政策提言・要望

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東京都の中小企業政策に関する要望 ~首都東京発の日本経済再生を目指して~

2001年5月10日
東京商工会議所

 わが国経済が再生を果たし国際競争力を回復させるには、国全体を牽引すべき存在である首都東京が、本来備える活力を最大限に発揮することが不可欠である。
 しかしながら、東京の経済は、2000年度にわが国全体の水準を上回る成長を遂げた模様だが、年初からのデフレ進行と相俟って民間設備投資に手控え傾向が表れるなど、企業経営者は依然として先行き不安が払拭出来ない状況にある。
 こうした現状を打破していくため、東京都は、今後の産業振興策を推進するにあたって都内60万余の既存中小企業の経営革新促進、新産業の育成、新たな産業集積づくりに注力すべきと考える。
 その際、経済活動のインフラである交通・物流機能強化や情報通信基盤整備等が大前提となることから、東京都におかれては、国および首都圏各都市と連携のうえ、投資効果の高い東京に公共投資を集中し、各方面にわたる大都市再生プロジェクトを推進されたい。
 また、地域経済活性化のためには、その主体となる中小企業の経営革新が欠かせないことから、金融・税制・各種支援制度や東京地域中小企業支援センターの機能拡充により所要の経営支援体制の整備に早急に取り組まれたい。
 さらに、住民の都心回帰傾向が顕著となる中、地域におけるコミュニティ機能再生が喫緊の課題となっていることから、商店街が住民ニーズに積極かつ的確に応え、地域密着型の活動を強化出来るよう、その支援体制についても拡充されたい。
 そこで、東京商工会議所では、東京都の中小企業政策に関わる事項について下記のとおり要望するので、その趣旨をご賢察のうえ、特段の配慮を賜りたい。

要望



Ⅰ.新たな産業集積づくりと新産業育成に向けて

1. 新たな産業集積づくりの推進

 東京では、従来の地場産業とは異なるタイプの産業集積が進みつつあり、これらを拠点として既存企業の経営革新と次世代を担う企業の輩出が促進されることが期待される。
 東京都におかれては、国が検討中の「地域経済活性化戦略プロジェクト」や各区および本商工会議所が行なう事業と連携のうえ、地域特性に応じた拠点づくりやイベント開催に係る支援策を講じるとともに、当該地域に立地する企業の法人事業税や固定資産税の減免、特許等知的所有権を担保とした制度融資など、政策的な措置を早急に実現されたい。
 これらにより「アーバン・ビジネス・フォート(新産業の砦)」とも呼ぶべき、ビジネス拠点が各所に整備され、それらが相互に競い合い、交流を図ることで、新たな企業文化やビジネスモデルが生まれ、世界に向けて東京発の情報発信がなされることが理想と考える。
<関連動向・東京商工会議所の取り組み>
○渋谷・秋葉原地区のIT産業や杉並地区のアニメーション産業、五反田・中野坂上地区 の情報処理産業等は、いずれも新たな集積地として注目を集めている。
○品川区は、渋谷・港区において台頭しつつあるニューエコノミーと城南地区の既存の工 業集積とを結びつける機能を備えるべく、西大井地区に研究開発に特化するファブレス 企業を集積させる構想を描いている。
 また、荒川区においては、西日暮里地区で廃校となった校舎をオフィスに改装し、IT関連 産業等の創業者に低廉な料金で提供する「スタートアップオフィス事業」を始めた。
○本商工会議所渋谷支部は、「渋谷地区IT(新都市産業)推進協議会」を設立し、ベンチ ャー企業や創業者に対する経営支援を行なうための拠点整備、企業等が保有するソフ トウエアや技術データのデータベース化、IT産業と従来型地場産業とが融合する街づくり 等を目指している。
 また、杉並支部は、同区と連携のうえ、「アニメの杜(もり)」構想を実現するべく、本年4 月にアニメーション・フェスティバルを開催し広くその存在をアピールするなど、同産業の 振興に力を注いでいる。

