政策提言・要望

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東京都産業廃棄物処理計画(中間のまとめ)に対する 意見・提案の提出について

2000年11月29日
東京商工会議所

 次期東京都産業廃棄物処理計画(中間まとめ)では、最終処分場の残余年数の逼迫、最終処分の8割に上る他県依存など先送りのできない重大な課題を見据え、産業廃棄物の適正処理にとどまらず、発生抑制、減量・資源化を積極的に推進することに主眼がおかれている。本計画の実効性担保のためには、廃棄物処理に関する社会的意識の高揚はもとより、行政、産業廃棄物の排出事業者・処理業者、さらには都民、それぞれの主体の役割を明確化することが重要となる。

 東京商工会議所では、昨年「資源循環型社会~廃棄物という観念のない社会~の構築に向けて」を取りまとめ、資源循環型社会移行への行動理念(「未然防止」・「共創と連携」)とともに、事業者・国民・行政それぞれの役割について報告した。その内容を踏まえながら、今回の計画に関して、下記の点を意見として述べることとする。

提言要望



1. 計画内容について(第5章を中心に)

 <計画目標1 発生抑制・再使用・再生利用の促進>

(1) 計画目標1(P.49)の発生抑制・再使用・再生利用の促進においては、建設廃棄物に重点を置く意味は理解できるが、その前提として、産業廃棄物の発生そのものを抑制することが、産業界全体の目標であるという視点を出すべきである。

(2) また、環境負荷最小化のために最適な方法を選択するには、再生利用における有害物質混入の問題やエネルギー効率等を勘案する必要がある。このためのガイドライン整備などの視点も重要である。

(3) 更に、「廃棄物」の定義・分類を見直し、「再使用・再生利用すべきもの(循環資源)」と「適正処理すべきもの(産業廃棄物)」という区分に再規定することも不可欠である。

(4) また、この目標を達成するための取組例(P.50)として、①事業者の自主的取組として広がりを見せているISO14001に基づく環境マネジメントシステムの構築や、②製品等の生産から廃棄までの環境負荷を定量的に評価するLCA(ライフサイクルアセスメント)などの評価ツール導入促進策を加える必要があるのではないか。理由は、ISO14001やLCAによって産業廃棄物の発生抑制と環境負荷低減が促進されるからである。今後、これらを広く中小企業へ普及させる意味でも、自主的取組みを進める事業者に対し支援を講じられたい。具体例については後述3.で示す。
 
(5) 2章6項「現状における7つの課題」のなかで中間処理施設・最終処分場の整備の必要性が指摘されている(P.29)が、特に施設や処分場の場所の確保や地域住民とのコミュニケーション等、立地に関わる部分については、「公共関与」に留まらず、あえて積極的に「行政主導」で進めることを明記すべきである。東京都域内処理率を高める上でも必要なことである。

<計画目標2 特別産業廃棄物の適正処理>

(6) 目標2(P.52-53)においては、PCB廃棄物の適正保管・廃棄物の適正処理を徹底することは論を待たないが、取組例の中で、中小企業の経営を揺るがす急激なコスト負担を回避する措置を講じられたい。(関連策については後述3.を参照)

<計画目標3 不法投棄の防止>

(7) マニフェスト制度(P.55)の適正運用とともに、マニフェストの一層の有効活用を図るには、廃棄物の物流管理システムの整備を念頭に置いた電子化も視野に入れる必要がある。新マニフェスト制度の定着度を勘案しつつ、段階的に取組みを進めねばならない。

(8) 広域連携体制の推進については、不適正処理防止ばかりでなく、リサイクル資源を近隣自治体間で移動させるリサイクルルート整備を視野に入れるべきである。具体的には、排出事業者や自治体の「廃棄物」情報と、資源を求める事業者の情報をデータベース化・ネットワーク化することで、資源の有効活用が促される。このような地域を超えた「広域リサイクル体制」構築によって、廃棄物発生抑制・リサイクル率向上の両面に働きかけていくことが重要である。

<計画目標4 事業者・都民・行政の連携>

(9) 都民への啓発と情報提供・事業者の自発的取組み推進・連携による施策推進等を 目標とする取組みが例示されており(P.56-57)、この中で行政の普及啓発活動の内容に触れてはいるが、より体系的かつ明確な形で行政の広報計画を策定すべきではないか。処理計画の実効性担保のためにも、例示されている個々の啓発や情報発信の策を広報計画という大きな枠組みの中で捉え、実施していく必要があるのではないか。

(10) また、啓発や情報提供の内容は、グリーン購入等リサイクル製品の積極利用の重要性についても強調されたい。


2.全体の構成・表現について


(1) 2章6「現状における7つの課題」を踏まえて4章、5章がまとめられているのは理解できるが、4章の2「施策展開の3つの基本的な方向」が、5章の「計画目標及び取組」にリンクしていることがわかりにくい。

(2)  特に4章と5章に関して、文章表現を明確化すべきである。例えば、4章のタイトルが「基本的考え方」で、1は「基本方針」、2は「基本的方向」ではそれぞれの位置付けの見分けがつかない。また、5章は計画目標と取組を示すことが目的であり、目標のポイントと目標を達成するための取組例が明記してあれば十分であり、背景説明を繰り返す必要はない。


