政策提言・要望

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「会社法制の現代化に関する要綱試案」に対する意見

2004年1月8日
東京商工会議所

 経済活動のグローバル化、並びに情報化等が急速に進む状況下、21世紀に相応しい会社法制を確立するために、商法、有限会社法の現代化を図ることは極めて有益である。
 現代化に当たっては、企業の自由な活動と実質的な運営を基本とするルールを整備し、これにより、企業は自己責任原則の下、定款自治により活動することが望まれる。
 特に、わが国企業の太宗を占める中小企業にとって、その成長段階に応じて最も相応しい運営ルールを選択できるようにした上で、一層、機動的・弾力的な経営を促し、かつ、創業や経営革新を進めることのできる基盤を確立しなければならない。
 現行会社法制の問題点としては、第一に会社形態・規模が多様な中小企業に対し、画一的な規定となっており、現実にそぐわない制約が存在すること、第二に「債権者保護」の名目で、企業経営の実態から見て過剰とも言える規制が行われ、経済活動の活性化の阻害要因となっていること、等が指摘されている。
 以下、中小企業が事業を円滑に実施することのできるよう、現実の姿に適合した形で見直されることを視座において、「会社法制の現代化に関する要綱試案」について、中小企業の立場から特に重要性の高い項目について意見を申し述べる。なお、それ以外の項目についてはいずれも賛成である。

提言

1.株式会社への組織変更
(第3部合名会社・合資会社関係4)
 社員個人の資産を前提とする人的会社である合名・合資会社から、会社所有の資産・資本のみを前提とする株式会社等の物的会社への組織変更を図ることは、近代的経営への転換のための手段の一つである。従って、これまで不可能であった人的会社から物的会社への直接的な組織変更を認めることに賛成する。
 なお、組織変更可能な物的会社は株式会社のみならず、有限会社も含めるべきである。


2.株式会社と有限会社の規律の一体化
(第4部株式会社・有限会社関係 第1総論1)
 多くの株式会社の実態等を踏まえ、株式会社に関する規律について、有限会社に関する規律との一体化を図るものとすることに賛成である。


3.譲渡制限会社における有限会社型機関設計の選択的採用
(第4部株式会社・有限会社関係 第1総論2)
 譲渡制限株式会社における実態を踏まえ、現行の有限会社の機関に関する規律に相当する規律の選択を認めるものとすることに賛成である。
 ただし、このような機関設計の選択をした場合には、コーポレート・ガバナンス(企業統治)のあり方を、経営者においてより一層強く自覚することが求められるものと考える。


4.最低資本金制度
(第4部株式会社・有限会社関係 第2設立等関係1)
4-1設立時における払込価額規制
 起業・創業の促進という時代の要請、並びに個人事業主は法人化を志向して合理的な経営を図るべきことを配慮して、最低資本金は大幅に引き下げられるべきである。
 ただし、債権者保護、および資本充実の諸点等から、最低資本金規制は廃止すべきではなく、現行の有限会社と同額の300万円とするa案に賛成である。

4-2剰余金分配規制
 上記4-1の観点から、b案又はc案を採用する場合であっても、純資産額が最低資本金の額未満の場合には、剰余金があってもこれを株主に分配することができないものとすることに賛成である。


5.検査役の調査
(第4部株式会社・有限会社関係 第2設立等関係 5事後設立 (1))
 現状では、中小企業における経営革新あるいは事業再生等の局面において営業譲渡が重要な役割を果たすことが多く、いわゆる事後設立の際の検査役の選任および調査は、徒に営業譲渡のタイミングを失わせ、事業価値の劣化を助長するおそれのあることが指摘されている。従って、同制度の廃止については賛成である。


6.現物出資・財産引受け
(第4部株式会社・有限会社関係 第2設立等関係6)
6-1検査役の調査を要しない場合
 わが国経済の浮揚のためには、起業・創業を促進させる環境の整備が重要であることは言うまでもない。この観点から、最低資本金制度の見直しとともに当該検査役調査不要の範囲の拡充に賛成する。

6-2現物出資に関する関係者の責任 
 要綱試案において言われるところの「過失のないことの証明」について、証明の基準を明確化し、公正・公平な価額調査が行われるための予見可能性を向上させる必要がある。このため、証明の程度・範囲についてなお慎重に議論されたい。


7.譲渡制限に係る定款記載事項
(第4部株式会社・有限会社関係 第3株式・持分関係 1株式等の譲渡制限 (2))
 譲渡制限会社にとって、定款で定められ得る事項を明確化することは、制度の硬直化を防ぎ、柔軟な運用を担保することができ、かつ経営の安定化に資することから賛成する。


8.子会社による親会社株式の取得
(第4部株式会社・有限会社関係 第3株式・持分関係4)
 合併、会社分割、株式分割、株式交換等の一定の組織再編行為として行われる場合にも子会社による親会社株式の取得を容認することとするべきである。なぜなら、当今、中小企業においても国際進出が盛んであるところ、国際的なM&Aにおける1つの手法として親会社が子会社を設立し、当該子会社が親会社株式を取得した上で、これをM&A対象会社の株主に交付することは通常採用されているが、当該子会社が取得した親会社株式はM&Aの手続の一環としてM&A対象企業に交付されることが予定されており、子会社が親会社株式を取得することより大量の株式持合いや相互保有を認めることとなり資本の空洞化を招く等の弊害が生じるものではなく、これを禁止する理由はないからである。また、子会社による親会社株式の取得が、このような組織再編行為として行われる場合には、特に財源規制を課する必要はない。
 なお、ここで言う「子会社」には、現行商法の解釈上、国際的組織再編行為に対応し得ることを条文上明記するため、外国会社をも含めることとするべきである。
(注) 第4部第9その他1子会社に関する規定(注2)、および第5部外国会社関
  係1にも共通する事項である。