2.新規企業の創出・成長への支援

(1)経営指導員の人件費の安定的確保
 本商工会議所本部および23支部においては、小規模事業経営支援事業の一環として創業支援事業に注力しているところであり、これらを日常的に推進する経営指導員など補助対象者の人件費については、今後とも安定的に確保されたい。
(2)創業支援事業費の拡充
 創業支援等に係る事業費についても、その重要性を勘案のうえ、特段の配慮をされたい。
(3)金融・税制面の優遇策
 創業事業の評価制度として、新規性、新産業育成への貢献、空き店舗の活用など一定の要件を満たした事業については、金融・税制面における優遇措置を設けるなど、東京都独自の新たな創業支援システムを構築されたい。
(4)創業資金融資への配慮
 創業にあたっては、初期投資に係る資金調達に苦慮するケースが多いので、創業時の開業資金の制度融資額は、自己資金以内とされる限度枠を撤廃し、事業性や計画内容を評価し決定されたい。
(5)創業直後の支援策
 多くの創業者が販路開拓に苦慮していることから、東京都等の物品・資材の調達については開業間もない中小企業にも積極的に受注機会を確保するとともに、創業者間のネットワークづくりへの支援など、事業が軌道に乗るまでのアーリー・ステージにおける支援体制を強化すべきである。
<東京商工会議所の取り組み>
○平成8年度より開始した創業支援セミナー、開業相談等を通じ同12年度末までに約 4000名の創業予定者と接触を持っており、その中からこれまで一割を超える創業者を輩 出している。
 また、同年度より「東商ベンチャーネット」事業を開始し、意欲あるベンチャー企業のビジ ネスプランを大手・中堅企業に紹介し、企業間の提携・協力を進めるなど、一貫した支援 体制の構築に腐心している。
 さらに、昨年、本商工会議所内に東京地域中小企業支援センターが開設されたことか ら、経営革新、新規事業開拓、創業等に関する相談、情報提供、専門家派遣など、事業 内容の充実に努めている。

Ⅱ.地域産業の活性化に向けて

1.IT革命を企業経営に活かすための支援

(1)IT化に関する相談体制の整備
 中小企業が急速に進むIT化に乗り遅れることがないよう、本商工会議所としてもパソコン等の導入や活用に関する支援に努めているところである。
 東京都におかれては、企業経営者の身近な相談相手となり得る「ITヘルパー」等人材の育成に努め、また、本商工会議所23各支部にITヘルプデスクを設置出来るよう相談体制の整備に取り組まれたい。
(2)技術・事業革新等支援資金融資制度の充実
 中小企業の情報化投資をさらに促進するため、「IT対応資金」の貸付にあたっては、迅速な審査等を含め、弾力的な運用を図られたい。
(3)IT化に対する助成事業の推進
 助成対象を企業の情報化投資の促進に留まることなく、人材育成等経営革新に資するような取り組みについても推進し、他の企業のモデルとなる先進事例の創出に努められたい。
<東京商工会議所の取り組み>
○中小企業が電子政府・電子都庁構想に的確に対応し、また、電子商取引に乗り出せる よう各種のパソコン修得実務セミナーの開催やパソコン等情報機器の導入支援に取り 組んでいるほか、情報対応力を向上させるうえで参考となるよう、IT機器導入の際のチェ ックポイントとIT活用事例集からなる「中小企業のためのIT強化書」を刊行し啓発に努め ている。


2.資金調達の円滑化に関する支援

(1)CLO(ローン担保証券)発行の推進
 東京都におかれては、次回の募集に際し、より広く中小企業が参加出来うる態勢とするため、信用力による金利の設定等に工夫を凝らすなど内容の充実に努められたい。
(2)特定社債(私募債)保証制度の適債基準の緩和
 本制度については、発行基準(純資産額5億円以上、自己資本比率15%以上等)を緩和するなど、一層の普及・定着に努められたい。
(3)資金計画対応融資制度の普及促進
 極度額の範囲内における反復継続利用について円滑に行なわれるよう配慮されたい。
(4)保証制度の弾力的な取扱い
 本年3月末に終了した中小企業金融安定化特別保証制度利用者の返済条件の変更については、柔軟に対応されたい。また、一般保証制度については、保証決定までの審査期間の短縮化を図るため、東京信用保証協会の審査陣容の強化および保証力増強と経営基盤強化に配慮されたい。
(5)売掛債権の流動化
 中小企業の経営の安定化や資金調達の円滑化を図るために、保有している売掛債権に対する公的保証制度の付与や保険制度を創設するなどの信用補完措置を講じ、債権流動化を促進されたい。

3.企業経営を支える税制改革の推進

 地価の下落等資産デフレに対応するため、固定資産税をさらに軽減されるとともに特別土地保有税、地価税については東京都が率先して廃止に向け活動されたい。
 また、昨年11月に東京都知事あて提出された東京都税制調査会答申によれば、外形標準課税の早期導入が困難であるとすれば「地方税の応益性の明確化」の観点から、法人事業税改革の代替措置として、当面、当該事業年度の利益の2分の1程度は納税の対象とするよう、欠損金の繰越控除額を制限する措置を講じる必要があるとしているが、欠損企業の担税力を過大評価するものであり、反対である。