3. 事業者の自主的取組み促進のために
                都の廃棄物行政に望むもの


(1) ISO14001助成制度の拡充とLCAの環境整備

 産業廃棄物の排出量・最終処分量を削減するためには、分別を徹底しリサイクルに回すシステムを確立する必要がある。こうした仕組みを事業者が自主的に構築するために、ISO14001やLCAなどが有効なツールとなる。

 しかしながら取得にかかる費用などを理由に、二の足を踏む中小企業も少なくない。そこで①都で実施しているISO14001取得企業への助成制度の大幅拡充と、②制度の周知徹底を進めるべきである。また、③行政による、ISOを取得し環境保全レベルを向上させた企業を始めとした環境配慮型企業へのサポートメニューを拡充し、事業者へより直接的に働きかける必要がある。例えば、東京都の競争入札参加資格審査でISO14001取得を格付けに反映させるなどの動きによって、事業者の認証を取得し環境保全レベルを向上させようという意欲が増している。こうした状況を鑑み、表彰制度ばかりでなく、優遇税制措置なども含め、ビジネスにより直接的に寄与する方策を検討されたい。

 一方、設計段階での廃棄物排出量削減や長期使用のための取組みには、LCAが有用なツールとなる。しかし、基礎データが不足していることなどから、現段階では1部大企業での取組みに留まっている。中小企業にも広くLCAを浸透させるためには、①データベースの整備、②数値を入力するだけで環境負荷を集計するような簡便なソフトを開発・無料提供する などが必要になる。


(2) PCB廃棄物適正処理促進のための行政の積極的関与と中小企業への配慮

 「東京都PCB廃棄物適正処理検討委員会」において、都内PCB廃棄物量の約7割が中小企業に属するとのデータが都より提示されている。処理や保管に関する東京都独自のルールを設けることになれば、これら中小企業へ新たな負担が負荷されることになる。このため、①処理・運搬や管理等のコスト増加分に対する助成(あるいは処理費用の低減)はもちろん、②ルール実施前には、事前に充分に周知徹底させることが重要である。

 また、PCB機器は、かつては有害物の指定ではなくある日突然「有害物(危険物)」となった。「保管企業も被害者」なのである。特に処理施設の立地問題や保管者データ公表に際しての、地域住民とのコミュニケーションや理解促進のための啓発・教育では、③行政の積極的な関与によるこのメッセージの伝達が不可欠である。

 更に、④既に紛失してしまったものが発見された場合の対応として、汚染土壌や機器の処理方法やコストの負担方法なども明確にすべきではないか。

 なお、行政の積極的関与は、処理施設整備に際しても不可欠である。第3セクター方式等を視野に入れつつ、早期処理に向けて取組みを進める必要がある。


(3) 排出事業者の産業廃棄物管理者育成システムの整備

 3R(リデュース・リユース・リサイクル)と適正処理の徹底のためには、産業廃棄物・関連法制全般を熟知した人材が不可欠である。しかし、規模の小さな排出事業者ほど、人材育成に割ける人的・経済的余裕は少ない。そこで、行政による「産業廃棄物管理者育成講座」等の創設により、中小排出事業者を主対象とした定期講習会を開催、修了者には修了証を発行するなどして、一定レベルの知識を持つ人材を育成すべきである。

 
(4) 行政の多様かつ息の長い支援による都民理解と各主体間パートナーシップの促進

 計画目標等の中で、都民のライフスタイル変革と産業廃棄物を含む廃棄物に関する啓発の必要性が述べられている。NPOやNGOの活動は活発化しつつあるものの、都民全体に占める割合はまだまだ小さく、未成熟の段階である。このような状況下で、都民理解・行動を促しつつ事業者・都民・行政の連携を促進するために、行政の果たす役割は大きい。連携の場を時限的なプロジェクトとして設けるばかりではなく、こうしたプロジェクトが独り立ちして機能していける環境整備も含め、より多様で、息の長い支援のあり方を模索するべきである。

 また、このような場を活用して、リスクコミュニケーション等、地域住民の合意形成のための具体策検討を行なうことも有効であろう。


(5) 情報提供について:助成等の情報パッケージ化

 環境配慮を進め、資源循環型社会構築に意欲を持つ事業者の取組みを支援するため、各種助成ガイドブックや廃棄物削減のための業種別マニュアルの作成等、情報のパッケージ化を進め、事業者が簡便に情報を入手できる体制を整えるべきである。


(6) 最後に

 都の産業廃棄物行政の基本となる本計画は、「実行」と「実効」を伴うべきである。そのため、①目標はできるだけ数値化し、その根拠と目標達成のための方策・計画も明らかにすること、②定期的な進捗状況のチェックと達成度の公開 が重要である。

 また、廃棄物をなくす(排出量・最終処分量の削減+リサイクルルートの確立)ことと同時に、「負の遺産」(既に不法投棄されたもの)への対応(原状回復のためのコスト負担をどうするのか)は十分検討すべきである。

 近年中小企業へも環境への配慮と取組みが浸透しつつある。しかし1部には、増えつづける規制に対しアレルギー反応があることも確かである。環境とビジネスを一体化させようとする、事業者の意欲を損なわないよう、インセンティブづくりを廃棄物行政においても十分ご検討頂きたい。

(平成12年11月29日提出)

以上
【本件担当・問い合わせ先】

東京商工会議所