政策提言・要望

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東京臨海地域の再編整備に関する提言 ~グローバル化に対応した魅力ある都市を目指して~

2000年3月9日
東京商工会議所

グローバリゼーションの進展とともに、世界レベルでの都市間競争が激化する中で、都市としての魅力を向上させることが極めて重要な課題となっている。日本の再生に向けて、大都市のリノベーションや国際競争力の強化が問われている今こそ、その牽引役を担うべき東京は、快適で効率的な都市生活や国際的な経済活動を営める都市基盤や仕組みを整備し、国際都市としての魅力とその地位を高めていかなければならない。
東京臨海地域の現状は、港湾・空港等の交通機能、供給処理施設、倉庫運輸関係施設等による利用が大きく、それぞれの土地利用が都区部全体の5割前後を占めている。昭和60年代からの臨海副都心開発と同時に、既成市街地に隣接した工場や倉庫等の再開発も活発に進められ、ウォーターフロントの様相が大きく変化している。バブル崩壊後、開発事業が大幅に遅延するとともに、内容的にも業務機能に替わって商業・アミューズメント機能や住宅、それに物流施設等の立地が増加し、一部で暫定利用も行われている。
現在でも、大規模な開発が進められる一方で、低・未利用地や開発予定地、再開発候補地が大きく残されており、東京のリノベーションや活力創出に向けて卓越したポテンシャルを有する地域として、首都圏全体を視野に入れた新たな役割と位置付けの付与が極めて重要な政策課題となっている。
東京臨海地域は、21世紀のわが国発展の鍵を握る重要な空間であり、東京そして首都圏が抱える諸課題を解決する場として貴重な役割を果たし得る地域である。グローバル化に対応した魅力ある都市形成に向けて、これまでの都市開発における硬直化した制度を抜本的に見直し、新しい時代の要請に応えられる都市づくりを実現するための環境を整備することが喫緊の課題である。
以上の認識を基に、東京臨海地域の再編整備について下記のとおり提言する。

提言


1.東京臨海地域の再編整備の基本的方向
東京臨海地域については、海と都心に隣接した広い空間を有する臨海地域の特性を活かしつつ、諸問題を抱える東京の都市構造のあり方を抜本的に改革するために活用すべき重要な地域として位置付け、その再編整備を図るべきである
同時に、東京および首都圏全体の経済活動と近隣県市との地域連携を支える機能とともに、次代をリードする新産業の創造や国際的感性あふれるコミュニティの形成といった新しい時代に求められる機能を備えた先導的モデルプロジェクトを積極的に展開する地域として活用すべきである。

(1)グローバル化に対応した魅力と活力を有するまち
 国際的な都市間競争が激化する中で、東京は世界に開かれたアジア・太平洋地域の経済・文化の交流拠点として、日本再生の牽引役を担っていかなければならない。世界の企業や投資家そして観光客にも選択される都市としての魅力を備えた東京の実現に向けて、東京臨海地域のまちづくりを行うべきである。
① 国際コンベンション施設の充実、国際性豊かなアミューズメント施設や教育文化施設の展開、国際機関の誘致等、国際交流への寄与を中心とした利用の促進
② 海辺の景観を活かしたインテリジェント化されたオフィスビルの供給、グローバルな情報交流等を含むワールドビジネスのサポート機能の整備、国際的にも分かりやすい開かれた諸規制等、ワールドビジネスセンターに相応しい環境の整備
③ 多様な情報産業・情報関連の諸機能や先端技術産業の集積、先端的な医療施設等の整備、創造的なベンチャー産業等が活躍しやすい環境の整備
④ グローバル・スタンダードを満たす都市基盤の整備(交通インフラ、交通標識等)、外国人ビジターに対する都市観光を意識した魅力形成

(2)快適な都心居住を実現する安全でアメニティゆたかなまち
米国のマンハッタン地区は、東京の都心4区(千代田・中央・港・新宿)と同面積ながら、都心4区の3倍の150万人が暮らしており、職住近接で魅力ある生活を実現している。
東京臨海地域を大都市のリノベーション、都心居住の推進や既成市街地の過密状態の解消等に利用し、訪都客にも魅力的であり、かつ「都民そして外国人にもより快適に過ごせる東京」を実現すべきである。
①多様な住宅の供給(少子・高齢化、女性の社会進出に対応した住宅、都心の居住空間の単位を拡大=「ゆとり住宅」、ホームステイを受入れられる住宅)
②職住近接、職住隣接型の複合市街地の形成
③都民に開かれた親水空間の形成、水辺のアメニティを活かしたまちづくり
④海および海辺を活かした美しい景観、魅力ある景観の形成
⑤公園、緑地、スポーツ施設、道路(自転車道、遊歩道等)の整備
⑥コミュニティのグローバル化にも対応し得る医療、福祉、教育等の生活環境施設の整備
⑦ユニバーサルデザインのまちづくり(すべての人にやさしいまちづくり)
⑧災害に耐えられるまちづくり、防災拠点の整備、オープンスペースの確保