4.中小製造業の技術開発に関する支援

 中小企業の技術開発を推進するには、社外の専門家等外部資源の積極的な活用を促すことが肝要であり、本商工会議所としても独自に事業を展開しているところである。
 東京都におかれても、①公設試験研究機関は試験研究機能を一層高めるとともに人材育成事業の拡充を図ること②休眠特許の流通を促進するため、本商工会議所と協力して特許流通アドバイザーによる相談機能を強化すること③製造現場での技能者の評価を高め、中小企業における円滑な技能継承を促進するため、優秀技能者に対する表彰制度を拡充すること④昨年度創設された技術・事業革新等支援資金融資制度の予算規模の拡充を図るとともに、技術力や事業性の評価機能を担う審査会に本商工会議所等産業界からの代表者を加えることを検討されたい。
<東京商工会議所の取り組み>
○中小企業の産学連携の推進を目指し、昨年より「東商テクノネット事業」(約600社が登 録参加、17大学と連携)をスタートさせ、大学研究室への訪問や教官が扱う具体的研究 テーマ等の情報収集に関するサポートなどを行なっている。

5.商店街の活性化に関する支援

(1)商店街を地域コミュニティの中核的存在に
 先頃発表となった東京都の「21世紀商店街づくり振興プラン」では、商店街自らが考え、行動するための戦略が提示されたほか、従来の補助制度を抜本的に見直し、区市町村を主体とした制度へと再構築する考えが示された。
 その場合、商店街を地域コミュニティの中核的存在として再確認し、高齢者にやさしい街づくり、リサイクルの推進、地域固有の歴史・文化の保存・理解促進等の推進、観光等来街者への対応などの拠点となるよう、政策的意図を持って振興策に取り組まれたい。
(2)先進的取り組みについての検証
 地域における商店街の主体的な取り組みに対し、他のモデル事業となるように本商工会議所と連携し、その活動事例を検証するなど、重点的な支援を行なわれたい。

6.企業の環境対策への支援

(1)中小企業への配慮
 都市環境の改善は喫緊の課題である。今後、具体的な施策展開にあたっては、中小企業が東京の環境保全において応分の役割を果たせるよう、環境関連法規の適用に相応の猶予期間を設けるなど、実施手法、スケジュール等について十分な配慮をされたい。
(2)環境配慮企業へのインセンティブ
 先進的に環境対策に取り組む企業に対しては、制度融資の審査における優遇措置等金融面の支援策を講じるとともに、後発企業が環境対策に積極的に取り組むインセンティブが働くよう、環境配慮型の優良な企業に対する顕彰制度の創設等についても検討されたい。
(3)ISO取得企業への配慮
 中小企業に対するISO14001(環境マネジメントシステム国際規格)認証取得に係る助成枠の拡大、取得後の定期審査や更新審査の負担軽減のための助成制度等の創設とともに、認証取得企業への優遇措置として、行政手続きにおける各種提出書類の免除等簡素化を図られたい。
(4)PRTRの周知徹底
 特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(PRTR法)が本格施行され、中小企業も化学物質の排出量・移動状況を都道府県に届け出るよう法制上義務づけられた。本法律については、引き続き普及・啓発が必要な段階と思われるので、PR等に努められたい。
(5)中小企業のPCB対策への配慮
 東京都は、使用中のPCB(ポリ塩化ビフェニル)の適正管理を事業者に求める独自の指導要綱を本年6月より施行されるとしている。この際、事業者、とりわけ中小企業にとっては、PCBの処理、保管にかかる経済的負担が大きいことからコスト負担軽減のための支援をされたい。
(6)本商工会議所事業への支援
 本商工会議所としても、独自の事業を通じ、企業の環境対策に対する支援を行なっているところである。東京都におかれては、その趣旨を理解のうえ、関連法規・制度・システム等の周知徹底にさらに努められたい。
<東京商工会議所の取り組み>
○平成8年より小規模事業所向けオフィス古紙回収事業「東商エコ・リーグ」を展開してお り、現在12支部を通じ約2200事業所の参加を得ている。
○平成9年より再生品普及事業「東商エコ・ショップ」を展開し、現在約350社の登録を得、 商店街の空き店舗に出店するなどPR活動に努めている。
○平成10年よりコンサルティング費用を低減したISO14001認証取得支援講座を実施して いる。
○昨年の容器包装リサイクル法の完全実施に伴い、リサイクル義務を課せられた中小企 業の申告手続きおよび指定法人への契約の代行を行ない、本年度は約3000社の事務 負担の軽減を図っている。