9.有限会社における種類株式に相当する制度
(第4部株式会社・有限会社関係 第3株式・持分関係 7種類株式 (1))
 有限会社において、種類株式に相当する制度を認めることは、柔軟な資本構成、並びに多様な資金調達の方途を構成できることから賛成である。


10.有限会社の増資手続
(第4部株式会社・有限会社関係 第3株式・持分関係 12新株発行及び増資の手続 (2))
 有限会社が増資をすること自体は、自己資本充実の観点から有益であり、その手続がより緩和されることに特段の問題はないと考える。本件は第三者および社員のいずれであっても、自らの責任において当該増資に応ずるかどうか判断すればよいものであり、他の社員にとっても有益である。


11.欠格事由
(第4部株式会社・有限会社関係 第4機関関係 2取締役の資格 (2))
 破産宣告を受けた段階で、当該個人は多大の信用失墜と社会的制裁を受ける。この段階から他の会社の取締役に就任することは、本来制約があってしかるべきとする議論もあるが、一方で、現在の破産手続では免責を受け復権するまでに相当の年限を要し、経済人としての再出発を阻害する要因となっていることも事実である。
 例えば、大口売掛債権の焦げ付き発生等の経営環境の激変により、会社経営が蹉跌し、それに伴って個人保証を被り破産宣告を受けた場合は、とりわけこのような支援が認められてしかるべきである。
 従って、当商工会議所が従来から主張している「再挑戦が可能な社会づくり」の視点から、適切な破産手続と配当の実施を当然の前提として、「破産の宣告を受け復権していない者」を欠格事由から外すことに賛成である。
 なお、業務上の債務が破産宣告の要因ではない場合、例えば、自己の消費生活上の金銭管理のずさんさに起因する多重債務者の取締役就任については、売掛債権保護の観点から、引き続き制約を設けるということは必要であろう。


12.取締役に係る登記
(第4部株式会社・有限会社関係 第4機関関係6)
12-1共同代表取締役
 共同代表取締役は現実に制度を置いている例が特段見られないため、廃止に賛成である。
 なお、複数の代表取締役がそれぞれの職務・責任を分担することは企業経営上散見されるところであるが、これはコーポレート・ガバナンス上の問題であり、第三者は外部から知る由もなく、従って、そのような会社はそうした内部規範を外部に主張するにしても越権の抗弁事由とすべきではない。

12-2代表取締役等の住所
 プライバシー保護の観点から、代表取締役等の住所については登記しない方向で検討されたい。なお、法人の役員の所在については、取引上、把握することが必要な場合もないとは言えないとの指摘もあるが、これは当該当事者間での情報提供の問題であり、これをもって広く第三者に開示する登記を認めるという理由にはなり得るとは言えない。


13.財源規制を課す自己株式の取得の範囲
(第4部株式会社・有限会社関係 第5計算関係 1剰余金の分配に係る規制 (1)①)
 譲渡制限株式会社において株式の相続が発生した場合も、要綱試案に謳われているような場合と同様に、安定的かつ迅速な取得が必要であり、この点に関する中小企業の要請は切実である。従って、財源規制を課さない場合として、下記の場合を「①ハ」として織り込むことを求める。
 ①ハ「当該株式を相続により承継した者から買い受ける場合」
 一定の資本充実に対する配慮が必要である場合には、上記に限り、資産再評価を資格者の証明の下に認め、評価差額金の一定割合を取得財源に加算できることを認められたい。


14.決算公告
(第4部株式会社・有限会社関係 第5計算関係 5開示・監査関係 (3))
 会計監査人による会計監査を受けるほどの会社は、その監査証明により広く信用を得、取引の発展もしくは資金調達の拡大を志向することが必要である。
 一方、会計監査人により会計監査を受けることが不要な会社については、決算を広く一般社会に公告することの意義に乏しい。こうした視点から、会計監査を受けることを決断した会社のみに公告を義務付けることとし、その選択の可否は会社に委ね、自らの信用力の維持向上に努めるか否かを自己責任で判断すればよい。従って、c案に賛成する。
 なお、決算公告をしない会社にあって、債権者保護手続を行う必要がある組織再編を行う場合、現行法制上義務付けられている、最終の貸借対照表を公告した官報の日付、頁数等の公告・通知に代わる手段をあわせて検討されたい。


15.清算中の会社の機関
(第4部株式会社・有限会社関係 第8清算関係2)
 債務超過でない会社の清算手続は、あくまで債務を完済することを前提とする清算手続であって、複数の機関を設置するほどのガバナンスの必要は認められない。複数の清算人あるいは監査役を設置すれば、当該報酬等の費用が過重に発生し、むしろ合理的な清算を阻害することになりかねない。


16.新たな会社類型
(第6部その他)
 起業・創業の促進、事業再編・再生等の活性化などのため、対外的には法人格を持ち、出資者全員が有限責任で、かつ内部的には社員の個性を重視する人的会社としての組合的規律を持つような特徴を有する、新たな組織形態が導入されることは有用である。よって、より検討が進められることを期待する。出資持分の払戻しについてはより柔軟なb案に賛成である。
 ただし、債権者保護手続については、個別催告を要する清算手続におけるそれではなく、個別催告の省略が可能な資本減少の手続に相当するものであることの確認を求めたい。

以上
【本件担当・問い合わせ先】

東京商工会議所