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国際裁判管轄等に関する意見

2000年11月20日
東京商工会議所

 

提言

1.はじめに

 現在オランダのヘーグ国際私法会議(国際私法の規則の漸進的統一を目的とする国際機関)では、裁判管轄(どこの国で裁判を行えるか)および外国判決の承認執行(外国の裁判所の判決の承認・執行)に関する国際的統一ルールを策定するために、検討がなされている。

 日本企業が国際的な商事紛争に巻き込まれるケースが顕著になってきている状況下、裁判管轄等に関する国際的な統一ルールが条約という形で整備されることの意義は大きく、企業が国際社会において行動指針を見極めていく上でも、重要なものとなる。

 現在検討されている条約草案は、基本的には国内法の基本原則と整合性のある内容となっているが、電子商取引や知的財産権等に関連した規定については、今後、議論を深める余地が残されている。政府の関係部局におかれては、企業が国際的な経済活動を行う上で、阻害要因とならないような条約の成立に向け、引き続きご尽力いただきたいと考える。

 以上の認識に立ち、東京商工会議所は、条約草案のうち議論となりうる重要な問題を中心に意見をまとめた。

2.意 見

(1)国際裁判管轄に関する規定について

 国際裁判管轄に関しては、基本原則として被告の常居所の国の裁判所(被告の普通裁判籍)において訴えを提起することとし、また当事者双方が書面によって合意されていれば特定の裁判所(裁判所の選択)に訴えを提起することが可能となっている。この基本原則は国内法と整合性があるものであり、異論はないが、今後の交渉次第では、経済活動を阻害しうる事項について意見をまとめた。

① 電子商取引関連について

 ボーダレス化した電子商取引の世界においては、これまでの物理的な概念のみで対応するには限界があり、その解釈によっては、想定の範囲を越えた国において紛争に巻きこまれる可能性がある。従って条約草案の検討に当たっても、電子商取引を活用した企業活動が制限されることのないよう十分な配慮がなされなければならない。

 条約草案の契約条項では、物やサービスの引渡し履行がなされた国に、裁判の管轄権が認められ、これについて特段異論はないが、電子的なサービスの引渡しを行う際には、義務の履行地が不明確となっている。アップロードの地点か、ダウンロードの地点か意見の分かれるところであるが、企業にとって思わぬ国で管轄が認められることのないよう、明確な条文整備がなされることが望まれる。

 また、消費者契約では、消費者は自らが住む国において、企業が広告等の営業活動を行うなど一定の条件が整えば、その消費者の住む国で訴えを起こすことができるとされている。しかし、電子商取引においては、想定外の国の消費者からの訴えが提起されることとなりかねず、このような状況を排除するために、ディスクレーマー(仕向地国を限定している旨の明示)が認められるべきである。

 不法行為に関連しては、ホームページ上での名誉毀損等、不法行為地の定め方が難しい。原則は、不法行為地は被告または加害者の常居所地として、例外規定として、例えば加害者の常居所地が特定できないなど、一定の条件下において、サーバーの所在地あるいはアップロードをした端末の所在地を不法行為地として認めることが望まれる。

②知的財産権の専属管轄に関する取り扱いについて

 条約草案では、特許権の登録の有効・無効に関する争いは、その登録が行われた国の裁判所が専属的に管轄権を有するとされているが、特許権の侵害訴訟についても、登録された国の裁判所に専属的な管轄権を持たせるべきか否かが争点となっている。そもそも特許は各国独立の原則があることを鑑みれば、裁判管轄は登録国の裁判所で判断されることを原則とするのが望ましいと考える。但し、登録国の専属管轄とすることで、当事者双方の経済活動に支障を来すことのないよう、十分議論を尽くすことを望むものである。

③支店に関する管轄について

 損害を与えた企業の支店、代理店その他の営業所の活動に直接関連する紛争について、その支店等が所在する国の裁判所に訴えることができることとなっているが、これに加え、支店を置かずに継続的商業活動を行っている国の裁判所でも訴えを提起することが認められるか否かが争点となっている。現在の条約草案において、「当該支店、代理店その他の営業所の活動[又は当該継続的な商業活動]に直接関連している場合に限る」となっており、仮に「継続的な商業活動」の概念を認めるとしても、条約案どおり「直接関連している場合に限られる」べきである。一部にはここを外すべきとの主張がなされているが、単に「継続的な商業活動」いう概念のみでは、管轄地が拡大する恐れがあり、この点、十分配慮されるべきである。

 

3.外国判決の承認執行に関する規定

損害賠償に関する規定について

 外国判決が、懲罰的損害賠償を含め、実損を超える損害賠償を命じている場合、その執行を求められた国で同等の損害賠償が命じられるべき限度で承認されるとしている。日本においては懲罰的賠償制度を含め、実損を超える損害賠償を命じる制度を用いていない。外国の判決が実損を超える損害賠償を命じる場合は、条約案通り、承認または執行を求められた国で同等の損害賠償が命じられるべき限度で承認執行されるべきである。

 懲罰的賠償のような特異制度の執行が回避される条約策定が不可欠である。

以上
【本件担当・問い合わせ先】

東京商工会議所