Ⅲ.都市機能の向上に向けて

1.総合的なまちづくりへの支援

(1)中心市街地活性化策について
 中心市街地活性化策については、商店街活性化策に留まることなく、まちづくり推進の観点から、在住・在勤者も含めた市民参加の検討、交通基盤整備の推進や再開発計画等との整合性確保、容積率や税制のインセンティブの付与による土地の有効活用、駐車場の固定資産税の軽減など、総合的な支援策を講じられたい。
(2)公共施設の移転への対応
 中心市街地からの公共施設の移転に際しては、地域住民・企業に対する必要かつ十分な情報提供に努められるほか、施設跡地の利活用についても企業等関係者からの意見聴取に努め、地域経済の発展に資するよう配慮されたい。
(3)TMOへの支援
 各区におけるTMO(タウン・マネージメント機関)に対する支援については基金を通じ継続するとともに、地域においてまちづくりを担う人材の育成、タウン・マネージャー養成など関連事業の一層の拡充を図られたい。
(4)大規模小売店舗立地法の円滑な施行
 大規模小売店舗立地法が昨年6月より施行されたが、各区の条例・要綱を含め新法の具体的な運用・手続きについては、出店者、住民、地域商業者など関係各方面に周知徹底し、出店等に係る混乱が生じないよう努められたい。
 また、東京都および各区は、従来にも増して相互の連絡調整に注力されるとともに、本商工会議所への情報提供にも配慮されたい。

2.都市基盤整備の推進と環境への配慮

(1)政策誘導型都市づくりの展開
 東京都におかれては、わが国の政治・経済・文化を牽引する原動力たる首都心をセンター・コアと位置付けている。
 この地域は、経済的ポテンシャルの高い地域であるので、積極的な民間による投資を支援するため、公共的な貢献を行なう建築計画については、現行の都市開発諸制度の見直しにより容積率、斜線制限等の緩和などを進め、国際的なビジネスセンターとして再生するために政策的な誘導を図られたい。
(2)交通基盤整備の推進
 都内交通の約2割におよぶ都心通過交通が慢性的な交通渋滞の主要因となっていることから、それらの解決を図るべく交通基盤整備を推進されたい。
 具体的には、広域幹線道路の整備促進や連続立体交差化、交差点の改良等渋滞原因となっているボトルネックを解消し、早急に道路交通の円滑化を図られたい。
(3)羽田空港の国際化
 推進首都圏空港における国際および国内旅客・貨物輸送実績は堅調に推移しており、海外からの路線新設・増便要求には適切な対応がなされていないのが現状である。
 東京の国際競争力を高めるためにも東京国際(羽田)空港の国際化は喫緊の課題であり、東京港の港湾機能との共存を前提に再拡張も視野に入れ推進されたい。
(4)ロードプライシングについて
 TDM(交通需要マネジメント)の手法の一つであるロードプライシングの実施計画づくりについては、拙速にならぬよう事業者を含めた関係者間の十分な議論と実施に至るまでの周知徹底を図られたい。
(5)都市内物流システムの構築
 都市内物流システムの構築を急ぐべきである。交通基盤整備や都市再開発の推進とともに、都心部の再開発ビル等への荷捌きスペースの付置促進に係る支援等を検討されたい。
(6)ディーゼル車規制について
 ディーゼル車の規制については、深刻な経営環境にある中小・小規模事業者にとって新たな負担となることから、DPF(排ガス浄化)装置の十分な確保とその装着に係る助成および税制上の優遇措置等、十分な配慮をされたい。
 また、低公害車の導入促進のため、CNG(圧縮天然ガス)スタンドの設置と同車輛導入に係る税制・金融上の支援措置を拡充されたい。
(7)防災都市づくりの推進
 防災都市づくり推進の観点から、各区が個別に地域の企業と結んでいる防災協定等を尊重しつつ、大規模災害発生後におけるライフラインの確保や物資の緊急配送・配給など、企業の役割の大きさを再確認し、本商工会議所等経済団体との防災に関する新たな協定等の創設を検討されたい。