(3)高度なインフラ力を備えた機能的で効率的なまち
臨海地域の特性を活かした多様で効率的な交通基盤を整備するとともに、東京という大都市の産業活動、消費需要を支える物流機能を都市活動のライフラインと認識し、人流・物流が計画的に分離された機能的な交通基盤の整備を図るべきである。
また、東京の国際競争力を高める上で低廉かつ高速・大容量の情報通信基盤を整備することは必要不可欠である。
①一般車輌と大型物流車輌の流動が計画的に区分された幹線道路体系の整備
②人のスムーズな流動を図るための鉄軌道・公共交通機関等の整備、海上交通を活用した交通モードの多様化、広域道路・鉄軌道・海上交通・航空間の連携の強化
③多様なソフトを備えた機能的で国際的に見ても低廉な情報通信基盤の整備
④国際的海上輸送の合理化・効率化、内航海運の活性化に対応するための港湾・物流空間の活用
⑤流通構造の変化等に起因する小口多頻度輸送に対応した物流拠点の整備(働く人にとっても交通利便性が確保される地域での展開)

(4)循環型社会形成に寄与するサステイナブルなまち
循環型社会形成への寄与を目的に、資源循環型システムを取り入れたまちづくりを行うとともに、環境共生の観点から、都市環境に配慮した都市づくりや沿岸域の環境保全・回復に向けた取り組みを行うべきである。
①資源循環型システムを取り入れた実験的、先進的なまちづくり
②最新のリサイクル施設、廃棄物処理・処分施設、下水道の終末処理施設の整備・充実による広域的な循環型社会形成への寄与
③各所への樹木の植樹、大規模緑地の確保や自然型護岸等の形成による自然環境の保全
④低公害車等環境にやさしい交通機関の導入、エコスタンドの形成による低公害車が走りやすいまちの形成
⑤分散型エネルギーシステム(コジェネレーションによる熱電併給)によるエネルギーの高効率利用、環境エネルギーの実験的導入(下水と海水の温度差の利用、海風等を利用した風力発電、太陽エネルギーの利用)等地域に眠れるエネルギーの徹底的な利用

2.東京臨海地域再編整備のための重点課題

東京臨海地域の再編整備の基本方向を実現するため、官民が共同して、以下のようなソフト、ハード両面からの重点課題に対処すべきである。
特に、今後の都市開発においては、民間の活力を最大限に活用する観点から、国や自治体は明確な土地利用計画・基盤整備計画を提示し、民間投資を誘発・促進させる環境を整備することが極めて重要である。
その意味から、プロジェクトの進行管理にかかわる時間の要素は決定的に重要であり、規制緩和と民間へのインセンティブに重点を置いた都市開発における新たな枠組みの構築が急務である。

(1) 都市の効率性を高める土地利用の促進
① 建物用途や容積率、形態を画一的に規制するのではなく、都市インフラや都市景観、環境への負荷を考慮した性能規定的な土地利用規制への転換
② 工業等制限法(平成11年3月の政令改正により一部緩和)、東京特別工業地区条例等の新規立地規制の緩和
③ 地域地区、用途制限等の運用弾力化および臨港地区指定解除等の迅速化
④ 流通業務団地内の用途規制の緩和
⑤ 航空管制規制による建築物の高さ制限の緩和

(2) 重点的に整備すべきインフラ
①首都圏の航空需要やグローバル化に対応した空港整備と空港容量の拡大
②高速、大容量、廉価なインターネット・プロトコル・ネットワークを形成する情報通信基盤の整備
③広域道路、鉄軌道、海上交通、航空等からなる効率的・体系的な交通網の整備(物流、人流両面から)
④鉄軌道(東京臨海高速鉄道、東京臨海新交通)のループ化等による交通利便性の向上を始めとする各交通機関の連携強化等による都心とのアクセスの改善
⑤大型物流車輌の通行を容易にする幹線道路体系の整備と物流施設の移転・再配置、小口多頻度輸送に対応した物流拠点の整備
⑥横浜港等との連携強化による世界の主要港へのデイリー航路の整備を始めとする外貿コンテナ等の港湾機能の強化

(3) 新たな都市活力と新事業を創出する仕組みづくり
① 多様なライフスタイルや異文化の人々を取り込んだ活力ある複合コミュニティの形成
② 外国人ビジター誘致策の推進
③ 環境・リサイクル関連産業の誘導と当該分野の研究・技術集積
④ 産学官および中小・ベンチャー企業の交流機会の提供
⑤ 廉価なレンタルラボラトリー、ガレージオフィス、インキュベート機能の拡充

(4) 多様な開発・事業手法と資金調達方法の導入
① 都市開発における民間の知恵と能力を最大限に発揮させるため、民間からの都市計画申請の開途
② 借地方式、暫定利用方式等事業用地の供給方式の工夫
③ 不動産特定共同事業とSPC(特定目的会社)の活用を通じた不動産証券化による土地の流動化
④ 公的施設の建設・管理・運営におけるPFI(プライベイト・ファイナンス・イニシアチブ)等の導入による民間の資金・運営ノウハウの活用
⑤ 開発に伴う税収増を引き当てとする債券発行による資金調達と公共施設整備への充当(TIF:Tax-Increment-Financing)

以上
【本件担当・問い合わせ先】

東京商工会議所