践に際して参考になる「Web 版企業行動規範」(http://www.tokyo-cci.or.jp/sansei/kihan/)を新たに作成いたしました。
  「Web 版企業行動規範」では企業行動規範の解説・補足説明とともに、具体的な案文例や策定にあたっての留意事項、導入・実践実例など、企業行動規範10項目について詳細に解説しています。行動規範を理解しやすくする工夫として、読み手の立場に応じた内容の整理も試みておりますので、「Web 版企業行動規範」を参照して、行動規範の策定、実践にご活用ください。

以上
【本件担当・問い合わせ先】

東京商工会議所
産業政策部 産業経済担当
TEL 03-3283-7628