3.観光政策の推進

(1)都市型エンターテインメント施設の整備
 東京都におかれては、本年度より産業労働局内に観光産業振興部門を新設された。このことは、旅行者の大交流時代を迎え、観光が都市型成長産業の一分野として位置付られたものとして、歓迎したい。
 シティセールスの強化による観光客の増加や国際コンベンションの誘致は、東京の国際ビジネスセンターとしての地位を大いに高めるものと期待されるところであり、この際、カジノほか都市型エンターテインメント施設の整備についても検討されたい。
(2)サッカー2002年ワールドカップへの対応
 サッカー2002年ワールドカップの開催を控え、(社)東京コンベンションビジターズビューローを中核に、40万人とも言われる32カ国の参加選手・役員・サポーターの東京への観光誘致を図るべく、東京都・区市町村および民間における役割・事業分野等を明確化した行動プランを策定のうえ、官民一体となった取り組みが可能となるよう検討されたい。
(3)都市標識のデザイン統一
 外国人ビジターの受入れ体制を整備するため、行政・交通機関・観光関連施設等のサイン・地図標記の統一や情報提供機能の強化などに速やかに取り組まれたい。

Ⅳ.個人の意欲と創造力が活かされる社会づくりに向けて

 首都東京が住民自らの選択と責任により地域の運営を進める地方主権を実現するには、世界のメガロポリスに相応しい人材集積都市に変貌していく必要がある。
 現在、経済社会の中で個人の意欲と能力が活かされ、これに応じて多様な生き方が選択できるための社会環境整備が急務となっている。
 また、企業は激しい企業間競争のさなかにあり、今後、従業員の資質と意欲が盛衰の鍵になろう。すなわち、そこで働く従業員が自らの才能を磨き、多様な能力を発揮し、商品・サービスの差別化を図り顧客満足度を高めることが、企業にとって生き残るための喫緊の課題となっている。
 こうした観点から、これらに係る主要事項について以下のとおり要望する。
(1) 自立と包容力のある社会づくり
 起業やベンチャー企業を生み育てるためには、チャレンジ精神が尊ばれ、その志を成就した社会的成功者が尊敬を集め、一方で、倒産等を経験した事業者には、敗者復活が広く認められるような包容力のある社会の形成が待たれる。
 東京都におかれては、本商工会議所等経済団体と連携を強化し、これらの趣旨が活かされるよう世論形成に努められたい。
(2)能力開発・雇用への配慮
 公共職業訓練は、企業や個人の多様なニーズに応えるべくITや介護福祉分野等を中心に民間機関を活用する方向への政策転換が望まれる。
 また、雇用・就業に関する情報の一元化を図り、求人・求職のマッチング機能を強化するため、求職情報の効果的な開示と相談体制を整備されたい。
(3)職業教育の重要性
 起業意欲を持った人材の育成・輩出のため、初等教育から中高等教育にかけて徐々に主体的な職業観・勤労観を身に付け、延いては企業家精神の醸成を図るような教育課程の提供と豊かな創造性を育むための就業体験の機会を拡充されたい。
 また、中小企業が児童・生徒に就業体験の機会を提供するにあたり、専任の指導者配置や職場内の危険防止・衛生管理上の負担が大きいことから、企業の受け入れ体制整備のため、災害補償等助成措置の制度化等十分な支援を講じられたい。
(4)教育現場への経営者の参加
 今後の公立学校のカリキュラム編成にあたっては、本商工会議所等経済団体と連携し、経済や経営の実態を踏まえたプログラムを取り入れていくほか、地域の企業経営者の参画機会を用意されるよう仕組みづくりを検討されたい。
(5)東京都の大学改革への期待
 本年夏を目途に都立4大学(都立大学、科学技術大学、保健科学大学、都立短期大学)の改革についての大綱が策定される予定である。
 この際、都民の最高教育機関として、都内の地域産業振興を目的に、特に産学公の連携推進、社会人向け教育コースの充実、都内中小企業の人材育成に努められたい。

Ⅴ.東京構想2000の具現化に向けて

 東京都におかれては、昨年、石原都政初の基本構想となる東京構想2000を策定されたが、基本目標として掲げる「先駆的メッセージを発信できる東京」、「都民が安心して生活できる東京」、「誰もが創造力を発揮できる東京」の趣旨につき賛意を示したい。
 本商工会議所としては、東京都が今後行なう戦略的な取り組みに主体的に関わり、産業界代表として大いに役割を果たしていく所存である。
 ついては、東京構想2000はわが国経済の再生の原動力となることを確信するので、推進にあたっては、本商工会議所をはじめとする産業界の意見を十分に尊重されたい。

以上
【本件担当・問い合わせ先】

東京商工会議所